「これはまた、とんでもない光景が広がってますわね……」
「俺達も本当に驚いたもんさ……」
「いきなり攻撃ぶち込まれたりもしたもんな」
「それは物騒ですわ……」
試合という名の蹂躙が終了し、全員が再びピット内に集った時に織斑たちが目にしたのはカミツレたちと談笑しているもう一人のセシリアの存在だった。こういう時こそ驚くべきなのだろうが既に千冬や束といったとんでもない衝撃を味わっているからか既に感覚が麻痺しているような気がする。それでも当の本人のセシリアは凄まじい表情で驚愕している。
「わ、わたくしが……既に織斑先生と束博士を見ているというのに驚きが止まりませんわ……!?」
「あれが此方側の私、という事ですわね……」
と言いながらセシリアはもう一人の自分へと視線を向けてみる、先程までヨランドにボコボコにされていたのも分かる疲弊っぷりに嘗ての国家代表による指導期間を思い出す。そんな昔を懐かしんでいると向こうの自分がこちらに向けて言葉を向けてくる。
「ま、まさかもう一人の自分とこうして会うなんて信じられませんわ……」
「それは否定致しませんが、私は何処か慣れてしまっていますわね。カミツレさんと一緒になってからは色々と驚く事が多かったですからね」
そう言って微笑ましく過去を振り返るように笑うセシリアの表情に一同は少し驚いた、そして矢張りここでも出てきたカミツレの名前に一夏は少し複雑そうな表情を作っているとセシリアがある事を聞いてみた。
「そ、そちらの杉山さんはわたくしが代表候補に推薦したとお聞きしました。その理由を聞きたいのですわ」
「カミツレさん、お話されなかったのですか?」
「一応したんだけどねぇ……でもなんで一夏じゃないのかって言われたりとかしたからな」
「―――へぇっ……?」
カミツレのそれを聞いた瞬間に彼女の口から出た声は恐ろしく低い物だった、思わず鳥肌が立ってしまう程の物で寒気すら覚える。そして彼女は静かに其方に視線を向けると、口を開いた。
「まず何故カミツレさんを代表候補生に推薦したのか、それは簡単です。カミツレさんが今までISに関わって来なかったと言うのにクラスの代表選抜戦で私と引き分けたからです」
「ひ、引き分け!!?俺はセシリアに負けたのに!!?」
「あらっそれは此方と同じですのね、そう一夏さんは私にボコボコにされましたわ」
それを聞いて織斑たちは疑問を持ってしまった、それでは同じと言うわけではない。此方側では織斑は試合の途中で一次移行を完了させてその後、肉薄する事に成功したが同時に発動させた「零落白夜」で切りかかろうとした瞬間にSEが尽きてしまい敗北した事になっている。だがカミツレたちの側では、一夏に対してワンサイドゲームを決めて完全勝利している。
「しかしカミツレさんの場合は一夏さんとは状況が違います、ある程度のカスタムはしていたとはいえ訓練機の「打鉄」で私と戦い、大健闘を果たした後に引き分けたのです」
「く、訓練機の「打鉄」でセシリアと引き分け……!?」
「何よそれ、やば過ぎるじゃない……!!?」
「し、しかもそれって一夏と同じで学園に来てから勉強とか訓練を始めてって事だよね。それでセシリアと引き分け、って……」
「……凄まじいな」
一同から漏れて行くカミツレの強さとその異常染みている成長速度、訓練機として採用されている「打鉄」で引き分けを手にする。しかもそれを行ってたのが入学直後でまだまだ未熟で成長しきっていない状態でという事だ。これ異常でなくてどう言えというのだ。
「その時に私はカミツレさんの強い意思、覚悟、そして実直に努力する姿勢に大きな物を見たのです。だからこそ、カミツレさんを代表候補生に推薦したのですよ。そしてその時ですわね、カミツレさんに惹かれたのも」
「おいおい……」
カミツレは別にそこまで言わなくてもと言いたげな目線を送るが別に減る物じゃないからいいじゃないですかと返すセシリアだが、向こう側はそれに驚いていた。此処までハッキリ好意を形に出来ているのは自分達の中ではおそらくラウラだけだからだろう。そのラウラの好意の表し方も色んな意味で間違っているが……。
「し、しかし既に織斑先生に篠ノ之博士と言ったお相手がいると言うのにどうやって……!?」
「逆ですわ、寧ろお二人は後に入る方ですわ。それにカミツレさんに私達は全員自分達から告白してますのよ」
とここでもまた衝撃的な事実を口走るセシリア、カミツレはカミツレで勘弁してほしそうに頭を抱えている。
「で、では私が自分からそ、そのハ、ハハハハ…その、認めたのですか!?」
「そうですわね、そう言うことになりますわ」
「な、何故なのです!?」
「カミツレさんを守りたいからです」
セシリアは少し恥ずかしそうにしつつも堂々と言い切りながら告げて言う、自分だけの力では守りきれないと言う現実がある事に。イギリスの代表候補になったとしても安心は出来ない、愛する彼を守る為にはもっと強力な後ろ盾が必要なっていく。だからこそ、それを認めた。彼を愛する人と一緒に彼を守るため、それを目的として。それを聞いたセシリアは驚いたように目を白黒させたが、直ぐに尊敬を向けた。
「凄く、立派なのですね。向こう側の私は……」
「これでもまだまだリチャード叔父様には怒られる事が多いですけどね」
「リチャード、と言うと遠縁のウォルコット家の……?」
此処で話を聞いてみると、此方のセシリアは何でもかんでも自分一人で背負い込んでしまっていたらしく両親の遺産なども全て自分一人で守っていたらしい。様々な事をリチャードに頼っていた彼女とは酷く対照的な感じとなっている。
「誰かを頼る、そして共に歩むのも勇気ですわ。私が強くなれたのも好きな方の隣にいたいから、例え隣で無くても誰かを支える事は出来るのです」
「……はい、その言葉を胸に深く刻みますわ」
向こう側のセシリアに笑顔が生まれたところでビット内に青と黒が混ざり合った光の渦のような物が出来上がっていた。その前に束が二人して何やら調整のような作業を行っている。
「皆~帰宅用のゲートの準備出来たよ!そろそろ戻るよ~でないと帰れなくなるからねぇ!!」
とそんな声と共に束はもう一人の自分と握手をしていた。束は自分を誘ったらしいが彼女は自分の世界に居続けて自分の子供達と一緒にいると決めたらしい。少々名残惜しそうにしながらも束はゲートに飛び込んで言った。それに続くようにヨランド、千冬なども入っていく。最後にカミツレは織斑たち向き直る。
「色々あったけどじゃあな、もう少し成長しろよ諸君」
「おいもう一人の俺、もうちょっと視野を広く相手の気持ちを考えろよ!」
「それでは皆さんこれにて……」
と言って残っていたメンバーもゲートに入っていくと自然とゲートは閉じてしまった。こうしてカミツレたちの摩訶不思議な並行世界体験は幕を閉じる。この後、部屋に突然現れたメンバーに乱は驚いて引っ繰り返ったり、それを見て皆が笑ったりした後、全員そろって食事をするのであった。
と言うわけで特別編、パート1は終了です、ちょっと長くなりすぎたかも。
次回もまだ特別編にしようと思ってます。だってまだ本編のプロット未完成なんだもん。特別編についての募集は活動報告にて行っております。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=197099&uid=11127
上からどうぞご覧になってください。ではまた、待て次回!!
後気が向けば、この原作のその後を書く、かも知れない。きっと多分メイビー。