「ブゥウラアアアボォォオオオオッ!!実にファンタスティックだよカミツレ君!!!全く持って君は私の期待以上の働きをしてくれるね!!あのジラが形無しじゃないか!!」
「無駄が多い動きをするあいつが雑魚なだけですよ、芸術飛行としては良い点行くでしょうがそれを戦いでやっても意味はない」
ピットへと戻ってきたカミツレは展開を解除しながら早速稼動データをリオノーラヘと渡していく、それらを喜んで受け取りながら稼動データを恍惚とした表情で見つめるリオノーラに真耶は若干引きながらも、カミツレにジラのどんな所が悪かったの尋ねる。
「機動の一つ一つが魅せに特化している、美しさは感じましたがそれ以上にそれが大きな隙を生じさせていました。ただ単に魅せるだけ、美しさのみだけを追求された機動は逆に他の粗を目立たせる」
「ふむ、そういうものなのかね?」
「ええっ今回の場合は彼女は大きくダイナミックな機動を取りつつ回転などで魅せてはいます、ですが動きが大きく大きくなってしまうので結果的に弱点になっています。例えばそうですね……リオノーラさんならレースで急なカーブに差し掛かったら如何しますか?」
「それは内角を取るようにして曲がるだろうな、角度によるだろうが曲がりやすいようにスピードも落とすだろうな。カーブの先にもよるだろうがスピードは落とし内角を行こうとするだろうな」
真耶に対するリオノーラの問いは正しく正解と言える。レースゲームでもタイムを短縮して1位を狙う為には出来るだけ速く最短のルートでコースを疾走して行く必要がある、その為に
「彼女の場合は誰かに美しく綺麗に見せる為に、カーブをアウトいっぱいに走っているような物なんです。確かにそれならスピードは落とす必要は無いでしょうけど結果的には、より長い距離を走る事になりますからタイムは落ちます」
「成程そういうことか」
「キャノンボール・ファスト」でも多くの者は最短のコースを選んでいた。一夏もそうしようとするが技量の関係でそのままの速度のままでは無理だと判断して地面に「雪片」を突き刺し、それで強引に機体の方向を変えるという方法でスピードを余り無駄にせずにカーブを曲がっている。だが彼女は無駄なことしかしていない。
「アクロバット機動を無駄とは言いませんけど、あいつの動きにはそれらを取り込んで発展させた物すらない。ただ教わった物をやっているだけで奇抜さもない、あれじゃあ驚かれはするでしょうけど格上相手だったら確実に狩られますよ」
「ですね。多分彼女は織斑君にすら勝てないでしょうね、あっ今の織斑君じゃなくて「キャノンボール・ファスト」辺りの織斑君の事ですよ!?」
「まあ今のあいつは普通に近接する相手からすると脅威ですからねぇ……」
未熟と言う意味ではない、寧ろ戦いの最中に問題なくあのような技術を取り入れられていることは彼女の実力が確かであるという裏づけにもなっている。が、その技術で勝てるかと言われたら全く別の話。ただただ大振りな攻撃だけで相手に勝てるかと言われたら勝てない、勝つにはその大振りな攻撃を如何にして当てるかという戦い方を組み立てていく必要がある。
「まあ兎に角、これで彼女の傲慢な態度がこれで少しは軟化してくれることを私は祈るよ。自分の弱さを知れた事だろうからね!!!」
「にしても……あいつ妙に母親の事を引き合いに出してましたよね」
「ですねぇ……まるで母親に自分を見て欲しい子供みたいです」
「それは恐らく完全に母親が原因だろうねぇ……あのクソ馬鹿の」
と珍しくリオノーラが顔を顰めるようにしながら吐き捨てた、如何にも知っているようだ。
「なんか知ってるんですか?」
「ああまあ……奴の母親は優秀なジラを自分の思った通りに育て上げたいのだよ、自分の中にある最強最高のIS操縦者というイメージ通りのな」
「……なんすかそれ、今時の小学生でもそんな事考えませんよそんな最低な僕の考えた最強は」
「だろっ?」
シャルロットの母親とは違った意味で腐っている、が大きく異なっているのはジラ自身が母親の言う事ならば正しいと心から思い込んでいる事にある。彼女にとっては母が全てであるらしく、母親の為ならばどんな事でもやってのける、そんな印象を受けるまで母親を慕っている、というよりも―――ある意味洗脳されているようなものなのかもしれない。
「それがあれ、ですか……?」
「あんまりこういう事をいうのもあれですけど……あれで最強とか絶対無理ですよ」
「うむ、それは私も思う」
そのような話をしているとピットの扉が開いてそこからジラが姿を現した。顔を伏せたままそのまま歩いてくる、彼女のプライドの高さや負けず嫌いといった所を考えた時にリオノーラは懐に入れている護身用のスタンバトンへと手を伸ばす。カミツレに対して暴力を振るうのではと考えたからだ、そのまま近寄ってくるジラはカミツレの前まで来ると、か細い声で言った。
「悪かったのよ……」
「えっ?」
「私のっ、何処が悪かったのよっっ……!!」
と何処か食い縛るかのような声でそう尋ねてきた、思いがけない言葉にリオノーラも驚愕してスタンバトンを落としてしまう。ジラはそんな事気にならないのかそのまま続ける。
「私は、ママの言う通りに頑張ってきたっ……!!!ママの言う通りは絶対に正しくて、私はママの子供何だから……!!私が負けを認めなければ負けじゃないってママが言ってたけど、今回のは絶対に違う……アンタに勝てるビジョンが浮かばない……。それにアンタだってママがいってた奴と全然違う……私の、何が悪かったのよっ……!!!」
何処か泣きそうになりながらも必死に言葉を作って吐き出した彼女にカミツレは思わず真耶に視線を向けて、如何したらいいですかねと助けを求める。真耶も苦々しい顔を浮かべていて、如何したものかと困ってしまう。そこでカミツレは溜息を付きながら言う。
「まずは自分で考えてみろ、母さんに言われたからやるんじゃなくて自分で思考して何処が悪いのか考えろ」
ようするにカミツレがやったのは本人に考えさせる、という名のブン投げである。それに思わず、真耶とリオノーラがクスっと笑ってしまうが、ジラは一瞬呆気に取られたような顔をすると顎に手を当てて思案するような表情を取った。
「え、えっとっ……アンタを馬鹿にしてた事……とか?」
「まあそれもあるだろうな、他には?」
「えっと……えっと……」
その後もカミツレはジラに自分で思う所を徹底的に上げさせるかのように質問を続けていった、そして全てが上げ終わるとジラは次第に驚愕していていくような表情を形作っていく。
「う、嘘っ……ママが言ってた事って、何なんだったのっ……!!!??」