IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

245 / 341
第245話

「『勝鬨・大将軍専用超高速機動適応装備:リミットオーバー・ドライブ』って……随分長いですね」

「まあ正式名称込みの名前なんてそんなものさ!!某汎用人型決戦兵器だって全部ひっくるめたらすっごい長いぞ!!」

「いやまあ確かにそうでしょうけど……あれとこれを一緒にするのはどうかと思いますよ……?」

 

そんな風に語るリオノーラの言葉を受け流しつつも何処か呆れ顔を作る師弟コンビを放置しながら、肝心の鬼才は改めて件の『リミットオーバー・ドライブ』のデータをモニターへと出力していく。映し出されていく全貌は正しくカチドキが大好きなドライブに酷似した姿となっている。真紅の装甲に両肩のタイヤを模したパーツ、頭部にはリアウィングまでもが装備されている。各部には金色の球形パーツが存在しそこには白銀の『R』が刻み込まれている。

 

「如何かなこのデザイン!!本家ドライブをリスペクトした結果なのだがね!!」

「これはまた、随分似せてますね……なんか言われそう」

「その辺りの事は大丈夫だ。私がイギリス政府を通じて石森プロと東映に連絡してデザインの許可と各部修正をお願いしたから」

「まさかのご本家の許可済み!!?」

 

予想外すぎる言葉にカミツレが驚愕の言葉を上げている中、カチドキは必死に声を抑えながら途轍もない興奮の声を上げている。それゆえか先程から待機状態の「大将軍」がマナーモードの携帯のように震えまくっていてやかましく感じられる、気持ちは分からなくは無いがもう少し落ち着いて欲しいものだ。

 

「因みに修正された部分は金色のパーツバランスとエンブレムの大きさだけだった」

「マジかよ……」

「そ、それにしてもこれ……スペック上とんでもない速度になりますよ……」

 

真耶がまず注目したのは『リミットオーバー・ドライブ』を装備した場合の「大将軍」のカタログスペックであった。ハッキリ言って尋常なレベルでは無い、機動力で言えば間違いなく全ISトップになっている。基本的な機動力で言えば「大将軍」は「ディバイダー」を装備した高機動形態でもなければ「白式」の方が上であったのに、この場合は完全にそれを凌駕してしまう。嘗て軍用機であった「福音」が叩きだした超音速飛行である2450キロをも超えていくスピードを出すことが出来る。

 

「まあこれはあくまでリミッターを掛けなかった場合だけどね、競技用にリミッターを施した場合はこっちだ」

「そ、それを早く言って下さいよぉ~……」

「いや師匠、それでもこれ十分やばいです」

 

例えリミッターを掛けたとしても十分すぎるほどにやばい、最高出力は完全に「白式」どころか、別世界で二次移行して至った「雪羅」すら追い抜いている。自重してこれというのも怖い話である。

 

「それにこれは唯単に速度があるだけでは無い、超高速機動適応装備……そう言っただろう?」

「あっそう言えば……」

「これは言うなれば超高速機動中の操作補助的な装備でもある。高速移動中の攻撃補正や出力調整及び姿勢制御などを自動的に行いながら、操縦者を保護する特殊フィールドを展開する機構も搭載されている」

「それって……例えば「稲妻軌道動作」の最中に「瞬時加速」を使っても勝手に補正してくれるって認識でOKなんですか?」

「大体あってる」

「そ、それって超画期的じゃ無いですか!!?」

 

激しい軌道を描きながら高機動を行う技術である「稲妻軌道動作」、それらに更に「瞬時加速」などを加えようとすると難易度が一気に急上昇する上に、機体に掛かる負荷は一気に倍増していき同時に操縦者にとんでもない負担を掛けてしまい操縦者を危険に晒してしまう。世界最高峰とも言われている操縦者の中でもほんの一握りの存在しか高難易度高機動操縦技術に技を加える事は出来ていない。それを改善できるというのであれば凄まじい発明だ。

 

「だろう!?と言いたい所だが、これにも弱点がある」

「弱点、ですか」

「まず特殊フィールドの生成は常時行える訳ではない、生成を行うには機体の稼働率70%以上にする必要になる。加えて展開にはある程度の時間を要する。稼働率についてはカミツレ君なら大丈夫だろうが、すぐに使えるという物ではない」

「成程……」

「加えて、フィールドの高出力展開は最長でも120秒が限界だ。ある意味これはリミッターの解除に近いからね、故に切り札的な物だと考えてくれたまえ」

「ドライブというかどっちかと言えばファイズのアクセルフォームみたいな感じしますね」

「うむ、まだまだ研究が必要でね……。これ自体も"展開装甲"の活用と言うよりも"展開装甲"の機能を一部固定した上で増幅に使う為の補助装置的なものだからねぇ……まあ通常時でも「稲妻軌道動作」の補正や補佐なんかは普通にしてくれるから」

 

流石のリオノーラでもまだまだ展開装甲の研究は不十分であるらしく、これからの研究の為にもこの装備を使って欲しいとの事。因みにこれらは通常時でも各パーツを呼び出して装備する事が可能であるように作ってあるらしいので「大将軍」のままフィールドを展開することも可能らしいが、出力は弱くなるので注意して欲しいとの事。

 

「では早速インストールを開始しようか」

「了解です」

 

カミツレは相棒を展開しながらリオノーラが一緒に持ってきたコンテナの内部に収納されている件の「リミットオーバー・ドライブ」へとご対面した。改めて見ると矢張りドライブをかなり意識しているデザインになっている上に何処かドライブアーマーの印象も受ける。それらに身を委ねるようにしながらそれらをインストールしていく。

 

『ああぁぁっ、ぁぁぁぁっ……ドライブアーマーが私の中に……しかも公式公認だなんて……なんて誇らしい喜び……!!!』

「(まあうん、良かったなカチドキ)」

『ああっ……これも私が、以前お母様が談義の途中で意見を求められた展開装甲の理論を独自に発展させたまま二次移行した……お陰だなんて……!!』

「(……お前、さらっととんでもない事言ってるからな……?)」




因みにドライブドライバーには未使用音声としてタイプ・オーバーの音声が存在します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。