「ご、ご馳走様……。あぁぁっ~食った食った……というか食いすぎたレベルで食べた……母さん、作りすぎ……」
「だってカミツレが帰って来てくれて嬉しかったんだもん♪ついつい嬉しくていっぱい作っちゃった♪」
数ヶ月振りに母の作る料理を堪能したカミツレ、しかし愛理もカミツレの為に作ってあげられる事が嬉しいのか大皿に乗せるような料理を大量に作ってしまった。しかもかずみんとリチャードを待った方がと言うのだが、別の分を既に部屋に運んであるから遠慮しないで食べて♪っという母からの言葉を受けて観念するように一心不乱に目の前に積み重ねられた料理の山を平らげるのであった。学園で身体を鍛えていた影響で、それなりの大食いになっていたのが幸いしたのか全てを完食する事に成功した。
「あ"っ~もう駄目何も食えない……」
「お粗末様、デザート食べる?バケツプリン作ってあるのよ!!」
「だから、もう食べられないって言ってるでしょうが……3時のおやつとかにしてくれ……」
甘い物は別腹というが限界まで詰め込んだカミツレにとって別腹なんて存在しない、お茶程度なら入りそうだが正直言って固形物は入りそうにはない。入れられた緑茶も少しずつしか入っていかない……。
「そ、それでお爺ちゃんは……?」
「お爺ちゃんなら会合に出てるわよ、今日も政府の人相手に怒鳴り散らしてるのよ」
「兄貴からのメール見てたけどさ……凄い剣幕らしいじゃん」
「そうなのよ、この前会合に皆さんの分も作ったお昼を持って行ったら集会所の外まで怒鳴り声が響いててビックリしちゃったわよ」
カミツレがIS操縦者としての適性が発覚してからというもの、政府の人間が頻繁にこの辺りを訪れては杉山家となんとか交友を図ろうとしたり、カミツレを手に入れようと画策したり、研究所に入れた後に何か言われたりしないようにと行動をしようとしていたが……地元では大地主としてだけではなく信頼もとんでもなく厚い杉山家、そんな跡継ぎでもあるカミツレの事を多くの人が心配しており政府への敵対心や猜疑心は膨れ上がる一方であった。そしてカミツレの祖父である白鯨は断固として、政府からの要請を受け入れる事はなかったという。
「まず四の五の言う暇があったら、俺の孫を無事に俺の目の前に連れて来てからにすんだな!!!って言ってたわよお爺ちゃん。ここらの買収とか上がってきたけど、ここらは杉山家が代々受け継いできた土地だからそんな物跳ね除けてたわね。ずっと前のご先祖様からの権利書とか証拠になる物もいっぱいあったし」
「流石お爺ちゃん……お爺ちゃんだけには俺絶対勝てない気がする」
「それは同感」
と祖父には多分これからもずっと勝てないんだろうなぁと思いつつ、お茶をすする。兎に角祖父も元気そうで何よりだった、自分が居なくなってから、あいつなら大丈夫だ俺の孫だ。と言いつつも何処か寂しいのかそれを紛らわせるように酒を飲んでいた毎日飲んでいたらしいが……。まあ居た時から凄い酒豪で何時も酌をしていたので変わりないような気もするが……。テーブル近くに置かれている日本酒の瓶が前よりかなり増えている。
「酒の量、増えたのか……どうせ兄貴と一緒に飲んでたんだろ。俺の安全祈願だとか言いながら」
「あらっ私も一緒に飲んでたわよ?」
「……」
そうだった、兄の一海もそれなりの酒豪だが愛理も相当酒に強い事を忘れていた。家では未成年の自分を除外して酒盛りなどがよく開かれていた、ぐいぐいと飲まれていく酒に摘まれていく肴の野菜たちと自分の作った料理。遺伝的に考えると自分も酒に強いのだろうか……。
「かずみんがメールで貴方の無事とか代表候補生になったって聞いた時はもう本当に嬉しくてね……あの時は翌日が収穫日なのに皆集まっての大宴会になっちゃったわよ」
「うぉい何やってんだよ!?確か色々収穫するものあっただろ!!?」
「大丈夫よ、私たちは無事だったから一日掛けて収穫したから」
「それ、他は全滅してたって事かよ……」
「ええっ三羽烏の皆さんも物の見事に」
と呆れているとかずみんとリチャードが部屋から出てきた、どうやら話し合いが終わったようだ。
「おっカミツレ飯食い終わったか?」
「やっとね……母さんってば作る量多すぎるんだよ……」
「愛理さん美味しいご飯有難うございました、いやぁ大満足です。ですがうちのドロシーの料理も負けてませんよ」
「そりゃ愛妻のお料理にはかなわないわよぉ。だってそれにはリチャードさんの奥様が、リチャードさんに向けた愛がたっぷり入ってるんですもの♪」
「い、いやぁ照れますなぁ♪」
とかずみんと色々と話しこんでいたイギリス移住後の計画も漸く終わったらしい。移住後の土地の選定やオルコット家とウォルコット家、そしてイギリス政府との提携し「新・俺達の杉山ファーム inイギリス」として開始される事が決定となった。ついては後日、白鯨とかずみんが一緒にイギリスに行って土地の詳しい状況などを見てどのようにやって行くかを決めていくらしい。
「名前如何にかならなかったのかよ」
「そりゃまあ現主の俺の決定」
「……まあ良いけど、お爺ちゃんはイギリスに行く事とか良いのかな。ずっと此処で暮らしてきたのに……」
それがカミツレにとっては心苦しいものがあった。白鯨、いや杉山家は先祖代々この土地で暮らしてきた。それをたった自分一人のせいで土地を離れるような事になってしまったのが申し訳なくてならない。が、リチャードはそれに関しては気にしなくても良いと思うと告げる。
「だってねぇお爺様全然気にしてなかったよ」
「えっ」
「確か……『イギリスに引っ越す?別に構わねぇぞ、先祖代々の土地っつってもそこに長く住んでただけの話だろ。んなもんより大事な孫の為なら俺はドーバー海峡だったか、そこを全裸で往復してやっても構わねぇぞ』って言ってたもんな爺ちゃん」
「あのお爺様ならマジで出来そうだから怖いですよ、というか絶対出来ますよね」
と全く気にしない発言が飛び出てくるのであった。そんなこんなでイギリス移住の件は問題なく進行し、この土地も信頼出来る人の元へと渡されることが決定したという。
やっぱり帰省は日常系になっちゃうからたいくつされないかが心配だな……。
でもこういうのがカミツレの願いだしなぁ……。