IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第252話

「さてとっ……そろそろ時間か」

 

高校の入試の合格祝いに買って貰った手首の時計を見つめるカミツレ、時間は間も無くお昼の11時ごろになろうとしていた。休日であるが本日カミツレはそれなりに重要な用件を抱えている、今日のために態々洗濯しなおした制服を纏いながら気を引き締める。部屋を出て応接室へと向かって行くと途中で千冬と合流して共に応接室へと入って行く。

 

「失礼します」

 

千冬の言葉と共に入ると室内の空気が違うことを肌で感じ取った、嘗て体験した物と似通っているそれに思わず身体に力が入った。応接室のソファに腰を下ろしながら紅茶を飲んでいる姿に思わず汗が流れるほどに研磨された何かを感じる、ヨランドのそれと同等に近い何かを感じ取る。ゆっくりと此方に目を向ける彼女の視線は何処か狩人のように鋭い、ヨランドとは違った意味での絶対者と感じさせる。

 

「お待ちしておりましたわ杉山 カミツレさん、そして織斑先生。本日は態々お時間を御作りになってくださって有難うございます」

「いえ、お気になさらず」

「そう言ってくださると有難いです。私は遠坂 凛と申します、どうぞ宜しくお願いいたします」

「杉山 カミツレです」

 

そう言いながら手を差し出してくるその手を握り返しながら、微笑を返すがカミツレはそれに含みを感じずにいられなかった。ヨランドとは別の何か、自分の本性を上手く隠しながら此方を窺っているかのような視線と声色に乗っている感情に冷や汗が出てくる。そして凛は一緒に連れてきている二人を紹介し始めた。

 

「こちらは私の秘書をしてくれている弓塚 臣侍」

「お初にお目に掛かるミス織斑、貴方のご活躍は今も耳に残っている」

「やれやれ私としては早く忘れて欲しいものです」

「おやっそれは失礼をした。そしてミスター杉山、君とは同じ男として一度話をしてみたいと思っていた」

 

浅黒い肌に灰色っぽい白髪、黒と赤という独特なスーツを身に纏っている秘書の弓塚。何処か男としてこんなIS学園にいる自分に同情するような視線と表情に自分の苦労を察してくれているのだろう、その手を取って感謝を述べる。

 

「カミツレで結構ですよ弓塚さん」

「そうか、ではそう呼ばせて貰おう」

「それでこっちは私の姉の遠坂 エレシュよ」

 

そう言いながら隣に座っているもう一人の女性と紹介して来た、姉というだけあって酷くよく似ている。違いがあるとしたら髪の色が美しいブロンド、凛が青い瞳に比べて彼女の瞳は赤っぽい金色のような色をしていることだろう。

 

「遠坂 エレシュです。是非一度お話をして見たいと思っていたのだわ」

「杉山 カミツレです、こちらこそお会い出来て光栄です」

 

挨拶も済んだ所でカミツレは席に着いた、千冬はあくまで此処に連れて来るまでの案内人のようなものなので隣の部屋で待機する事になっているので部屋から出て行く。危険はないという確信があるが念の為という奴である。

 

「さてと、本日このIS学園に来たのは他でもありませんわ。貴方に是非とも尋ねたいと思っていた事があるのです」

「ええ分かってます、見合い写真の件でしょう?」

「ええ、よく分かっているようですね」

 

と何処かにこやかな笑みを作っている凛だが、カミツレは彼女が怒りを感じているのを察していた。僅かに口角がピクついているとカチドキが知らせてくれている、やっぱりヨランドが話していた通りの人物と思っていいらしい。

 

「はい把握してます、私にではなく態々ヨランドさんに連絡を付けている事もお聞きしましたよ」

「そう、ルブランさんから聞いたのですね。では私が何を言いたいのかもお分かりでしょう?」

「一応見当はついていますよ」

「そう、じゃあ言わせて頂くわ……如何して何も言ってこなかったのかしら、せめてお断りの返事ぐらいするのが礼儀なんじゃないのかしら……?」

 

そう、凛が態々やってきたのはそういう事なのである。カミツレが自分宛にやってきた見合い写真の中に彼女の物もあったらしく、それに対して何の返事もしなかったという事に対して納得していない。ついでにヨランドが挑発染みた事を言って学園に行くように誘導もしている。と紅茶を飲みながら隣から呆れたような溜息が伸びてくる。

 

「全くやっぱり気にしているんじゃない、その位の事で目くじらを立てるなんてはしたないのだわ」

「お姉さまは黙っていてくれないかしら?」

「あららっいやなのだわ、そんなに結婚を焦ってたの?弓塚さん、次のお見合いを早急に手配致しましょう」

「そういうわけじゃないわよ!!アンタは黙ってなさいエレ!!」

「貴方姉に対してその物言いはなんなの!?」

「うっさいどうせ義理でしょうが!!!」

 

と先程までの淑女のような態度は何処へやら、一気に崩れ去った凛は大声を出しながら威嚇するかのようにエレシュへと顔を向ける。ヨランドが例えるならば赤い悪魔だと言っていたが、成程そういう意味での悪魔なのかと一瞬で納得がいった。弓塚も頭を抱えるように顔に手をやって顔を伏せている辺り、この姉妹の喧嘩は良くある事らしい。

 

「大丈夫ですか弓塚さん?胃薬入りますか?」

「……いや、大丈夫だ持参の物があるし今胃は痛みを訴えていない。気遣い感謝する。はぁっ……こんな所まで喧嘩なんてして欲しくなかったんだがな」

「いつもこうなんですか……?」

「ああっ……顔を合わせたりする度に言い争いでな……」

 

と疲れた表情の弓塚から零れていく溜息、冗談抜きでこれが日常的なものらしい。

 

「カミツレ、君も今の彼女に敬語など必要ないぞ」

「いいんですかっというか、秘書の貴方がんなこと言っても良いんですか?」

「いいのだよ、彼女(これ)とは長い付き合いでね。秘書というのも無理矢理させられているんだ。全く……私はシェフ志望だったんだがな……」

「苦労、してるんですね……俺ほどではないでしょうけど」

「それなりに、な……君の苦労に比べたら些細な事さ……」

「「はぁっ……」」

 

と同時に溜息を出してしまったところで何やら男同士で通じ合う所を感じたのか、仲良くする事を決めた二人であった。望まなかった苦労をしている点ではかなり通じ合えると思ったのだろう。と二人は通じ合えたのだが未だにいい争いを続けているこの姉妹、何時になったら本題に入る事が出来るのだろうか。

 

「そこまでにしておけ凛、優雅たれは何処に行った?」

「煩いわよアーチャー!!アンタは引っ込んでなさい!!」

「おい、昔の渾名で呼ぶな」

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