IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第232話 特別編4:その3

「さあ真名さん、お次は此方ですわ」

「え、ええっ……でも良いのかしら、私なんかが出歩いちゃって……」

「良いんですよだって織斑先生のお墨付きなんですから♪」

 

と手を引かれている褐色肌に苦笑交じりの微笑を浮かべている少女事、カミツレが束によってTSさせられてしまった少女、今の名前を真名という。複雑な表情を浮かべたままセシリアと乱に手を引かれている、何故こんな事になったのか。本当は部屋の中でじっとしている予定だったのだが、セシリアと乱が折角バレないんだから周囲がカミツレにどんな印象を持っているのか見てみようと連れ出されてしまった。困った物だと、言いたい物だが正直それは気になっていたし良い機会だと捉えてそうする事にした。

 

「それにしても、なんか慣れて来ました?」

「正確に言えば割り切っているんだ、そうでもしないと自暴自棄にでもなりそうだ」

「流石カミツレさん、見事な対応力ですわ」

「そんな俺に育ててくれてる君達にも感謝しておこう」

 

と僅かにチクリと来る言葉に二人は苦しい笑いを浮かべた、そんな事を呟いている真名だが既に女子用の制服に慣れているのかロングスカートで如何歩くべきなのかも把握して実践している。それも割り切っているからこそなのだろうか、と思ったが以前親族が集まった忘年会の罰ゲームでアニメのコスプレをさせられた際にさせられたのが女性キャラばかりだったのでその時に多少なりとも耐性が出来てしまったとの事。

 

「あっセシリア先輩こんにちわっ!」

「乱さんこんにちわ~!!」

 

と元気良く挨拶をしてきたのは後輩の1年生達だった、どちらもイギリスと台湾から来ている生徒が一部いるようでどちらも二人の事を良く知っている様子だった。

 

「あれ、そういえば彼はいないんですか?杉山先輩は」

「ええ、少々所用で」

「へぇそれじゃあ良かったですね、フォローとかに回らなくていいんですもんね。全くあんな男自分で自分の事やれればいいのに」

 

とイギリスからの生徒が言った瞬間にセシリアの表情が変わって行く、同時に乱は小さくまだ居たのかっと呟いた。この学園では未だにカミツレと一夏を格差的に差別する事をし続けている生徒がいる。どちらも評価せずに一方のみを評価し続ける、カミツレを支持して一夏を低く見がちな方はまだマシな部類。一夏は最近の成長の幅は大きく、それらは新米の1年生達にも分かるほどでカミツレがライバルとして見ているのも分かると言った子が比較的多いが、問題なのは一夏を評価する側である。

 

この場合は一夏を評価していると言うよりも女尊男卑に染まっていて、純粋にカミツレの事を認めたく無いだけ。一夏は何故認めるかと言えば千冬の弟だからという一点のみ、そしてカミツレを認めないのは千冬と婚約したからというくだらない理由である場合が圧倒的に多いからである、これもISが作ってしまった世界の弊害とも言える。セシリアと乱が何か言おうとしたのと真名はアイコンタクトでとめる。

 

「そもそもISを使うと言う時点で許せないのに、千冬様と婚約とかありえないわ。絶対何かあるに決まってる」

「へぇっ……成程ね、つまりこの学園の生徒はそんな事で人を差別するくだらない所なのね」

「ってな、なんなんですか貴方は……?」

 

二人の影に隠れていたのか真名に気づかなかった生徒はその存在に漸く気づいて、まだ見ぬ年上の美少女にやや気押される。真名は杉山とはいわずに、真名と名乗った上で自分はIS適性が高いから入学を検討する為に此処を見学している事を伝えると生徒は高らかに適性が高い事を嬉しがった。

 

「やっぱりIS適性は女のステータスね、それが男との圧倒的な差よ!!」

「そうね、それは認めるわ」

「でしょうでしょう!!?」

「―――だけどそれだけでしょう、男の人との差は」

「……ハッ?」

 

