IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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ちょっとした一幕。

カ「そう言えば一夏、お前帰ってきた後箒と部屋に戻ったけどその後どうなった?」

一「ああ、俺が色々と抑え切れなくなって箒に抱きついてそのままキスして押し倒した」

カ「マジか」

一「ああ。でもその後はあった事を全部話して、ずっと抱き合って一緒に寝てたな」

カ「爆ぜ散れ」

一「お前だけには言われたくねぇよ!!?」

カ「俺の場合は完全に貪り食われてんだぞゴラァ」

一「正直すまんかった」


第221話 特別編2:その2

それは、あくる日の出来事だった。IS学園の教員達は基本的に連携をとることが多いので、その関係で仲が良い。仕事終わりには互いに話し掛け合いつつ、夜は何処か行き付けのお店に飲みに行くと言う事も良くあり、そこで自分達のクラスの事や授業で凄かった生徒の事を自慢する、というのも恒例化している。今回は学年別トーナメントの無事な終了を祝した飲み会が行われていた。

 

「え~今年はなんとか問題も無く、去年のようなとんでもない事件も起きる事無く終わってまた一つ肩の荷が下りました。さあ今日は存分に飲んで騒いじゃいましょう!!」

『乾杯~!!!』

 

と一同から声が溢れて一気にジョッキが良い音を鳴らして行く。それぞれがジョッキの中にある酒などを軽く飲んでいる中、喉を鳴らしながらジョッキの中を吸い込んでいるかのような勢いで飲み干していく二人の姿があった。そして二人は同時にジョッキをテーブルに叩き付けると快感染みた声を発しながら満面の笑みを浮かべるのであった。

 

「「くうううぅぅぅぅぅ苦労の後のビール最高!!ビール大ジョッキお代わり!!」」

「流石織斑先生とナターシャ先生……普通のジョッキじゃ駄目だったみたいね……」

「普通のジョッキでも、確か約400は入るはずなのにそれを一気飲み……」

 

酒豪でも有名な二人である千冬とナターシャは存分に酒を飲んでいる、普段自粛しているがこのような場ではオープンしていくらしい。そしてそんな二人へと大ジョッキが運ばれてくる、それを受け取るとそれすら一気に飲み干してしまい追加のオーダーを入れる姿に思わず真耶は呆れてしまった。

 

「先輩良いんですか、カミツレ君にお酒控えるように言われてたじゃないですか」

「何、普段抑えているのだから今日ぐらいは好きに飲んでいいと御墨付きを貰っているさ!!いやぁ普段缶ビール一本だけだと酒の旨さがより分かるなぁ!!」

「全くねぇ。普段は教師としてある為に自重してるから、何時も以上に美味しく感じるわねぇ♪」

「はぁっ……まあ許可あるならいいですけど、それにしても良く許可下りましたね」

「学園長が食堂周りの工事って事にして許可してくれたのよ、一応此処だって立ち入り禁止になってるしね」

 

そう、今回の飲み会の舞台はまさかのIS学園の食堂である。去年の事もあったので今年は例年以上の体勢を敷いて挑んだ為にそれを労う意味で学園長が使用許可を出したとの事。それに合わせるように今日一日は食堂は工事で使用不能、代わりにグラウンドにてバイキング形式の食事会が行われているので生徒らが此方に来る事もない。故に先生方も自由に飲み食いが出来る。

 

「でも普段食堂にいる皆さんは外にいるのよね、今食堂には誰がいるの?」

「ああ、カミツレと一夏。その手伝いをする箒に乱だ」

 

そう言われて皆はまさかの生徒らが作っているのか!?と驚いてしまう、千冬も我侭のつもりで言ってみたらカミツレも一夏も快諾して料理を行っている。どうやら一度食堂の調理設備を使って思う存分に調理を行ってみたかったらしく酷く乗り気だった。しかも、何時の間にか調理師免許と栄養士の免許を取っているから大丈夫だとサムズアップして来た。

 

「というか、あの二人何時の間にそんな資格取ってたのよ……」

「知らん……以前学園長と二人が色々話をするときに、取れる機会があったから取ったと言っていたが……どんな機会だ」

「本当にどういう機会があったんでしょうね」

 

と気になる所だが、ともかく料理はとても美味しいしその辺りは余りに気にしないで置こう。オーダーを飛ばしても直ぐに料理が出来て出てくる辺り、本当に一夏もカミツレも料理に手慣れているのが伺える。特に野菜関係の注文をすると直ぐに料理が来るのでどんな感じになっているのか気になる所である。

 

「にしても本当に美味しいですねぇ流石カミツレ君です♪」

「ホントよねぇ、流石は千冬の旦那と弟さんといった所かしら?」

「まぁな!!さてと私は新たなツマミを注文がてらワインを取ってくる」

 

