IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第247話

「やれやれ、面倒な事を頼まれたもんだ……」

『天才は一を知って十を知る、故に努力の重みを知らない。という事をコア・ネットワーク内で聞いた事があります、そのジラ・クラウザーもそう言った類の人間なのでしょうかね』

「かもな……。やれやれ天才が全員鈴や乱ちゃんみたいな奴だったら苦労はしないんだけどな」

 

カミツレは早速アリーナへと飛び出すと向こう側のピットから件の天才少女が飛び出してくるのを待つ。自分の周りにいる人間も割と天才気質というかガチの天才が多いが、彼女らは天才であるが故に努力の重みや重要性を知っているし努力の天才と称するに値する者ばかり。だからこそ努力による研磨で増して行く実力の大きさを認識した来たともいえる。ある意味初めて会うタイプの人間に心なしか不安を抱いていると向こう側からラファールを纏った少女が飛び出してきた。

 

「アンタがカミツレ・杉山ね、なんでアンタみたいな奴がアタシより上に評価されてるのか理解出来ないわね。どうしてセシリアもアンタみたいな奴と婚約したのか理解出来ないわ」

「なんかいきなり馬鹿にされてる気がする……」

 

飛び出してきた少女は此方を品定めもしようともせずに侮蔑的な視線を向けながら、吐き捨てるかのように自分に対する印象を言ってくる。見た目としてはセシリアと同じく金髪碧眼の勝気なモデル体系な美少女と言うべき容貌なのだが……口の悪さと態度の悪さがそれらをぶち壊しにしているようにしか見えない。

 

「フン、アンタなんかアタシよりも確実に格下なのよ。それなのに男性IS操縦者ってだけで持て囃されてるだけじゃない!!ISの世界は実力が物を言うのよ!!!」

「それには同感だな、ぶっちゃけのあの肩書きのせいで俺も迷惑してんだよ。よく分かってるじゃないか」

 

とジラの言葉を一切否定しようともせずに肯定し、彼女を褒めるかのような言い回しをする。そんな言葉遣いのカミツレに何処か嫌悪感を覚えるのか、舌打ちをしながらライフルの銃口を向ける。

 

「戦乙女にあのルブランまで婚約者なんて信じられないわ、どうせアンタがなんかやったとかなんでしょう!!?」

「いや、俺がなんかやったとしてもあの二人なら実力で粉砕するだろ。仮にんなことしてたら俺、もうこの世にいねぇよ」

「うっ……た、確かに……」

 

とお互いに思わず納得してしまう辺り、あの二人の規格外さが世界中に広まっているのがよく分かる。

 

「それにアンタ生意気なのよ、なんで男が二次移行とか出来るのよ!!?どうせ篠ノ之博士に取り入ってして貰ったとかなんでしょう!!?」

「ああそうか、そういう手段もあるのか。いや、幾ら束さんでもそれは望まないだろうな、子供の成長に関わる事だし……仮に出来たとしても……ああいや、あの人に任せたら色々と大変な事になるか……」

 

と束の事を既に深く深い間で知っているカミツレからしたらそれこそ有り得ない、束にとって楽しみである子供の成長を自分の手で無理やりさせるなんて事は絶対にない。仮に出来たとしてもなんかとんでもない事になりそうだから絶対に嫌だと顔を青くしているとジラは自分が思い描いていたカミツレのイメージとかなりかけ離れている事に驚いている。

 

「(な、なによこいつ……?ママが言ってたのと全然違うじゃないのよ……。全然愚鈍って感じじゃないし自分の事を貶されても事実だと認めるし、周りの事を振られてもそれに対して真剣に耳を傾けたりして……)」

「んで如何するの、戦うのか?」

「あ、あったり前じゃないのよ!!!アタシこそが格上だって事を証明してやるわ!!!」

「そりゃ楽しみだな、それじゃあダンスパートナーを務めさせていただきましょうかね……?」

 

