IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第206話

トーナメントの決勝を飾るに相応しい戦いが、2年の戦いの舞台となっている第2アリーナにて行われている。アリーナ中に溢れかえるかのようになっている光の矢、気を抜けばそれらは直ぐに身体を貫かんと向かってくるのを回避、または防御や切り払う事で防いでいる二人。その二人も数多くの砲塔を制御しながら互いを狙い撃とうとしている。

 

「素晴らしい、その一言に尽きますね」

「わたくしもそう思いますわ」

 

そんな激しくも美しい光が飛び交う試合を特別来賓室で見つめ続けている二人の女性がいた。一方は今戦ったいるカミツレの婚約者でもあり彼の師でもあるヨランド、もう一方は柔らかく優しげな笑みを浮かべている女性、そんな優しげな表情とは裏腹に一国の中では誰も適わないほどの実力者でありその力の強さは世界規模だと誰もが断言する。台湾国家代表 劉 春華、誰よりも優しい国家代表と評される人物である。

 

「乱ちゃんの婚約者、この目で直接見たかったのですが……如何やら想像以上に出来る人なようで安心しました」

「ツェレなのですから当然ですわ、何せわたくしのフィアンセなのですからっ!!」

「ふふふっそうでしたね」

 

隣で自慢げに胸を張っているヨランドに少し笑いを浮かべながら目の前で戦いを繰り広げているカミツレへと目線を移す。映像越しでも分かってしまうほどに研磨された技術と積み重ねてきた経験、二次移行させたという事もあって完璧に操っている専用機……確かにヨランドが自慢したくなるのも分かる。

 

「是非とも一度お話したいですね、ヨランド紹介してくださらない?」

「ええっ勿論ですわ」

 

 

『マイクロブラスト!!』

 

互いのレーザーが飛び交う中、カミツレは「極ドライブ」を発動。この場において最適な武器を検索しそれをその身に宿す。左腕に抱えられた巨大なコンテナのようなミサイル、それを放り投げるとそれを全力で蹴飛ばす。それによって火が付いたのか一気にスラスターが点火してセシリアへと向かっていく。

 

「させませんわ!!」

 

だがセシリアの反応も早い、既に発射していたレーザーの軌道を変更しつつ、無数に分裂させてミサイルへと突き刺していく。が―――

 

「ッ!!?」

「掛かったなっ!!」

 

それをそのまま撃墜してしまったのは悪手だった。爆発直後から無数のマイクロミサイルが射出されていき、全てがセシリア一人へと向かっていく。即座に後退しながら「ティアーズ」から放ったレーザーを雨のように分裂させて自分の周囲に張り巡らせてレーザーネットを作り出す。それに掛かったミサイルは次々と起爆して行く、だが動きと攻撃の手が止まった瞬間をカミツレは見逃さなかった。

 

「オオォォォラァァアア!!!」

「くっ乗せられましたかっ!!」

 

背中へと「ディバイダー」を接続して更なる推力を得た「大将軍」の速度はイタリアの最新式の「テンペスタ」にも匹敵する。その速度のままで「フォトンセイバー」を振りかぶってレーザーネットを無理矢理食い破るかのように突破してその身体へと届こうとした所を、セシリアがレイピアでそれを受け止める。

 

「まだ、まだやられはしませんわっ!!!」

「まだまだだあああァァァッッ!!!」

 

瞬間、更に出力を上げて突撃するカミツレ。それに押され始めるセシリア。流石に出力の差は歴然、「ティアーズ」による援護で相手を引き剥がそうとするが、それらをさせないように「ヴァンガード」が牽制射を行って邪魔をさせない。そして二基の「ヴァンガード」からワイヤーが射出されて「大将軍』ごとセシリアを完全に拘束する。

 

「下まで付き合ってもらうぜっ……!!!」

「くっ……!!キャアアアア!!!!!」

 

「瞬時加速」を発動させて一気に降下して行くカミツレ、それらを阻止しようと「ティアーズ」が動くが「ソード・ヴァンガード」が飛来して「ティアーズ」を一基を落とす事に成功する。そのまま降下して続けて行くカミツレは眼下に迫ってくる地面を目指して一切スピードを緩めずに降下し続けた。そして―――二機はワイヤーに拘束されたまま隕石のように地上へと落下した。

 

立ち昇って行く土煙が視界を邪魔している、一体どうなったのだろうかと思う中で何かが響くような音が木霊する。何が起きているのか誰もが疑問に思う中、それが通じたのか煙が晴れていく。そこでは、ブレードとレイピアをぶつけあっている二人がいた。激突のショックでスラスター面に問題が起こったのか、地上戦へと戦いが移行していた。

 

「やああああぁぁぁっっ!!」

 

気迫の篭ったセシリアの突きがカミツレのライフルを貫く、同時に腰部からミサイルが飛び出してカミツレを襲う。

 

「ぐふぅ……たあぁぁぁああああ!!!!!」

 

ミサイルの直撃を受けながらも未だ倒れないカミツレは姿勢制御を器用に行いながら、ISを纏っているのも関わらずに地面を蹴ってサマーサルトを繰り出して腰部の「ミサイル・ティアーズ」を潰しながら彼女のライフルを切り伏せた。互いに身を削るかのような戦い、一撃一撃が互いの身体を削り、武器を殺していく。互いにまだBT兵器があるというのにそれらは使用せずに剣のみでの戦いが続いていく……。互いに分かっているのかもしれない、BT兵器では最早牽制程度にはならず決定打にならない。ならば確実に倒すには一つ、純粋且つ単純な方法がある。手持ちの剣で相手を切る!!それを選択していた。

 

「くぅぅっ……!!」

「ふぅぅぅぅ……!!!」

 

互いに苦しさが息から漏れていく、既に満身創痍。次の一撃で命運が決まる所まで来ていた、構えられた剣。それが向くのは相手、静かな静寂が辺りを支配した直後―――

 

「だぁぁぁぁぁぁぁああああっっ!!!!」

「やああああああああああっっっ!!!!」

 

全く同時に出力全開で向かった互いの最後の一撃が振るわれた、ぶつかり合った最後の一撃、一体どっちが勝ったのか……それは―――直ぐに分かった。

 

『セシリア・オルコット、SEエンプティ。よって優勝者は―――杉山 カミツレッ!!!!』

「おおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!!!」

 

直後に上げられた轟音のような雄たけび、それはカミツレが上げた紛れも無い勝鬨だった。




妻「最後のあれ、なんか何かを思い出しますね」

私「なんかって?」

妻「いや煙の中で切りあうって奴……あっ思いだした、アニメ版ロックマンエグゼのN1グランプリの対ブルースのベータソードのぶつかり合い!!」

私「いやに懐かしい物が……というか、あれって確か光の中じゃなかったっけ?」

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