IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第25話

「なぁセシリア、欧州で貴族とか有力者とかのパーティに出た事ってある?」

「ありますわ。貴族に大会社の社長や政府官僚、様々な身分の方が参加する社交界に何度も出ています。これでもオルコット家の当主ですので」

 

一時間目は二組との合同IS模擬戦闘を行うと、各人は大急ぎでグランドへと急いだ。一夏は早速同性の元へと向かった中、カミツレはそれに巻き込まれないように急いで教室から脱出した。転校生の噂は既に全校中に流布しており、廊下から凄まじい足音が聞こえてきたからだ。全力でアリーナ更衣室へと向かい、着替えを済ませて外へと出るとセシリアが真っ先に出てきた。先日、部屋割りの調整が出来たとして別室になってしまったセシリア、それを残念に思いつつもセシリアはこれからも一緒に勉強したりしようと言ってきた。それは勿論カミツレにとって有難い申し出なので了承した。そんなこんなで、先日は数ヶ月振りに、一人で眠りについていたが、セシリアがいた事に慣れていたのか妙な違和感があった。それゆえか近くに彼女がいると落ち着くようになっていた。

 

「シャルル・デュノア。デュノアって確かフランスにある量産機ISのシェアが世界第3位のISメーカー、だよな」

「ええ。有名なのは訓練機でもある『ラファール・リヴァイヴ』ですわね、フランスで一番巨大なISメーカーでも有名ですわ。しかし、そもそもデュノア社にシャルルという名の少年がいるなんて、聞いた事がありません…デュノア社の出身なら、社交界で一度は顔を見た事がある筈ですが…」

 

イギリスの貴族でもあるセシリアですら知らない存在、これはいよいよを持って怪しくなってきた。それだけ巨大な会社なのだから秘密裏に隠し通せたという事になるのだろうか。しかしそう決め付けるのも早すぎるだろう。兎に角、警戒する事に決定する。

 

「しかしもう一人、警戒すべき存在がいますわ」

「あの、ラウラ・ボーデヴィッヒ?」

 

ラウラ・ボーデヴィッヒ。細かい自己紹介などは一切行っていないが、彼女は紛れもない強者なのは違いない。そしてそれを目の前にした時、千冬を一瞬連想した。それは千冬のオーラを受けた事があるから、それに比べたらと思っていたが何か違う物を思う。何処か、なんとなく千冬に少々似ているような気がした。千冬の事を教官とも言っていたし……もしかして千冬が現役時代に指導を受け持っていたのだろうか。

 

「いえ彼女ではありません。実は……二組にも転校生が来たらしいですわ」

「……えっまた増えるの」

「はい、また増えました」

 

本格的に露骨過ぎないかと溜息が出る。偶然入学の時期がズレただけかもしれないが…自分の事を考えてしまうとどうしても疑いが先に出てしまう。

 

「ハァ……んで今度はどこの国なのさ」

「いえそれが……」

「カミツレ~、アンタの所にも転校生来たってマジ?」

 

セシリアが答えようとした時、そこへ鈴がやってくる。如何やら彼女も転校生の事が気になっているようで、合同授業のついでにそれを見極めようとしているとの事。鈴も三人目についてはかなり不審な目で見ており、この後で中国本国のデータベースにアクセスして探りを入れてみると公言した。

 

「んでそっちにも転校生来たんだろ?」

「ああ、来たわよ…しかも見知った顔よ」

「同じ中国の?」

「いえ台湾よ。多分もう直ぐ……」

「ちょっとお姉ちゃん、置いてくのって酷くない!?」

 

口を開こうとした鈴は聞こえてきた声に対して顔を歪めた。ちっ追いついたかと言わんばかりの表情変化に露骨に嫌がりすぎではとセシリアは言うが、その直後にやって来た人物をみて目を見開いた。そう、やって来たのは自分がカミツレに告げようとしていた人物、件の二組への転校生であり台湾の代表候補であるのだから。が、カミツレは別の点に驚いた。やって来た少女は鈴に良く似ていたからだ。

 

「もう、揉みくちゃにされる所だったんだから!!」

「あーはいはい悪かったわよ」

「もう何時もそうやって、反省してるのか分からない感じの謝り方を……!」

「もういいでしょったく…カミツレにセシリア、紹介しとくわね。これはアタシの従妹で、台湾の代表候補生の凰 乱音(ファン・ランイン)よ」

「ああもう、人を物扱い……ってカミ、ツレ……?」

 

もう疲れているかのような表情をしている鈴の紹介。それに不服そうにしていた乱だがその言葉を聞くと硬直し、錆付いた歯車のような硬い動きで顔を動かしてカミツレの方を見た。乱は素っ頓狂な声を上げると顔を赤くしながら鈴の後ろに隠れるようにするが、鈴はしきりに動いて乱を後ろから叩き出そうとする。

 

「チョチョお姉ちゃん後生だからやめてぇ!本当にやめて、私まだ心の準備出来てないのぉ!!」

「あんだけのこと言ってた癖してそれなのアンタ、はぁ……先が思いやられるわね」

「あー…えっと、鈴。どういう事だこれ」

「簡単に言えば、アンタとセシリアの対決の映像を見てこいつはアンタのファンになったのよ」

 

一部を暈して伝えた鈴に一抹の感謝の念が生まれる。一応尊敬する対象ではあるが日常では色々と敵である事が多い。が今回ばかりは感謝しておく事にした。一方カミツレはファンという事を言われあからさまに動揺してしまった。

 

「ファ、ファン!?おいおい鈴……それって悪い冗談とかだろ、俺にんなもん出来る訳ないだろ……」

「アンタって結構自分への評価って低いわよね。自分がやった事を考えてみなさい、それとファンが出来てるって現状を合わせてね」

「んっ……?」

 

自分がやった事と言えば、セシリアとの勝負に引き分けた事。鈴の発言からしてこの事を示しているのは明確、そして乱が知っている事を考えるとセシリアとの対決の映像は流布してしまっていると考えるのが妥当である。そうなると……そこで漸くカミツレは気が付いた、今までは必死になりすぎて気付けていなかったが、セシリアに引き分けたという出来事がどれだけの出来事である事を。そして思わず頭を抱えてしまう、そんな事になっていたのかという事と、何故気付けなかったのかという後悔である。

 

「……悪い、理解したわ。んなこと考えてる暇なかったからな……ああそっか、初心者が代表候補と引き分ける、それ自体に凄い意味があった事は分かってた筈なのに……」

「まあ、今分かれば良いんじゃない?一応言っとくけど、今各国にアンタの強さと成長が知れ渡ってる。僅か2週間で代表候補と渡り合った事で、世界中がアンタに注目してる。まあ、乱は別としても一組の転校生はほぼ確実にアンタ目的でもあるわ。気を付けなさいよ」

「ああ……注意する」

「分かればいいわ。それとアンタは何時まであたしの後ろに隠れてるのよ!」

「キャア!!」

「あぶねっ!?だ、大丈夫か。えっと乱さんでいいのかな」

 

無理矢理背後から引っぺがした乱を、投げ捨てるかのようにカミツレへと放る。倒れこんできた乱を優しく受け止めたカミツレは優しく声を掛けるが乱は何処かぼぅっとしているようで小さくささやくような声で、答えると魅入るようにカミツレを見つめている。それを見ていたセシリアは赤い炎を燃やしながら直感する。

 

「(この女は、私の敵ですわ……!!!!)」

 

どうやら、嵐は一夏だけではなくカミツレまで巻き込むようである。

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