その言い回しに思わずセシリアに似たものを感じたジラだが、直ぐに気持ちを切り替えていく。直後、試合開始のブザーが鳴り響いて行く。

 

「先手必勝!!!」

 

と両手に握り締めたライフル、それらを同時に向けながら引き金を引きつつ上を取るかのような軌道を描いていく。此方へと向かってくる銃弾を分離状態の『ディバイダー』に自動防御を行わせながら、同時に上昇していきつつもその手にライフルを握ったカミツレは冷静に一射。それをアクロバティックに回避しながら、まるで新体操をしているかのような柔軟性のある動きをしながら射撃を行ってくる。

 

「(弾幕を張りつつ出方を窺ってる……にしては無駄な動き多くないか……?今の一発なら普通に回避しても十分に反撃出来ただろ)」

「はぁぁぁっっ!!!」

 

そのままジラは一気に回転するかのようにしながら急接近してくる、その手にはブレードが握られておりこちらを一刀両断でもするかのように迫ってくる。だがそれをブレードを展開して受け止めると、彼女はにやりと笑いながらブレードから手を放して、そのまま自分の背後をとるかのようにしながら蹴りこんでくる。が、カミツレにしてみれば背後を取られることなんてセシリアとの対戦では日常的なのであっさりと回避する。

 

「ちっハイパーセンサーをフル活用してるっぽいわね!!」

「(普通に動きは良いし機転も利いてる)」

 

ジラは再び距離を取ったと思いきや一気に加速してカミツレの周囲を猛スピードで飛行していく。周囲を取られたカミツレだが、慌てることなく飛び回っているジラへとトリガーを引くとレーザーは彼女が片手に保持していたライフルへと直撃して爆発する。

 

「キャアッ!!?戦いのセオリーって奴を知らない奴ね!!!」

「(……成程な。そういう事か、分かったぜ)」

 

先程から感じていた妙な違和感に気づいたカミツレはこちらに向かってブーブー文句を垂れているジラへと視線を向けて、ブレードを構え直しながら言う。

 

「おいジラつったか、お前動きに無駄多すぎるぞ。アクロバットなら他所でやってくれ」

「何よアンタ、ママが褒めてくれたこの機動が無駄だって言いたいの!!?」

「お前のそれは唯のアートでスキルじゃねぇんだよ。出力は無駄に使って回避して、無駄にSEを消費して如何すんだよ」

「うっさいわね!!!ママがこういう風にした方が良いって言ってたのよ!!アタシのママが言うんだから間違いなんてないのよ!!ママがこのままいけばアタシはイギリスの代表にもなれるって言ってるんだから!!!」

 

こうして見ていて気づいた、彼女の機動は誰かに見せるだけで言えば間違いなく高得点だろう。芸術的な機動であって試合などで使う類の物ではない。しかもこれは自分で編み出したのではなく誰かに求められて強制されているものであるという事にも気づく。先程から妙に母親の事を引き合いに出す、まるで母に認められたいが為に母が望む姿になろうとしているかのような……。

 

「はぁっ……だったら無駄のない美しい機動とか目指せばいいのに」

「煩いわね、アンタ自分じゃ出来ないくせにアタシを僻まないでくれる!?」

「―――だったら見せてやるよ、ヨランドさんに叩きこまれた機動をな。変身!!」

DRIVE TYPE:LIMIT OVER!!!

 

その声と共に「大将軍」に『リミットオーバー・ドライブ』が装着される。真紅の装甲が眩しく輝きを放つ姿に一瞬ジラもそれに見惚れてしまった。そしてカミツレはまるで手袋を嵌めるかのような動作をすると強く言い放った。

 

「―――折角の新車だ、ひとっ走り付き合えよっ……!!!」




カミツレもアクロバティックを否定する訳じゃないけど、ジラのそれは余りにも無駄に吹かし過ぎや大きな隙を作るものばかりなので首を傾げたと言うことです。
だってヨランドさんにいきなりスロットルワークを最低でも70に分けろとか言われた人ですし彼。

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