IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第209話 特別編:その2

「はぁぁぁっっっ……お前ら馬鹿なのか?」

「い、いきなり馬鹿はないだろ!?」

「いや普通に馬鹿だろ、いきなりエネルギー武器ブッパとか下手したら死んでたぞ俺達」

 

アリーナ内にて攻撃をいきなり受けたカミツレ達、そんな自分達に攻撃をしてきたのはまさかの一夏と箒であった。しかし隣にいる一夏の事を考えた時に束が答えを出した。ここは並行世界で自分達の世界では無いと。取り合えず向こう側の一夏達も混乱したのかカミツレ達を拘束、という形で千冬の所に連れて行く事になり、応接室にて千冬を待つ事になった。

 

「確かにこっち側からしたら俺達は不法侵入者なのかもしれねぇけどよ、それでもいきなりぶっ放すって何。お前家に入ってきた泥棒ならいきなり殺すのか」

「そんな事する訳無いだろ!でも、ただIS学園は最近襲撃とかいろいろあってピリピリしてるんだよ。それでいきなり謎のIS反応が出たら攻撃するだろ」

「いやしねぇよ。カミツレが言った事全く理解して無いだろ」

「こっちのいっくんは凄い短絡的だねぇ~」

 

取り合えず何故いきなり攻撃をしてきたのかという事を確認してみると呆れて溜息しか出てこないような事しか言ってこない。どうやらこちら側のIS学園は自分達の側程優秀な人材がいる訳では無いらしい。学園祭の時も問題が発生し、亡国機業に襲撃されたと言っている。事前に対処し、大きな問題になる前に鎮圧されたこちら側とは全く違うようだ。

 

「というか何で俺なのに、俺の事を理解してくれないんだよ。分かるだろ?」

「分からねぇよ」

「何でだよ!?」

「そうだお前とて同じ一夏だろ!!?」

「あのな……世界が違えば俺とお前は全く別の人物、これは常識みたいなもんだろ。俺とお前じゃ生きてきた過程が違う、それに俺はいきなり殺しに来るような奴と同一人物にされたくねぇ」

 

そう言って茶を啜る一夏に向こう側の一夏と箒は愕然としたような表情を作っている。こちら側ではIS学園だというのに随分荒れた生活を送ってきたらしいが、それだから攻撃してきていいと言う理由にはならない。そんなやり取りをしていると応接室の扉が開いてセシリア達を連れた千冬が入ってきた、彼女らはもう一人に目を見開いた。

 

「……連絡を受けた時は耳を疑ったが、如何やら真実らしいな……」

「い、一夏さんがもう一人……!!!?し、信じられませんわ!!?」

「に、偽物とかじゃないでしょうね!?一夏本当にアンタなの!?」

「ならお前とした約束を一言一句言えば証拠になるのか?」

「わぁああああやめなさいやめなさい!!!」

 

最初に入ってきたセシリアと鈴は此方を疑っているので思わず一夏は鈴との約束を持ち出して証拠にしようとするが、鈴はそれを必死に止める。今の一夏は鈴とは一から友達としてやり直している、まあこの事で凄まじい喧嘩となって最終的にはIS同士のぶつかり合いになったのだが……此方では随分と距離が近いようにも見える。

 

「鈴さん、そのお話について是非詳しくお聞きしたいですわぁ……」

「い、嫌に決まってるでしょうが!!」

「なあ鈴、その約束ってどの約束だ?」

「アンタは黙ってなさいよ!!!」

 

セシリアと鈴、そしてこちら側の一夏のやり取りを見てカミツレと一夏は思わず嫌な予感をさせた。同時に束は女の勘で気付いたのか、ああそういう世界線なのかと呆れたような顔でお茶を啜り続ける。そしてワチャワチャしている姿を見てカミツレもそれに気付いたのか溜息を吐き、一夏をそれを慰めるように肩を叩いた。

 

「げ、元気出せってカミツレ……」

「お前に言われてもなぁ……こっちの世界のお前だろ」

「いやこっちの世界の俺とは俺無関係なんですけど……」

「何をごちゃごちゃ話している?」

「「何でもありません織斑先生」」

 

二人揃って言った直後に思わず溜息を吐いた、この流れだとカミツレと千冬の関係も無いようだ。というよりもこちら側だとカミツレがいないらしいのでそれは当たり前とも言えるが……。すると今度はラウラとシャルが入ってくる。

 

「一夏が二人……!?一夏って双子だったの!?」

「嫁よこれはどう言う事だ!?クローンに成功したのか!?」

「今説明するからちょっと待ってくれよ二人とも!!」

「「「よ、嫁……?」」」

 

ラウラの呼び方に疑問を浮かべながらも取り合えずお互いの情報交換が開始されて行く。向こう側はカミツレの存在に驚きながらも何やら強く見てくるのでそれらを受け流しておく。

