IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第253話

「やれやれ……落ち着いたかね、凛にエレシュ。君達は羞恥という物を確り持って欲しいものだ……すまんなカミツレ、見苦しい物を見せたな」

「いえ、前に擦り寄ってくる気持ち悪くて見苦しい日本政府の人間を見てるので全然大丈夫です。寧ろ、姉妹間の喧嘩って感じで微笑ましく見させていただきました」

「本当に、苦労しているんだな……」

「それなりに、ですけどね……」

 

と漸く落ち着きを取り戻した凛とエレシュだが目の前のカミツレの言葉に少し小さくなった。彼からしたら自分達の結構派手な言い争いなんて可愛いものなのかと、そしてその後に弓塚と共に吐き出された溜息を見て凄まじい苦労人なのだろうと察する。

 

「申し訳ないわ、遠坂の人間として謝罪致します。お見苦しい所を見せてしまったのだわ……」

「いえお気に為さらず、寧ろ俺からするとそうして喧嘩が出来るだけ羨ましく思っちゃいますよ。俺は兄と喧嘩したくてもそう簡単には出来ませんから」

「ううっ……そう言われてしまうと私は何も言えなくなってしまうのだわ……」

「凛、君も何か言ったら如何かね」

「……わ、悪かったわよぉ……」

「いえ本当に気にしてませんから」

 

と笑顔を浮かべて返答する。学園内の濃い面子から受ける物や自分のアンチから受ける物に比べたら本当に些細なものでしかないのでなんとも思っていない。本気で微笑ましくて羨ましいと思っているカミツレ、それを察した弓塚は本気で彼に同情する。表情からも諦めと呆れが滲み出ており、彼がここまでしてきた苦労を察する事が出来る。

 

「それでは本題を進めるとしようか。カミツレ、君は見合い写真を見ずに破棄したと言うのは本当か?」

「ええっ。毎週のように来てる大量の見合い写真は全部中身見ずに、部屋の隅に積んでおいてゴミの日に纏めて捨ててますよ。捨てる事については許可貰ってるので」

「因みに聞くが何故中身を見なかったのかね」

 

先程まで声を荒げていて、もう猫を被る事を辞めた凛に変わって弓塚が質問を開始する。恐らく平然と対応出来る彼が一番望ましいだろうし、同じ男として同情出来る部分も多いので冷静に対応出来るからだろう。その際に凛は何処か不満げな表情を浮かべているがエレシュは此方を心配するような表情を浮かべているのが分かるが、なんというか対照的な姉妹だ。

 

「俺にとって一夫多妻制度というのは、俺の身を守る為の物でしかないんです。俺は元々農家の息子で大した後ろ盾も有りませんでした」

「それは聞いている。今ではイギリスやフランスの大貴族が背後についている話もな」

「そんな中で俺はイギリスの代表候補生に推薦してくれて、一夫多妻制度を利用しようと言ってくれたのもセシリアでした。彼女は俺を本気で守ろうとしてくれています、だから自ら制度を利用して後ろ盾を増やそうと提案してきたんです」

「なんですって……ッ!?」

 

それを聞いて凛は思わず驚いた。世界中で最初にカミツレが婚約を結んだのはイギリスのセシリアと台湾の乱と言う話は有名な話だが、それもセシリアからの発案だったのは全くの初耳だった。自分と婚約してくれた人達は愛する人達であると同時に自分を守る為に婚約してくれた人達でもある。既に十二分すぎる後ろ盾を得る事が出来たカミツレにとってこれ以上、婚約者を増やそうとは思っていないし、彼女達にとっても失礼に当たるとも考えている。故に見合いを受けるつもりなんて端から無かった。加えて言うのであれば、全員がカミツレにアタックして婚約にこぎつけたという経緯もある。

 

「そのような訳ですのでこれ以上婚約者を増やそうとは思ってはいないんです。俺が一番にする事なのは……俺の為に動いてくれる人達全てを逆に守ってあげられる位に強くなる事、そして……そんな人達と仲良く過ごす事なんです」

「……」

「ですので、ミス遠坂には確かに失礼な事をしたと思っています。申し訳ありません、ですが断る理由については納得していただきたいのです」

 

そういって頭を下げるカミツレに無言になっている凛、そして暫く考え込むような仕草をすると溜息を吐きながら頭を上げてと言う。

 

「やれやれなんなのよ……これじゃあ逆に私が道化じゃないのよ……。私はね、アンタがとんでもない面子の婚約者がいるから調子に乗ってたかもしれない、って思ってたのよ。だけど実際は全く違った、やれやれ私もまだまだって事かしら……はぁっごめんなさいねカミツレ君」

「いえ、返事をしなかったのは此方ですし」

「いえ貴方の話を聞いて思ったわ。確かに返答をしなくても問題もないしそれも正解だってね。私もね、日本政府に突っつかれて見合い写真出したのよ、別に婚約して欲しくて送った訳でもないし」

 

凛としても見合いというのはまだ望んでいなかったという。送ったのも政府から出して欲しいと言われたからしい、どうやら政府は何とかしてカミツレを日本に繋ぎとめようと必死になっているらしい。そこで日本中の有力者に片っ端から声を掛けているらしい。首相はそうは望んでいないらしいが、一部陣営が暴走してそうなっているらしい。

 

「はぁっ……やっぱり早く日本脱出した方が良いのかなぁ」

「まあ私としては早い事に越した事はないと思うわ、多分ご家族の方にも手が回ると思うし」

「そっちは大丈夫ですかね。もうイギリスにいますし」

「あらっそれなら大丈夫ね」

 

と、何処か柔らかくなった笑顔を作りながら凛は安心したように笑う。弓塚のホッとしたような表情を見るとどうやらカミツレは凛に気に入られたようである。

 

「まあそれならもういいわ、私からもう言う事なんてないわ」

「それなら私が良いかしら?是非カミツレ君が学園でどんな風に頑張ってきたのか聞いてみたいのだわ」

「別段大した話でもないですけど……構いませんよ」

「実は私も興味があってね、是非聞かせて頂きたい。と言いたい所だがまもなく昼食時だ、英雄譚を聞く前に食事にしないかね」

 

時間も良い所になって来たので一旦昼食を挟む事になったのだが、折角なのでカミツレが腕を振るおうとした所、是非弓塚が自分で腕を振るいたいと言って来たので共に調理をする事になったのであった。

 

「この大根……繊維と水分がずっしりと詰まっているな」

「おっ分かります?うちの大根は刺身で食べても美味しいんですよ」

「大根の刺身……出来るものは中々に少ないぞ、これは本格的に杉山ファームの野菜に切り替える事を検討すべきか……!」

「あっだったらこれ使います?杉山ファームへの優先連絡ナンバーです」

「有難く使わせて貰おう、だが今は調理に専念しよう―――カミツレ、付いて来られるか」

「うちの野菜の調理で負けるつもりはないですな、そっちこそ遅れないでください」

「アーチャーがあんなに嬉しそうにするなんて……そんなに良い野菜なのかしら?」

「これはとっても美味しいご飯が出てくるのだわっ♪」




この後、カミツレと弓塚は存分に腕を振るって料理を行った。それで更に互いに仲を深めた。
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