IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第22話

IS学園に訪れた前代未聞の大事件の翌日、事件の事後処理という事でその日は一日休みとなったその日。当事者であり実際に乱入して来た謎のISと交戦した専用機持ち全員が呼び出され事情聴取が行われる事となった。ほぼ全員があの後確りと睡眠や休みを取った事で英気を養っているので、疲れは取れているようであったがただ一人、一夏のみは妙に首を傾げていた。

 

「なあカミツレ、昨日ピットに戻った後何かあったか?なんか、記憶が途切れてるような気がするんだ」

 

それを聞いた三人は本当に意識が飛んでいたんだなと理解してしまった、問題なのは何処まで意識があって記憶が残っているかが問題なのだが……兎に角この集まりの理由ぐらいは覚えているようなのは安心であるが……。

 

「確か千冬姉に殴られてそれから……えっと、駄目だもうその先が思い出せないんだ」

 

思わず箒に対して本気で同情の念が沸いた瞬間であった。あの時の言葉が告白にも似ているとかはこの際、関係無しにするとしても自分がどれだけ心配していたのか、悲しみを覚えていたのかを理解出来なかったというのは箒にとってどれだけ無念だった事だろうか……あれさえ覚えていたら一気に距離が縮まった事さえ有り得ただろうに……。三人揃って溜息を吐く姿を見た一夏は見当違いな事に、何時の間に仲良くなったんだろう?と首を傾げるのであった。箒の想いが届くのは何時になるのだろうか。

 

「揃っているな」

 

確りと4人いる事を確認した千冬は全員を席に着かせる、そして資料を開きながら当時の状態を事細かく言いつつ随一それを確認して行く。

 

「宜しい。では各自、何か言いたい事はあるか」

「それじゃあまず俺から良いですか」

「ああ、杉山、座ったままでいいぞ」

 

手を上げながら立ち上がろうとするのと止めて座るように促す、別に立てと言った訳でもない。まだ疲れも少なからず残っているだろう、それを酷使させる訳にも行かない。

 

「俺は織斑先生に織斑救出の案をセシリアと共に提示し、先生がそれを制止したのにも関わらず無理矢理意見を通しそれを実行しました。その結果、織斑は救出出来ずあの場の全員の身を危険に晒しました。先生が指摘した通りに二次遭難になる所でした……あの場面は無理矢理にでもこれを連れて撤退するべきだったんです」

「それならば私も同じ責任がございます。結果的に私達は敵ISの撃破に成功しましたが一歩間違えば、重傷所か死亡すら有り得ました……申し訳御座いませんでした」

 

共に頭を下げるカミツレとセシリア、二人がアリーナへと突入した最大の目的は一夏をピットへと撤退させ鈴の負担を減らす事であった。しかし結果としてはそれは失敗に終わり、撤退させるべき存在を攻撃に組み込んだ作戦まで行ってしまった、それを了承した二人には責任があると言っているがそれに一夏が大きく反発した。

 

「待ってくれよ、なんで二人が謝るんだよ!?何も悪い事して無いじゃないか!!」

「黙っていろ織斑。お前の発言は許可していない」

「でも千冬姉!!」

「……昨日と同じ一撃、喰らうか……?」

 

骨を鳴らしながら威圧する千冬に敗北して席に座りなおした一夏、それを隣で見た鈴はそもそもアンタのせいよっと小声で漏らす。そして続くように鈴が手を上げた。

 

「私は相手の力を見誤り指示のミス、集中力の低下、織斑を強引にでも避難させるべき責任があったのにそれを完遂出来ませんでした……。そして先程二人が言ったように避難させるべき存在の攻撃参加を最初に認めたのは私です……」

 

声を上げようとした一夏を睨み付けて抑えつけた千冬は鈴にもう良いぞと声を掛ける、3人とも自分の行いを確りと理解していると判断出来た千冬は三人へと処分を言い渡す事とした。

 

「凰、お前は確かに様々な対応に追われていた。しかしお前はそれらを全力でこなしていたのは明白だ。お前は最も危険な囮という役目を全うしながら、危険な任務が積み重なってしまった。本来教師がやるべき事を、な……改めてすまなかったな」

「い、いえ気にしてませんよ」

「そして杉山とオルコット。結果としてお前達の突入が凰と織斑の命を救ったのも事実だ。あそこで突入していなければ、二人はビーム攻撃をまともに受けていただろう。その点やその後の戦闘方法などを考慮し杉山、オルコット、凰は不問とする事とする。加えてこの件を成績に記載し、成績点の増加が学園長からの許可と今期の筆記試験の免除が言い渡されているぞ」

 

それを聞いて三人は素直にホッとしつつ喜びを感じた。自分たちの行いは正当に評価された上で絶対に怒られると思っていたのだから、一安心と言った所だ。しかも学生最大の敵である定期テストを免除してくれるという好待遇に笑いが止まらなくなってしまう。

 

「それと杉山、まだ操縦者として日が経っていないのに大した物だと褒められていた。お前には後日学園から褒賞として色々と送るらしい。詳細は私は知らんが、軽く聞いた限りでは良い物を渡すらしいぞ」

「良い物……って何だろ?」

「まあ期待して待っている事だな、学園長も期待しててくれと言っていた」

「分かりました、それじゃあ期待させて貰いますって伝えて貰っても良いですか?」

「ああ、任せて置け」

 

素直にそれを受け取る事に決めたカミツレだが、一体何が来るのか今でも期待で胸が大きくなってくる。態々学園長直々とは、少々受け取るのが恐くなってくるが良い物だと言うのだから受け取るしか無いだろう。変に断れば角が立ってしまう。そんな中、蚊帳の外だった一夏へと矛先が向いた。

 

「さてと……織斑……私が言いたい事は、理解しているな……?」

「は、はい……」

「宜しい。杉山、オルコット、凰はご苦労だった。もう戻って良いぞ」

 

退室の許可が出たので部屋を出て行こうとするが、一夏が絶望に染まった目で見つめてくるがそれらを完全に無視して部屋から出て行く。これから行われるのは私刑ではない、歴とした正当な罰だ。

 

「こんの大馬鹿者ぉぉぉぉぉっっっ!!!!!!なんだあの、お前は何時からあんなに偉く強くなった!!?何故凰の言葉や杉山にオルコットの指示に素直に従えなかった!!!」

「そ、それは……鈴を一人残していくなんて……出来なくて……」

「それがどれだけ愚かで危険な事が分かっていて言っているんだろうな!!お前が残った方が余程危険という物だ!!!いいかよく聞け!!!」

 

この後、千冬による説教は一日中、夜まで続いた。一夏には反省文500枚と夏季休暇には強制奉仕活動に従事する事が宣言された。本来なら謹慎も必要な筈だがそれよりもISに必要な知識と訓練が必要と千冬が判断し放課後強制補習が言い渡された。


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