IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第222話 特別編2:その3

「そこだぁっ!!」

 

アリーナでは今日も元気にカミツレが己の鍛錬に励んでいた。基礎こそ奥義なれ、という言葉もあるように基礎訓練を行って徹底的に自分の力を伸ばそうとしている。幸いな事に基礎的な事を鍛え続けた結果、近接殺しの「超速零速」という必殺技を編み出した鈴がいるので基礎を鍛える事の重要性が良く分かるという物。まあ鈴の事が無くても基礎の大切さは師匠にみっちりに言われているので問題ないだろうが。

 

「上下右斜め下、おったぁ!!?上右下―――!!!」

 

今現在カミツレが行っているのは仮想的に相手を生み出し、その敵が繰り出してくる攻撃を回避しながら設定されているターゲットに攻撃を命中させるという物。言葉だけならば簡単のように思えるが、相手からの攻撃タイミングの予想、どこに向けて攻撃してくるのか、それらを回避した後の対処など様々な要素が絡んでくるので言葉で表すほど簡単ではない。加えてターゲットはそれなりのスピードで動き回るので、攻撃を回避しながら的の移動先を予測した偏差射撃が必要になってくる。そして一番辛いのが……その仮想敵とされているのはセシリアなのである。

 

故に攻撃は「ヴァンガード」で行われる、元々「ヴァンガード」自体がセシリアの「ティアーズ」よりも数も多いので非常に大変。そしてそこに「ソード・ヴァンガード」まで加わるので実際にセシリアを相手にするよりも大変のようにも思えるが、セシリアはフレキシブルを習得しているのでそれらに対する訓練としては非常に有効なっている。

 

『ふむふむ、上達しましたねカミツレ。射撃精度が上昇してますね』

「そりゃ、どうもぉ!!!」

『ではレベルを上げますか、それとレベルアップするのでノルマもリセットしますね』

「おいちょまっ……!?ふざけんなカチドキィィィィッッ!!!!」

 

生憎「ヴァンガード」を制御するのはカミツレではなくその相棒であるカチドキである。そしてカチドキは一切の手加減もしてこない故にコア・ネットワークを活用して「ティアーズ」からセシリアのデータを分けて貰ってセシリアの攻撃を忠実に再現しつつ、そこにアレンジを加えてくるので正直言ってとんでもなく辛い鍛錬である。

 

「くっそぉおおおっっ!!!」

 

身体を貫かんと迫ってくるレーザーをハイパーセンサーをフル活用して全方位を意識しながらも、小刻みなブーストで姿勢制御をしつつもその「ヴァンガード」の発射タイミングを見極めてフェイントには騙されないようにしながら的にも意識を分割して向けて、それらの移動方向に速度を計算してライフルを放つ。それでも意識集中と計算が甘いと的に当たらない。的をノルマ分射貫かないと永遠とこの訓練は終わる事がない。そしてカチドキがまた一つレベルを上げたせいで更に辛くなって来た。先程よりも「ヴァンガード」らの動きが更に苛烈になったうえに、絶妙なタイミングで「ソード」が突っ込んでくる。

 

「上等だゴラァァァアアアアアア!!!徹底的にやってやるぞぉぉおおおおおおお!!!!!」

 

と、新しく新設された専用機持ち専用アリーナからカミツレの怒声が響く渡るのであった。そんなカミツレを管制室から見守っている影が一つあった、それは彼の師である真耶であった。この訓練の立案をしたのも実は真耶である、カチドキの覚醒によって本来は"一対一"でなければ出来ない訓練が出来るのが良いと言っていたりする。

 

「やっぱりカミツレ君凄い……細かな噴射で繊細な機体制御で迫ってくるレーザーを紙一重で回避している……。大きく回避すれば次の回避に至るまでの時間が遅れてダメージを受ける、そのダメージが次のダメージを呼ぶ。これはダメージ厳禁の総合訓練、それなのにもうこんなに……」

 

と目の前で網のように打ち込まれているレーザーの雨を見つめながらカミツレの腕前の上昇振りに感心する。ハイパーセンサーも確りとフル活用しているようで瞳が絶え間なく動き続けている事が確認できる。まあこの訓練は人間が疎かにする死角からの攻撃の対処も含まれているので、ハイパーセンサーを完全に活用しなければクリア出来ないように立案したのでそうなるのも必然だ。カミツレも真面目にクリアしようとしているようで安心する。

 

「でもカチドキさんってば結構鬼ですねぇ……私は別にレベルアップしたらリセットなんて言ってませんのに……」

『カチドキィィィィィイイイイイ!!!!てんめぇぇええええええ!!!!!』

「凄い恨みが入った声だなぁ……」

 

また何か起こったのだろうか、モニターにあるノルマ数がリセットされてないので多分レベルアップした訳ではなくまた何か煽るような事でも言ったのだろうか……。仲が良いのか悪いのか、此処だけ見ると本当に分からなくなるが信頼関係があるからこそ、こんな事を言いあえるのだろう……きっとそうに違いない。

 

そんな目の前で必死に鍛錬に励んでいる弟子、思えば本当に彼は強くなった物だ。最初は何も分からない初心者だった、だけど彼はそこから努力し続けた。死を回避する為、一方的に設定された自らの終わりに到達しない為に血も滲むような努力を重ね続けた。そしてそれが実を結んで今ではイギリスの代表候補生、そして彼自身の手で手に入れた栄光が彼の成長を象徴している。今や彼は世界的に見ても優秀なIS操縦者と言えることだろう。それでも彼は歩みを決して止めない、何処か狂気的にすら努力し続ける。一度、聞いた見た事がある。

 

 

―――もう政府は貴方に手を出せない、それでも努力し続けるのは何でですか?

