IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第241話 特別編5:その7

日本のどこかでタレントが所属事務所が色んな意味で潰れるというとんでもない事象に巻き込まれている最中、カミツレは本格的に寝始めた母をベットまで連れていって代わりに家事を行っていた。洗濯機を回している間に掃除機を掛けていく。洗濯機が回り終わるのを見計らって掃除を終わらせると、夜の内に干されていた物を取り込んで代わりに新しい洗濯物を干していく。

 

「ふぅっ……これで終わりかな。いやぁやっぱり家事をしてると心が落ち着くな。帰って来たって感じが本当にする」

 

普段から愛理と共に家事などをやっていたカミツレにとってこれらは日常の一部であり当たり前の事、故にやっていると何処か穏やかな気分になる。残念なのは是非とも買い物にも行きたいのだが、それらは出来ないという点にある。自分とて危険な事に頭を突っ込みたくなんてないのでやめておく事にした。取り敢えずやる事は全部やってしまったので自室に戻りながらIS学園に今日の分の連絡を済ませるとベットに身体を投げ出して天井を見上げた。

 

「なんだろうな……妙に暇っというか、穏やかななのは良い筈なのに……」

『明らかにIS学園での騒がしさに慣れてしまっていますね。刺激が足りないと思っているのでは?』

「あぁっそれはあるだろうな、本当にIS学園は色んな意味で暇しなかったからな」

 

自室になったので声を上げた相棒のカチドキの言葉に思わず同意してしまう、確かに常に様々なイベントや騒がしさで満ち満ちていた学園と比べると酷く平和で穏やかな此処は多少退屈に思えるかもしれない。それに向こうでは頻繁に行っていた訓練もここでは出来ない、その辺りは致し方ないが少し退屈に感じてしまうのは直さないといけない気がする。

 

「そういえばさ、此処は本当に大丈夫なんだよな。どこぞの国がISとか持ち出してきたら俺も展開して応戦しなきゃいけなくなるぞ」

『それならご安心を。この辺りには私以外のISの反応はありません、それに仮にISを持ち出してきたとしても私達ISコア全員はカミツレの味方ですので即座に機体その物が拒絶反応を示し、活動不能状態となりますので』

「そりゃ良かった、俺ってコアの皆に認められてるんだな」

 

その言葉にカチドキは少々驚きつつも頷いた、此処は身の安全に安心すべきはずなのにカミツレにとって重要なのはコアに自分が如何思われている事だったらしい。

 

「そうなると本格的に俺がやるべき事って無いな……家事も全部やっちゃったし、農作業したくてもその場合は面倒な事になりやすいし……」

『それならゲームでもしたら如何ですか?』

「その辺りが鉄板か、んじゃバトライド・ウォーの創生でもやるか」

 

この後、適当にゲームをしながら時間を潰しているカミツレ。時々カチドキからこのキャラを使って欲しいなどの要望を受けながらも途中から甲子園に切り替えたりとそれなりに有意義な休日を過ごしていた。そして同時に思うのであった―――やっぱり自分はこういう平穏が大好き、だからこそ鍛錬にいそしんだりもしていたんだなっと。

 

 

「―――さんっ、カミツレさんっ」

「んっああなんだいセシリア」

「いえ先程からずっと空を見上げたまま、ぼうっとしておりましたので」

 

気が付けばカミツレはIS学園の屋上に寝そべっていた。隣にはバスケットを抱えたセシリアがシートの上に腰掛けて此方を見つめていた、学園別トーナメントも終了して学園も普段どおりの喧騒へと戻って行く最中カミツレはセシリアと共に屋上で昼食を取る事になった。

 

「何か、思い出されていたようにも見えましたが」

「……ああっ。去年の夏に帰省した時の事さ、心から羽を伸ばせた時間だったよ」

「そうでしたか、そう言えば間も無くまた夏ですわね……」

「そうだな……」

 

もう静岡のあそこに自分の家は無い、既に家族はイギリスに移住しあそこ一帯の土地は信頼出来る人へと譲っている。故に帰るとしたらイギリスだ、今度はあそこに自分の家があるのだ。何処か寂しくもあるがそれが自分の選んだ道なんだ、そう思っているとセシリアがバスケットからサンドイッチを差し出してくるのでそれを受け取り頬張る。程よく塩気が利いたベーコンに少し甘い卵、そして新鮮なレタスが使われたBLTサンドに舌鼓をする。

 

「あの時に比べたら本当に料理上達したねセシリア」

「あ、あの時の事は言わないでください……あのようなデザートを冒涜したかのような甘みの爆弾のようなサンドイッチを作った事はもう黒歴史なのです……」

 

そう言いながら顔を赤くして自分も少しずつBLTサンドに手を付けるセシリア、過去に彼女はそれこそ味覚を破壊しそうな程に強烈な甘いサンドイッチを作っていたが今では上達して料理上手になっている。プロとまでとは言わないが、セミプロと言っても過言では無い腕前となっている。

 

「なぁセシリア、今度の夏休みに皆で俺の家に行かないか?今度は皆で過ごしたいな」

「それはとてもよいお考えですわ!!きっとリチャードおじ様も賛成してくださいますわ」

「俺としても千冬さんやヨランドさんを紹介したいしさ、それに―――」

 

カミツレはセシリアを抱き寄せながら彼女を顔を見ながら言う。

 

「俺の口から言いたいんだよ、俺が愛するって決めた人ですって。心から一緒にいたいって事をさ」

「カミツレさんっ……嬉しい、ですわ私、やっぱり貴方を好きになって良かった……」

「愛してるよセシリア」

「私も、です……」

 

二人は自然と瞳を閉じて唇を重ねる、二人の体温を確かに感じながら愛情と絆を確かめ合いながら。そして皆でカミツレの家族と会ってしっかりと挨拶をする事を決めるのであった。




という訳で特別編5も終了です!!
本編のプロットも形になって来たので、次回からは本編再開していきます!!

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