IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第233話 特別編4:その4

「おおおおおおおおっっ!!!!」

 

アリーナ内に響く咆哮と凄まじい出力の放出による高速移動、それによる空気の切れるような音が響き渡っている。その中心になっているのは白い光の激しい機動、その残光は閃光となっている。そしてそれらが更に加速した時、光すらなくなりかけようとしていたが―――代わりに悲鳴のような物が聞こえると同時に光は地面へと激突していた。その光の正体は一夏だった、彼は自主練の為にラウラとナターシャに組んで貰った物を真面目に取り組みながら、自ら新しい物への挑戦も行い続けていた。今の訓練もその為の挑戦だった。

 

「くっそぉっ……やっぱり上手くなんていかねぇっ!!」

 

一夏は倒れこんだまま上手く行かないことに対して若干の怒りと大きな納得と何か掴みかけているかもしれないけれども不透明すぎて如何掴んで良いのか分からない、そんな感覚に頭を悩ませていた。

 

「はぁっ……よくもまあこんなのでカミツレのライバルって言えたもんだぜ……」

 

ライバル。力が拮抗しあって互いが互いを意識して勝ちたいと思う相手、それが一夏の思うライバルである。だがそんな自分自身がカミツレに相応しいライバルだと思えた事なんて一度もなかった。彼は自分よりも遥かに格上で一度も勝てた事が無い、そんな彼に追いつこうと一夏も努力を重ね続けている。そんな彼が自分と彼の違いを考えたときに真っ先に出た物があった、それは―――突出した技術、すなわち必殺技と言える物。

 

鈴の「超速零速」、乱の「爆発反転」、シャルの「高速切替」、ラウラの「ヴォーダン・オージェ」をフル活用した本気モード、そしてカミツレの「個別連続瞬時加速」とこれら全て必殺技と言える物だ。自分の「零落白夜」や剛剣もそうとも言えなくも無いが、あれは一方はあくまでも武装で一方は自分の個性に近い物で、しかもどちらも必殺技と言えるほどに使いこなせていない。ならそれを使いこなせるように基礎能力を上げるのも必要なのだろうが……。

 

「あいつよくもこれを完璧に使えるなぁ……カチドキのお陰でって言ったけど、それだってカミツレじゃなきゃ出来ないっての……」

 

それはその技術に対する知識や難しさを実際に身体を叩きこみ、体験する事でそれに対する技術の会得、あわよくば自分も出来るようになれたらめっけもん程度の認識である。だが思っていた通りにカミツレが今や当たり前のように出来るようになっているこの技術はとんでもなく難しい。国家代表すら完璧に扱うことが難しいとされているそれを十全に使えるというのがカミツレの究極の一なのかもしれない。

 

「使えるか分からない物を基本的に戦術的には組み入れない、不安定な物よりも遥かに安定した力の方が組み込みやすい上に危険も無いから、か……ラウラの言っていた通りだな」

 

スラスターを次々に点火させることによって加速を行う「個別連続瞬時加速」は機体にあるスラスター全てに意識を集中しながらそれらのスロットルを慎重且つ大胆、正確に操らなければ使用出来ない。しかも「瞬時加速」の際には自分の意思でスロットルワークを行うのが凄まじく難しい。例えるならば、ゲームの操作キーが常に上下左右凄い速度でランダムに変化し続けているようなものでまともに移動すら出来なくなる。しかしカミツレはそれをカチドキと協力する事でクリアして、戦術に組み入れる事を可能とした。

 

「うーん……対策なぁ……やっぱり色んなパターン想定してその練習しかないんじゃ無いかな。それなら鈴や乱さんの奴の対策にも繋がるし、よしその方向で行こう!!」

 

と考えている間に正直特別な技術は今の自分には早いとして、純粋に基礎的なレベルを上げる事にした。あのヨランドも基礎的な事を極めているからこそあの強さなのだ、となると自分のレベルが低いから出来ない事も多いのだと解釈して、せっせとレベル上げに専念するのであった。と言いたい所だったが……取り敢えずSEの補給と休憩を兼ねてピットに戻るのであった。

 

「ふぅっ……ありっなんだよセシリア義姉さんに乱義姉さんじゃねぇか」

「意地悪な言い方をしないでくださいな一夏さん」

「いきなり何よ気持ち悪い、でも義姉さんって呼ばれるのは悪く無いわね。後それを300回言って」

「嫌だよ面倒くさい」

 

とピットに戻った彼が見たのはこれから自分の義理の姉になるであろう二人の女性、カミツレの婚約者だった。それに対してちょっと悪戯的に呼んでみたりしながらピットのSE回復装置に「白式」を接続しながら二人へと視線を伸ばすがどうも彼女らの後ろに誰かがいるような気がした。するとセシリアが少々ワザとらしく一歩横にズレるとそこには褐色の少女が立っていた。

 

「こちらは杉山 真名さんです、カミツレさんの親戚なんですよ」

「えっマジで!?あいつからそんな人来るって話全然聞いてなかったぞ俺!?」

「そうなのよ、実は真名さんは結構なIS適性あるからって強引にIS学園入学を検討するように言われてるんだって。断るつもりらしいけど、今は形だけの見学中なのよ。それで今は私らが案内してんの」

「あ~……成程な。ったく政府ってのはどんだけ勝手何だよ……束さんにお願いしてマジで一回滅ぼされないと理解出来ないのかよ」

 

と何処か過激な発言を言うがセシリアと乱もそれに反論を述べるつもりはなかった、確かに政府は勝手な部分が大きいのは事実だからだ。そんな中心にいる真名は笑みを浮かべながら一夏へと歩み寄って手を差し出し、一夏もその手を取って握手する。

 

「初めまして、で良いのかしらね。杉山 真名です。貴方のお話はよく彼からよく聞いてました」

「えっと織斑 一夏です。そ、そうですか?なんか恥ずかしいなぁ……」

「ええっ、最初は酷い言い様でしたよ。君のせいで此処にいる、馴れ馴れしい、頭足らず、脳足りん、気持ち悪い」

「う、うわぁ……」

 

次々と出てくる昔の本音の数々に一夏はそんな風に思われてたのか、と若干ショックを受ける。

 

「後凄い近づいてくるからホモなんじゃないかって相談も受けたかな」

「……マジかよ……。い、いや昔の俺ならそう、思われても……」

 

と更なるショックを受けた一夏はその場に座りこんで酷く落ち込み始めた。これも真名であるカミツレの狙い、この際に一夏に対する不満をぶちまけようとしている。

 

「まだ聞く?カミツレからは全部聞いているから」

「……せめて、もうちょっと待ってください……」

 

一夏には目の前の超絶美少女が、何処か死神の鎌を持った何かの使いのようにも見えてきた。


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