酒を解禁されたのをいい事に本気で酒を飲みつくそうとしている千冬、そしてそんな千冬にお供すると言って更に焚きつける数人の教員達に飲みすぎてカミツレに怒られないといいけどと思う真耶はモッツァレラチーズとトマトのサラダの美味しさに驚きつつも、実は意外に酒豪な一面で少々強めなワインを傾けていた。

 

「そうだ真耶、ちょっと聞きたい事あったのよ」

「なんですか~?」

 

と隣でシャンパンを煽っているナターシャが声を掛けてきた、共に差し出してくるジャガイモのチーズ焼きを共につまみながら話を聞く。

 

「ねぇっ真耶、貴方カミツレ君の事を如何思ってるの?」

「どう、ってどういう事ですか?」

「言葉通りの意味よ、貴方ってカミツレ君の事を如何思ってるのよ」

「如何と言われてもなぁ……前に言いましたけど、私にとって可愛い弟子ですよ?」

 

そう言いながら真耶は首を傾げる、自分にとってはそれで十分だと思っている。自分にとって初めてであり成長している姿を見るのが本当に楽しく、そんな彼に対抗してついつい自分も壁になって乗り越えてほしいとさえ思っている。唯それだけなのだがと答えるとナターシャは思わず溜息を吐いた。

 

「全くこんなに鈍感なんて……じゃあ何でカミツレ君の話をする時、凄い嬉しそうな顔するのよ。自分が良くやったって言われるより嬉しそうにするじゃない」

「だってそれは、初めての弟子ですし……」

「それだけじゃないわ。職員室でもよくあのこの事を口ずさんでるじゃない、正直言って師弟関係云々を超えてると思うわよ?」

 

そう呆れ混じりに言われてしまうと真耶は困ってしまった、自分にとってカミツレは本当の自分を出せる相手であって良き相談相手でもあるし、まるで弟のように可愛い存在でもあるし……色んな想いが巡っていく。

 

「でないと普通に抱き付けないし、彼の為に泣けないと思うわ」

「そ、そんな事、ないって……」

「言い切れるのかしらね、それとももしかして、貴方周りの人が凄すぎるからって遠慮でもしてるの?」

「え、えっと……」

「気にする事なんて今更無いでしょうに、まっ貴方の自由にすればいいと私は思うけどね。おっとシャンパン切れちゃった、追加してこないと」

 

自分が何か言う前に畳み掛けるかのように言っていくナターシャ、そんな彼女は言いたい事を言い切るとそのままシャンパンのお代わりを取りに席を立ってしまった。残された真耶は思わずグラスを見つめながら沈黙してしまった。そして同時に揺れるワインに一瞬、カミツレが見えたので顔を上げるとそこにはカミツレが料理のお代わりを持って来ていた。先程の話の為か、普段と違って不思議なドキドキ感があった。

 

「真耶先生楽しんでます?」

「え、ええ勿論ですよ!料理も楽しませて貰ってます、流石ですね」

「まあ一夏の手も借りてますけどね、今回はお疲れ様でした」

「それはカミツレ君もですよ、本当ならカミツレ君は疲れてるでしょうに……」

「いえいえこんなに思う存分料理とか、俺にとっては天国ですよ。しかもあんな設備で……ふふふっ」

 

実は凄まじい料理好きという新たな弟子の一面を見た真耶だったが、兎に角笑顔なカミツレにそんな自分も笑顔が零れつつ何処か胸の中が暖かくなるのを感じた。これは何なのだろうと思っていると、カミツレがジュースを入れたグラスを差し出していた。

 

「さっ乾杯しましょうよ」

「え、ええそうですね」

「「乾杯♪」」

 

とグラスを鳴らして一気に飲んだ直後、カミツレは調理場から飛んできた一夏のヘルプコールに応えるようにすっ飛んで行く。そして離れていく弟子の姿に何処となくさびしさを覚えて、自分の変化に気づく。思えば自分の人生の中で男性と此処まで密接な関係になった事なんて無かった。相手は生徒、と思っていたが……気づけばカミツレはどんどん成長して今や世界的にも大注目の人材になった。

 

「(えっえっ!?ど、如何してこんなにドキドキしているんですか!?今までカミツレ君とこんな事一杯あったじゃないですか、ど、どうしてなんですかぁ!?)」

 

と内心では荒れ狂っている感情に翻弄されてしまっていた。今までの事も考えてみれば普通に恥ずかしい事だしそれを簡単に出来るカミツレと言う存在、彼に対して自分がむけているこの感情は唯の弟子、という物では収まりきらない物になっている。

 

「(も、もしかして私ってば……えええええっっっ!!!??)」




真耶先生ってああみえて結構自分の本当の想いに対しては鈍感なイメージがある。

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