 

 

そう休憩中の彼に尋ねてみた、彼は良く冷えたドリンクを少し飲みながら言う。

 

『―――そうですね、確かに今の俺はもう努力し続ける意味は薄いかも。もう馬鹿でかい後ろ盾とか、力になってくれる人達がいる』

 

―――なら如何でしてですか?

 

『色んな人に支えられて、力になって貰えて、守って貰って……分かったんですよ。俺って本当に弱くて一人じゃ何にも出来ない餓鬼だって。弱いのはまあ、前から自覚してました。だからかなぁ―――もっと強くなりたいって思ったんです』

 

―――だから、ですか?別に弱い事は罪でも何でも……。

 

『ええ分かってますよ。俺は俺の為に力を貸してくれて支えてくれる人に恩返しがしたい、だからその人達が困った時に受け止めて一緒に解決してあげられるだけ強くなりたいんですよ。だから、ですかね』

 

―――カミツレ君……。

 

『まあISで強くなっても大した事には対処出来ないでしょうけど、まずは偉大な師匠達が安心して見ててくれる位になりたい、って所ですかね。さっその為にも鍛錬鍛錬、今日もお願いしますよ真耶師匠』

 

―――……。はい、私に任せてください!!きっとカミツレ君を立派な操縦者にして見せますとも!!

 

 

その時の言葉を忘れた事も無かった。彼の力になりたいと思った時と同じ、心から彼の力になりたいと思った。だから彼も今日も辛い訓練に身を投じる、一度誰かが言った。彼の訓練はとんでもない位に辛く苦しい物だと、自分とカミツレに言われた事があった。確かに辛く苦しい訓練、ヨランドによる物よりはマシだろうと真耶も心のどこかで思っていたらしくやりすぎていたと素直に思ったが。だがカミツレはこのままで良いと断言する。苦しさを超えてこそ生まれてくる苦難の中からの力がある。そして彼は自分に笑顔を見せて訓練をしようと問い掛けて来る。僅かにでも自分はカミツレの師として相応しくないと思ったのが間違いだったと思った。そして彼の努力に力を貸し続けている。

 

「カミツレ君、やっぱり貴方は―――」

『―――正直言って師弟関係云々を超えてると思うわよ』

 

不意に、先日ナターシャに言われた言葉がフラッシュバックした。自分とカミツレの関係は既に師弟関係を超えている。本当にそうなのだろうか、自分はカミツレとはただの師弟関係とばかり思っていた、いやその筈なのにあの言葉を受けてからそれに対して疑念ばかりが浮かぶようになってしまっている。確かに自分はカミツレが訓練に励む理由を一番深く理解している、その為に自分も師として確りと接しなければいけないと今までやってきた。弟子の為に師に足らなければいけないと思っていた、その為に様々な事をしてきた。

 

カミツレが大戦果を上げれば我事以上に喜んで、彼と喜びを分かち合った。彼が失敗すれば自分と一緒に頑張ろうと励ました。彼が何かに巻き込まれ不安になったときは涙を流しながら彼の元へと行って身を案じた。それが師として当然―――そう思い続けてきたからだ。そう、自分は正しい―――

 

『―――言い切れるのかしら』

「わ、私は……カミツレ君の事を本当に大切に―――!!」

『ッッシャアアアア!!!』

 

と自分の思考の海に潜ってしまっていた自分を現実に引き戻したのはカミツレの声だった。モニターへと慌てて目を向け直してみると、そこには見事ノルマを達成して大喜びしているカミツレの姿があった。幼い少年のように喚起しているカミツレに思わず自分も嬉しくなっている時、心の中がとても暖かくなっていった。そして同時に顔が凄まじい勢いで紅潮していく。

 

「ま、ままままっままままさか本当に……!?わ、私カミツレ君の事をそ、そんな……ど、どうして……本当に、す、すすすすっ―――えええええええええええっっっっっ!!!!???」

 

 

「い、今のって真耶先生の声か?な、なんだなんか叫んでるみたいだったけど……」

『カミツレの成果に驚いているのでは?本来今クリアしたレベルに挑戦する予定はありませんでしたし、リセットも本来無しの予定でしたから』

「おいゴラてめぇ」




尚、これ以上のレベルととなるともっと酷くなる鬼畜仕様。
極ドライブ使用して数を増産して、酷い事になる。尚考えたのは真耶先生。
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