「ああっ!?待って待って待ってっっ!!?ああっスマッシュボール取られたぁ!!?」
「ちょっと赤ちゃん何やってんの!?」
「ちょやめこっちくんなっ!!」
「ランドマスタァァァアアアア!!!」
「「「天空連行はやめろぉぉぉお!!!」」」
カミツレは自室に戻ってのんびりとしながらゲームをして過ごしていた。折角帰って来たのだから農作業を手伝おうと思ったのだが既に終わらせてしまっている上に折角帰ってこれたのだからのんびりしていろとかずみんから言われてしまったので部屋に戻り、取り敢えず学園に連絡を済ませると部屋にやってきた3人と共に仲良くゲームをしていた。それは杉山ファームで働いている仲間でかずみんを頭と呼んで慕っている通称三羽烏の面々であった。
「だぁぁっもうカミツレ強すぎるだろ!?俺達だって特訓してたんだぞ!?」
「そう簡単に勝てねぇか……流石頭の弟だぜ」
「でもさ、これでもカレちゃんが修行中の狐でこれってフェイバリットのクッパだったら僕達確実にボコボコだよね」
上から大山 勝、相河 修也、三原 聖吉。それぞれがよく身に付けている物の色からそれぞれが赤、青、黄とされて三人纏めて三羽烏と呼ばれている。総じて杉山ファームではかなりの働き者で商売や人付き合いや交渉やナビゲートと言った様々な分野に精通していてかずみんを補佐するような役回りをしている。カミツレにとっては兄の取り巻きだが自分にも仲良くしてくれる友達のような存在。
「にしてもよぉ……イギリスか、なんか想像つかねぇな」
「しょうがねぇだろ、日本は真っ先に研究所に送ろうとしてた国だ。そっから脱出するのが一番だろ」
「なんか悪いな……皆にも迷惑掛けちゃってさ」
「何水臭い事言ってんだよカレちゃん、俺達の杉山ファームが栄転するって考えればいいんだよ。今まで以上の規模と世界中に顔が利く貴族と提携するんだから寧ろいい事なんだからさ」
と言ってイギリスの代表候補生になる事で住みなれている日本からイギリスへと移住する事に責任を感じてしまっているカミツレ、それは三羽烏も同様で最初は日本の杉山ファームの跡地を任されるはずだったが、頭は自分達が居なくて何が出来るんだと反論し、色々あって彼らもイギリスへと行く事になったらしい。
「というかカミツレが責任感じる事ねぇだろ、寧ろお前被害者じゃん。元々決まってた進路を崩されて、人体実験されるかもしれなくて政府の勝手な方針で人生どころか命を崩されそうになってんだぞ」
「そうだよ、それを自分の力で何とかしようと努力した結果のイギリス行きだろ。誰も文句言う資格はねぇよ」
「言うんだったらカレちゃんの苦労と同じ事を体験してもらわないと駄目だもんねぇ~」
「……そう言ってもらえると心なしか、気が楽になるよ」
それでも何処か顔色が余りよくないカミツレ、周りが大丈夫だと言っていても本人からすれば自分だけば済めばよかったのに周囲まで巻き込んでしまった事を深く後悔しているようにも見える。今回のような事でたった一人だけの犠牲で済めば良かったなんて事は無理に等しい、如何足掻いても家族などにも迷惑が掛かる。その負い目が全く消えない、そう思っていると勝が背中を思いっきり叩いてカミツレをベットまで吹き飛ばした。
「いってぇっ!!?」
「まあそんなグダグダ言うよりもよ、もう直ぐ白鯨の爺さん帰って来るんだから摘みでも作ってやれよ。きっと喜ぶぜ」
「そうだな、あの爺さんずっとお前の事気に掛けてたからな。それで俺の孫だから大丈夫って言いながら神棚に向かって真剣に祈ってたんだからな」
「そうそう、僕達はそろそろ会合の方に行かないといけないからさ」
「わ、分かった……というか赤さんくっそいてぇ……」
「おっそりゃ悪かったな!!」
そう言いながら一階へと降りて行くカミツレ、痛み背中を擦りながら下りると愛理が何やら準備を行っている。
「母さん、何それ?」
「あらっカミツレ、そろそろお爺ちゃんが帰って来るから、お酒のお供作りよ。お隣さんから活きの良いマダコを貰っちゃったのよ。それでこれから締めようかと思ってたところなの」
「マダコか……。母さんそれ俺がやっても良い?」
既に夕食は食べ終わっているがそれでも祖父は帰って来なかった、最近は政府の人間が来ると何時もこうらしい。毎回毎回会合で相手に文句を言いながら何かを食べているらしいので今回もお酒だけの準備をしているとの事。ならばそれをやりたいと申し出ると愛理は少し心配そうな顔をする、折角帰って来てくれたんだからもっとゆったりのんびりとしていて欲しいようだ。
「良いのよ別に、貴方は大変だったんだから帰って来てる間ぐらいは……」
「俺がやりたいんだよ、久しぶりにこの家で腕を振るいたい」
「……そう言う事なら良いわよ、その代わり―――」
と愛理はカミツレの目の前で人差し指を顔の前に出して笑顔を作りながら言う。
「テナガダコもいっぱい貰ったから、これでタコキムチを作ってくれないかしら♪」
「おう。そっちも勿論、活きが良いんだろ?」
「当然♪」
V(≡ω≡)V、とVサインと表情を作っている母に笑いかけながらエプロンを付けて早速台所に向かう。自家製のキムチを刻みながら平行してマダコを締める、そして入念に洗っていると玄関の扉が開く音がして低い声で帰ったぞっという声がしてくる。
「おかえりなさい、今日も遅かったわね」
「全くだ。これも政府の小僧がアホなせいだ、俺達がイギリスに行くのを必死こいて止めようとしやがる。今更掌返して俺達に擦り寄ろうとしたって気持ち悪いだけだ、人間の心ってもんを何も分かっちゃいねぇ」
そう言いながらリビングに入って来たのは老人であるにも拘らず屈強な肉体、長身である事も加わって酷く威圧的な風貌をしている。所々浅黒い肌が何処か歴戦の猛者のような雰囲気をかもし出している、自分の祖父でもある杉山 白鯨は愛理が自分を出迎えているのにキッチンから音がするのでかずみんが料理でもしているのかと顔を覗かせると、一瞬驚いた表情になったが直ぐに顔を朗らかにしてそっと、自然に言った。
「よぉっ帰ったぜカミツレ」
「お帰りお爺ちゃん、今お摘み作ってるから先に汗流してきちゃったら?」
「そうだな。今日もすげぇ汗かいたからベタベタして気持ち悪い。先にこの不快感を流してくるか。酒の用意頼むぜ」
「うん、分かった」
そう言うと一度カミツレの頭を撫でるとキッチンから出て風呂場へと向かっていく、愛理は普段と変わり無い光景に一瞬不満げにしていたがカミツレの酷く嬉しそうで満足している表情を見ると彼は何時も通りの日常を望んでいたのだろうと分かった。それを白鯨は真っ先に感じ取ってIS学園に行く前と変わらないやり取りをしたのだろう。
「男子三日会わざれば刮目して見よ、か……ったくでっかく
と服を脱ぎながら目頭を押さえ、孫の成長に喜ばしく思いながらも何処か寂しさと本来しなくてもいい苦労をしてきたカミツレの事を思うのであった。