 

「んじゃ改めて……杉山 カミツレ、元の世界だと二人目の男性IS操縦者って事になってる」

「ふ、二人目の……こちら側ではそんな方はいらっしゃりませんわ……」

「ああ。日本全域で調査が行われたが、引っ掛かりはしなかったな。それで杉山だったか、お前はどんな立場にある」

「それはどう言った趣旨の質問ですかね、操縦者としてか生徒としてか」

「操縦者としてだ」

 

千冬の強い言い方に同時に全く違う世界だと言う事を強く思い知らされる。自分の知っている彼女は普段からこんな相手を威圧し脅すような言い方はしない、自分達を警戒しているからだろうか。

 

「イギリスの代表候補生、という立場にありますよ」

「……なんだと?」

「イ、イギリスですって!!?まさか、貴方が英国の代表候補生に!!?」

 

セシリアが信じられないと言いたげな表情で此方を見つめてくる、分かっている筈だが彼女にそんな表情で見られるなんて思いたくもなかった。だが此方では自分がいないのだから致し方ない。カミツレは懐から身分証明用のカードを取り出してそれを見せる、そこには代表候補生の証明とイギリス国籍を示す記述が成されている。これはセシリアも所持している代表候補生が持たされる物なので彼女には真実だと認識させるうえで一番簡単な物。

 

「し、信じられませんわ……何故一夏さんでは無く貴方などが……」

「おいそっちのセシリア、お前カミツレの事を馬鹿にしすぎだろ。元々カミツレがイギリスの代表候補になる切っ掛けを作ったのはそっちなんだぞ」

「そ、そんな!?し、信じられませんわっ!!?何故、何故一夏さんではなく其方の方を……」

「カッ君大丈夫?無理しないでね」

 

セシリアの言葉を聞く度に顔を険しくしながら強く拳を握りこむカミツレを束は優しく背中を撫でる。この現状はカミツレにとっては非常に辛い物、セシリアはカミツレを救う切っ掛けであり今では相思相愛の婚約関係でその仲の良さは一夏ですら、箒とあの位になれたらいいなぁと羨む程。違う世界とはいえ、その彼女にそんな事を言われるのはカミツレにとって非常に心苦しい状況に違いない。

 

「大丈夫ですよ、束さん……御気遣い感謝します」

「辛いなら束さんのおっぱい揉む?」

「いやなんでですか、そこは普通に抱きしめるとかでしょうに」

「誘惑しようかと思って」

「しないでくださいこんな状況で」

 

そんな束の軽口で元気を取り戻したのか少し言葉に力が戻ったカミツレに一夏は少し安心を覚える。が、そんな二人をやり取りと向こう側の千冬、一夏、箒は信じられないのような物を見ているような物で見ている。加えてセシリア達も驚きの目線を向けている。

 

「ね、ねね姉さんが私達以外の人間と普通に口を利いている……?!」

「すげぇ……あのカミツレって何者なんだよ」

「た、束が誘惑だと……!?男に興味を持っているだと……!?」

「いや束さんだって女だからね、持ってても可笑しく無いでしょ」

「……束、お前そいつとはどう言う関係なんだ」

 

千冬も思わず気になったのかその事を問いかけた、それは向こう側からしたら全員が気になる事だろう。しかし、束は鼻を鳴らしながらそっぽを向いて答える事を拒否した。

 

「言う必要があるのかな、そっちにこっちの事を教える必要なんて無いよ。それにね、束さんは本当ならそこのクソ金髪を殺してやりたい所なんだよ」

「な、なぜですか!?わたくしが何か致しましたか!!?」

「ああ致しましたね。でもどうせ君には理解出来ない事さ、だから大目に見てやるよ」

 

束の怒り、それを何故買ってしまったのか理解出来ない一同。それは致し方ないという物、だからこそ束は怒りを許容して納めた。関わりが無かったのだから当然の反応に対してキレていては意味が無い。

 

「にしても学園祭を襲撃ねぇ……俺達の方じゃ普通に未然に対処されてたよな」

「だな。千冬さんとヨランドさん、ナターシャさんに会長がなんとかしてたしな」

「ヨランド……?誰だそれは」

「えっ……フランスの代表のヨランド・ルブラン」

 

あの人の事を知らないなんてありえないと問うって見るが千冬は全く知らないうえにシャルロットさえも知らないと言う。そして告げられた代表の名前は全く違う者の名前だった、それをカミツレに重く圧し掛かって来る。ヨランドまでいない世界―――だが同時に思った。

 

「おい待て、それならどうやってシャルロットの事を対処した」

「えっ対処って……特に何も……」

「おい一夏……」

「マジかよなんて世界だ……」

「何この世界。馬鹿ばっか、なの?」


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