「あ~……疲れた……」
疲労した表情を浮かべたまま自室へと戻ってきたカミツレ、最近カミツレは『リミットオーバー・ドライブ』に対する訓練の割合を増やしている。折角使えるようになった新装備を早く使いこなす為ということもあるのだが……一番の理由は相棒にあった。
「カチドキ、お前さ……「タイプ・オーバー」の訓練をもっとしようとか言うの辞めてくれよ。お陰でまたオーバーワークギリギリだったじゃねぇか……」
『何を言うのですカミツレ!!あれほどまでに素晴らしく超高性能なものがあるのだから早急に使えるこなせるように訓練をするのは当たり前じゃないですか!!それでは明日の訓練メニューなのですがっ……!!』
「ふざけんな明日はオフだ」
『何甘っちょろい事を言っているのですか!!!お母様を守れるだけ力が欲しくないんですか!!?』
と力の入った言葉で自分を叱咤してくる相棒のカチドキ。言っている事は分かるし「タイプ・オーバー」のフルスペックを自分が完璧に使いこなせるようになった時には相当な物になるのも理解出来る、それはカミツレの得意技にもなっている「稲妻軌道動作」や「個別連続瞬時加速」などを組み合わせて正しく周りの速度を置き去りにする程の機動を行う事が可能になる。だがしかし―――
「お前な……ただ「タイプ・オーバー」を使いたいだけで言ってるなら俺はやらねぇぞ」
『(ギクッ)そ、そんな事があろう筈がございません……!!』
「俺がお前の考えが分からない訳が無いだろ馬鹿。取り敢えずこれからは他の訓練もやって行きたいから、オーバーの訓練の時間見直すからな」
『そ、そんな殺生な……!!どうか、どうかお待ちくださいお父様!!!』
「決定事項だ」
決め手なのは「タイプ・オーバー」が公式公認な上に最大稼動時には見た目がドライブになるのが一番の理由だろう。ドライブが最も好きなライダーだと豪語しているカチドキにとって「タイプ・オーバー」はある意味実際に変身するベルトの最上級系と言っても過言ではないだろう。そんな物をもっと沢山使いたいと思うのは当然の思考だし、自分にとっても結構楽しかったりもする。
「ったくお前な、俺の相棒の癖に自分の事優先しまくってるじゃねぇか。射撃訓練中も急かすし……」
『だ、だってだって……私の憧れ……』
「兎に角、他の訓練との整合性やバランスもあるんだ。真耶先生からも訓練の配分の見直しを頼んでおいた」
『えええっっ!!?』
とカチドキにとって至高の時間でもあった「タイプ・オーバー」での訓練時間の短縮、それに凄まじいショックを受けてしまった。一体どれだけこれに入れ込んでいるのだろうか……まあカミツレも555を作って貰っていたら同じような事を言っていそうな気もするが。
「もう愚痴愚痴言うのやめろ、じゃねぇと石森プロにお願いしたCSMドライブドライバーの注文取り下げてもらうぞ」
『えっ……!?ま、まだ発売されてもいないあれをっ!!?』
「発売何時辺りか聞いてみたら、OKしてくれたぞ特別に。後進兄さんとベルトさんのスペシャルメッセージボイス集もキャンセルしとくな」
『分かりましたお父様、このカチドキ今まで以上に訓練に身を入れる事をお約束いたします!!』
「(マッハドライバーの事も言ったら、多分気絶するだろうな。マッハとチェイサーも好きだしこいつ)」
そんな風に説得に成功したカミツレはポットに水を入れて電源を入れる、今日は少し砂糖を多めに入れたミルクティーにでもしよう。そんな時の事、「大将軍」の通信機能が鳴り響いたので出てみる。因みに鳴った着メロはビルドのハザードフォームの変身待機音。どうやら個人秘匿通信のようなのでそれに切り替えて出てみる。
「もしもし」
『カッ君~今大丈夫?』
「ええまあ大丈夫ですけど」
通信の相手は束であった。普段からのことだが束が連絡してくるのは基本的に個人秘匿通信、彼女の事を考えるとこれは当たり前かもしれないが。
『いやぁ無事にあれ届いたみたいだね、しかもカチドキとのシンクロ率も鰻登り!!此処までシンクロするなんて束さんも予想外だよ!!』
「この場合はこの馬鹿が勝手に浮かれて先走るので、俺も走って何とか合わせられてるって感じなんですけどねったく……束さんも母親として子供何とか言ってやってくださいよ」
『う~ん束さんは基本的に放任主義というか、子供はのびのびと育って個性的になって欲しいんだけどなぁ』
「自分でライダーを模したIS装備の設計図を作ってる時点でもう個性的です」
正直これ以上個性的になられたら困るというのが本音である、他のISコアだって色々と特撮談義をしていたりライダーの布教やらをしているのに……最近はカミツレがネット購入した怪獣王映画やアニメ作品をカチドキが勝手にコア・ネットワークににも見れるようにしていた影響で、色んな熱が凄い事になっている。知らないうちに自分の子供達がとんでもない事になっている……という現実に頭を悩ませている。
『あ~……まあうん、束さんもいきなり「ゴジラ対ヘドラの空を飛ぶゴジラについて如何思いますか?」って言われた時は思わず目が点になったね……色んな意味で。そもそもゴジラって飛んだっけっていうのが最初だったけど』
「ああ、身体丸めて放射で飛んだあれか……。確かにあれは知らないと嘘なんじゃねぇのって思いますよね。んでところで今回は如何して連絡くれたんですか?」
『ああそうだった。もう直ぐ夏休み前の校外学習やるって話は知ってるでしょ?』
それは勿論知っている、1年の時の臨海学校のように2年にもそれは勿論ある。しかしまだ詳細は知らされておらず何をやるのかは全く知らない。
『実はね、今年の2年生は束さんが個人的に持っている島で行われる事になったんだよ』
「えっ……な、なんですかそれ!?」
『フッフッフッ……束さんが買った島を色々と魔改造した特殊な島でね、まあ楽しみにしててよ!!』
「不安しかありませんよ!!!??」
暴走していたのはカチドキと束でした。
尚、注文したそれにはハンドル剣とドア銃、トレーラー砲などなども付いて来る模様。
あとゼンリンシューターとベルト破壊に定評があるあのシンゴウアックスも。