少女は呆気に取られたかのように目を白黒させているが、真名は淡々と言葉のみを続けた。

 

「IS適性を持っている、持っていない。それだけの差しかない、それだけじゃない。そしてISの数には限りがあって全ての女性は乗れない。それなら乗れない女性は男性と如何違うのかしらね」

「そ、それは―――じゅ、順番さえ来れば使えるのよ!!!」

「順番。それじゃあ代表候補になる前の段階の候補生達に先に順番が行くのね、それだとして次に手番が来るのは何時かしら」

 

そう言われると少女は口を噤んだ、周囲の少女達もその話に聞き入っていた。確かに自分達の番の方が早いかもしれない、だがそれだけで乗れなければ男と何も変わらない存在である事に変わりは無い。

 

「それとさっきの話、杉山 カミツレと織斑 一夏だったかしら。その二人の差はなんなのかしらね、高々家族の違いなだけで本人達にどんな違いがあるのかしら。寧ろ、自分の力を証明してイギリスの候補生になった彼の方が上なんじゃなくて?」

 

と問いかけるとイギリスと台湾の生徒らはそれに同調するような反応をする。カミツレのこれまでの経緯は既に世界中に流布してその努力の凄まじさも知れ渡っている、それを認めようとしていない殆どは女尊男卑かカミツレと婚約した事を認めようとしないファンら。婚約した当人達の意思など完全に無視して自分達の意思を植えつけようとする愚か者達、そんな連中の言葉など意味は無い。

 

 

「な、何よアンタ……あいつの味方みたいな……」

「ええ味方よ、同時に織斑 一夏の味方でもある。二人はライバル、互いに腕前が互いに研磨させ合っている。どちらが欠けても今の彼らはない筈」

「くっ……」

「それと自己紹介を忘れてたわね、私は杉山 真名っていうの。カミツレにとっての従姉よ」

『えっ!!!??』

 

今まで隠されていた真実に少女は驚愕した、ならば自分が今言った事は全て彼へと齎されることが大いに考えられる。そしてそれは同時に千冬や束にも伝わる可能性があるとそれなりに聡明な頭脳を持っている彼女の脳が導き出した、そして彼女はその場で土下座をして謝罪し、どうか言わないで欲しいと懇願するとこの場が怖くなったのかそのまま走り去っていった。

 

「やれやれ、例え私が居なくてもセシリアと乱ちゃんに聞かれてる時点で伝わるって事分からないのかしら?」

 

その言葉に残った少女らはあっ、と言葉を漏らす。つまり彼女はカミツレの悪口を言った時点で詰んでいたも同然だったのだ。彼女はその後襲い来るであろう報復に恐れながら学園生活を送る事となり、カミツレが近くを通る度に悲鳴じみた声を上げて、物陰に隠れるのであった。

 

「やれやれ、致し方ないとはいえああ言う手合いが減らないのも嫌なもんだ」

 

と少女らと離れたセシリア達はそのまま近くの自販機でジュースを買って喉を潤していた、その際にカミツレが思わずボヤいた言葉に二人も頷いた。何も分かっていないからこそ言える言葉、無知は罪ではないが理解しないことは罪だ。

 

「なんだか恥ずかしい限りですわね……同じ女として」

「同感……何にも分かってないっというか子供みたいに駄々こねて認めようとして無いだけって感じね」

「まあそんな相手は放置しておこう、次は一夏の所に行きたいかな」

 

と言ったカミツレの言葉に二人は少々驚いた。何故と聞いて見ると少し悪い顔をしながら答えた。

 

「この事を黙ったままであいつの反応が見たい」

 

と言われ、二人も思わずそれに賛成した。




妻曰く、女子は女子同士なら話の内容を秘密にしてくれると思っているらしいです。
というかそうしないとグループから弾かれたりするので、それが暗黙の了解的な物になっていると言ってました。

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