IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第248話

「始めるぞ、カチドキ……スピードの領域を支配する」

『OK! START YOU'RE ENGINE!!』

「は、はっ!!高々装甲を纏った程度で勝った気でいるなんて慢心も良い所よっ!!!」

 

僅かにその真紅のボディと煌めくようなエンブレムの美しさに見惚れていたジラ、しかしライフルを向けて引き金を引いた刹那―――目の前からカミツレの姿が掻き消えたかのように見失った。

 

「消えっ……後ろっ!!?」

 

勢いよく後ろへと向くがそれでも彼はいない、突如として消えたカミツレを必死に探すがいきなりすぎる事で冷静さを欠いたのかハイパーセンサーを活用出来ずに自らの視界だけでそれを探してしまっている。それらを見つめている真上のカミツレは爆発的に強化されている速度に驚きながらも、それを今までの感覚と同じように制御している自分に目を見開いてしまった。

 

「(とんでもねぇ性能じゃねぇかこれ……これが展開装甲を利用した装備……)」

『―――"高速機動適応装備なだけはありますね、操縦性を全く変化させずにここまで違和感なく扱えるようにするとは……リオノーラ氏は氏なりに良く研究していますね"―――』

 

とカチドキ本人からもかなり好評な『リミットオーバー・ドライブ』の性能、展開装甲の万能さは固定(オミット)されているがその分操縦面に置いては途轍もない物に仕上がっている。仮にこれを完璧なまでに展開装甲を研究したリオノーラが仕上げたとしたら、それは途轍もない事になる事間違いなしだ。

 

「―――カチドキ、試運転だ。飛ばすぞ」

『OK!!』

 

出力は滑らかに上昇していきながらも全く乱れる事もなく、カミツレの操縦を妨げる事も無くその操縦を忠実に体現させる為の推進力となって一気に放出されていくと爆発的な加速力で一気にジラへと迫っていく。そのエネルギー反応と接近警報がジラへと届けられて漸く冷静さを取り戻したのか、上を見上げると凄まじい勢いで迫ってくるカミツレに驚愕に目を見開いた。

 

「い、何時の間にっ―――!!!?」

「はぁっ!!!」

 

すれ違いざまに抜刀されたブレードは彼女が保持していたライフルを真っ二つに両断して使用不能にする、そのまま地面へと迫っていくがそのまま見事なループを描くようにしながら再び加速していき今度はその勢いのままでウィングスラスターを蹴りこんだ。途轍もない勢いのままに蹴りを受けたそれは、大きく抉られ出力を大幅に低下させた。

 

「キャアアッッ!!?し、しまったスラスターがっ!!?」

 

ジラは必死に姿勢制御を行いながらも新たにライフルを呼び出しながらも、カミツレを近づけさせないように弾幕を張っていく。ただ弾幕を張るのではなくカミツレの予測進路をヘと撃ち込んでいく、が、それでも弾幕は高速機動を行う「大将軍」を全く捉える事が出来ない。ただ速いだけではなく繊細な微調整による回避で弾丸が自ら避けているかと錯覚に陥る。

 

「な、なんで当たらないのよっ!!?それにあんな機動しながら微調整なんて普通じゃないっ!?」

「高速機動適応っていう意味が漸く理解出来たぜ、俺の思う通りに動ける……!!!」

 

カミツレは漸くこの装備の凄まじさを体験した。それは自らに迫ってくる攻撃にすら反応してそれらを回避する為に出力と姿勢制御の補佐を行ってくれるお陰で、ストレスを感じさせないほどに滑らかでスムーズな回避を実現する。

 

「カチドキ、このドライブの性能は把握した。本番と行こう」

『OK!!』

 

カミツレが攻撃の回避を行っている中、ライフルの一射が迫ってくる。それらを『ディバイダー』の自立防御に任せている最中、遂に特殊フィールドの生成準備完了の表示が現れた。これでこのドライブの全力を漸く出す事が出来る。遂に発動される『リミットオーバー・ドライブ』の真の力、両肩に装備されているタイヤが唸りを上げるかの如く黄金の輝きを発しながら回転していく。それらに呼応するかのように各部の装甲が開かれていくかのように展開されていく、一見すると効率的な廃熱を行う為の装甲の展開にも見える。同時に胸部のマフラーからはエネルギーの帯にも見える光が放出されていく。そして―――カミツレの頭部にバイザーと共に頭部装甲が展開されていき、彼は正しくドライブへと姿を変えた。

 

「さぁっ―――全てをっ振り切るぞ……カチドキ、ひとっ走り付き合えっ!!!」

『OK!!OV-OV-OVER!!』

「貰ったぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

と装甲が展開している最中を狙って、ジラは「瞬時加速」を発動させながら左腕に「灰色の鱗殻」を展開してそれを突き刺さんとする。甲高い駆動音を響かせていくカミツレへと向かっていき、遂にそれが突き刺さり炸薬が火を噴き、ジラが勝利を確信した笑みを浮かべた時―――確かに攻撃を受けたはずのカミツレの姿が掻き消えた。

 

「ぇっ―――」

 

直後、左腕の「灰色の鱗殻」が突如として爆発した。完全にひしゃげて内部に残っていた炸薬を巻き込んだ爆発を起こしていく。それらを慌ててパージしながら周囲へと目を配るが全く姿を捉える事が出来ない―――。

 

「何、よ、何よ何よ何よ一体何がどうなってるの!!?」

 

カミツレの突然変化した動きに錯乱したようにそこいら中に展開したショットガンで散弾をばら撒いていくが、それらすら何も捉える事が出いない。がその時、散弾を縫うかのように赤い残光を纏った何かが接近するとショットガンが破壊され同時に全身に凄まじい衝撃が襲ってくる。

 

「キャアアアアアアアッッ!!!??」

 

何がどうなっているのか全く理解出来ない、光が突如として向かってきたとかと思ったら武器が一瞬にして破壊されたと共にダメージを受ける。まるで状況を把握出来ない、それに恐怖を感じていると目の前のその正体が姿を現した。各部の展開された装甲から赤みを帯びた光を放出しながらマフラーから放出される光を纏い、黒いバイザーの奥に瞳を輝かせる真紅の戦士の姿があった。

 

「あぁっ、ぁぁぁっ……!!!」

「終わらせるっ―――!!!」

ヒッサーツ!FULL THROTTLE!! OVER!!

 

刹那、再び姿が掻き消えたかと思った直後に自らの周囲を赤いサークルが覆っている事に気づく。そして空に飛び込むかのようにしてきた光、赤い残光はそのまま赤いサークル内を縦横無尽に駆け巡りながら遂には無数の閃光なって同時にジラへと襲いかかった。

 

「セイヤァァァアアアアアア!!!」

 

無数の閃光はジラを通り過ぎてもサークルに反射されていくかのように再びジラへと向かっていく、通り過ぎていく。それらが繰り返されていく度に響く少女の悲鳴は、甲高い駆動音と光が巻き起こす爆音に掻き消されていく。そして、光は一つに集合するとカミツレへとなって地面へと落ちたジラを見下ろしながら、一段と大きな廃熱を行いながら、頭部装甲が開放されてカミツレの素顔が露になった。

 

「ふぅっ……『ドライブスマッシュ・リミットオーバー』って所かな」

『っ……大満足……!!!』


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