「いやぁ本当に大満足だわ……」
「本当に美味しかったのだわ……幸せな満腹感なのだわっ♪」
「そりゃ良かった、それとすいませんね弓塚さん。洗い物手伝って貰って」
「何、調理をした者として最後の後始末までするのは当然の事だ」
とカミツレの英雄譚を交えた昼食は大満足の末に完了された。流石はドルオタとはいえ確りとファームの主としてやっている兄が作っている野菜だ、かなりの高評価を得られている。凛は目を輝かせながら次々と手を伸ばし、エレシュと一品の最後の一つを取り合ったりなどもしていた。弓塚はこの味は……これならば煮物でも十分に……と完全に料理研究家のような事を言いながら舌に神経を集中させていた。彼としては普段通りに作った筈なのに素材が変わっただけで此処まで激変するとは思わなかったよう。それほどまでにファーム産の野菜が凄いとも言えるが。
「すまんがカミツレ、本格的に野菜の購入を願いたい。出来る事ならば契約を結んで頂きたい」
「そこら辺は兄貴に言ってください、今はあれが主ですので。まあ俺からも話は通しておきますから多分スムーズに契約までいけると思いますよ」
「それは有難い。是非ともこの野菜での料理を研究したい、そして先程の肉じゃがのレシピも教えてくれ」
「良いですよ」
と同じ料理好きな男友達が出来た事が嬉しいのかカミツレも饒舌になりながら、洗い物を手渡していく。此処まで実家の野菜が評価されると言うのも中々に嬉しいものだ。そしてカミツレは全員分の紅茶を準備すると席に着いた。その時も弓塚が思わず反応する。
「成程これは美味だな……茶葉も良いが、湯を沸かす時間やポット内で温める時間も申し分ないな」
「ホントこれ凄い良いわね!!ねえこれ何処の茶葉なの?」
「これはヨランドさんから分けて貰った茶葉ですね、確か……あったあった「MARIAGE FRERES」って奴です」
「げっあいつからなの!?しっかもフランスの老舗中の老舗の奴じゃないのよ……ぐぬぬぬぬっ……」
どこか悔しそうに、恨めしそうに紅茶を睨み付けながら飲んでいく凛に比べてエレシュは優雅に落ち着いた雰囲気で香りから味までゆったりと楽しんでいる。
「とても良いのだわ、カミツレ君は紅茶の入れ方も美味いのね」
「教えて貰ったんですよ。俺はマジもんのお嬢様で当主、大貴族の当主な人達と繋がってますから」
「ふむ、確かに申し分ないな。だがカミツレ、覚えておくといい。君がやったやり方は日本では少々適さんな」
「えっそうなんですか!?」
「ああ。日本の水は軟水だ、それを使う際には勢いよく出した水を強火で沸騰させるとより美味しくなる」
「ほへぇっ~……勉強になりますっというか、秘書なのに言ってる事が執事みたいなんですけど」
「フッこれも経験が成せるスキルさ」
と自慢げにクールな笑みを浮かべながら紅茶を口にしながら、それでもこの紅茶は十分に美味いと褒める弓塚。やや面倒なところもあるが認める所は確りと認めるという性格なのだろう。と言うか秘書なのに執事染みた事もさせられているという事をさらっと暴露しているような気がして思わず凛を見ると、カップで顔を隠すようにしながら顔をそらす姿を見て察する。
「本当に苦労してますね」
「全くだ。私の弟など小料理店で働いているんだぞ、全く……世の中理不尽な事この上ない」
「だから謝ってるじゃないのよ、それにアンタだって納得してたじゃない」
「ああそうだな、君が私に何時の間にか貸しという名の義務を課していた事に気付けていなかった私が愚かだった。今からでも過去に戻って過去の自分を殺したくなる」
本当にこの二人は主と従者という関係にあるのだろうか、全くそのようには見えないのだが……。
「はぁっ……全く凛はいい加減お淑やかさを覚えないと駄目ね。私のように普段から落ち着きがある姿を見習って欲しいのだわ」
「はぁっ?アンタを見習うとか余計にありえないんだけど、アンタの場合ポンコツインストールしてるだけでしょうが」
「な、なんて事を言うのかしら!!?そ、それに私がポンコツ!?そんな事なんてないのだわ!!ねっそうでしょうカミツレ君!?」
「いや、今日会ったばっかりの俺に言われてもな……」
「ではこう聞こうかカミツレ、凛とエレシュ。今日あって話したばかりの君から見てどちらが好かれやすいかね?」
「えっエレシュさんでしょ」
と即答するカミツレにエレシュは花を咲かせたかのような笑顔を浮かべて、手を握ってありがとうなのだわ!!とブンブン振って感謝する傍らで凛は納得出来ないような顔をしながら此方を睨み付けている。
「いやだって凛さんって猫被ってるのが分かるし、言葉の中に本音が見え隠れしてますもん。それだったら下手に猫被らずに居た方が好印象だと思います」
「という事らしいぞ、良かったな凛。貴重な意見を貰えたぞ」
「キィィィッッ……何よこのなんかこう、自覚できるものはあるからなんとも言えなくなるこのもどかしさは……!!!」
「流石なのだわ、やっぱり私が見込んだだけはあるのだわ!!そうよねやっぱり私の方が好印象よね!!」
「な、なんか言っちゃまずかったですかね……?」
「彼女には良い薬だ」
とこんな風に時間は過ぎて行き、その日はカミツレのこれまでの体験談などの続きや弓塚のファームとの契約について等で消化されていくのであった。
次回、あの人が暴走します。