IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第256話

「千冬さん、聞きたい事があります」

「なんだ私のスリーサイズか?」

「もう知ってます、んなもんどうでも良いんですよ。今回の今年の校外学習が束さん所有の島で行われるって話って本当ですか」

「……さらっと私のボディが如何でも良いとか言われてショック何だが」

「もう存分に味わってるから良いんですよ、なんなら今夜一緒に寝ましょうか?」

「是非」

 

夕食時、当番制のように決まっているカミツレとのふれあいの時間。婚約者達が真剣に話し合って決めあった結果予定表、これも一夫多妻制を取っている故に粗相を起こさない為の工夫である。そしてそんなその日は千冬の日であった。カミツレの部屋にやってきた千冬は夕食を食べながらカミツレに質問があると言われてそれを聞くと今年の校外学習の話になり、思わず箸を置くのであった。

 

「うむ……実は毎年の事なのだがIS学園の受け入れをして貰う先を見つけるのはそれなりに大変でな……。事前の情報統制やらその一帯をレンタルして、その間の通行禁止やら禁止事項決めに巡回者の決定やら、問題が起きた際の責任はどうなるやら……兎に角決める事が満載なんだ。まあISを扱う上では致し方ない事なのだが……」

 

溜息を吐きながら千冬が語るには校外学習の場として決定する為には多くの話しあいや準備が必要となってきてしまう。それこそ国家機密が詰まっているISのデータをこの隙に手に入れようとする国も少なからずいる訳で、その対策として様々な手配が必要となってくる。そしてそれを受け入れてくれる施設なども少なく毎度毎度凄まじく揉める。去年1年の時に使わせて貰った旅館に今年もなる筈だったが『銀の福音』の一件で慎重になってしまったのか中々首を縦に振って貰えないらしい。

 

「それで束さんから申し出が来た、と?」

「ああっ……。正直あいつが申し出て貰えなかったら2年の校外学習は決まらんかったかもしれん……」

「そんなにっすか……」

「そんなになんだ……。正直不安もあったんだが、あいつの所有する島なら色々と大丈夫そうだからな……」

 

そう言いたくなるのも理解出来る。束自体がとんでもないオーバースペックなので今まで国際指名手配だったのにも関わらず今まで逃げ切っていた。そんな束が所有する島なのだからセキュリティ面もバッチリだろうしISを使用するにも十分過ぎる施設もある事だろう、何より周辺への警戒やら責任問題やらで揉める心配も無いし見回りなども全て束が責任を持ってくれると言っていた。教師としてはこれほどまでに助かる申し出も無かった。

 

「でも、大丈夫なんですか……幾ら千冬さん的に助かるからってあの束さんが所有する島ですよ。行ってみたら島丸々一つが大要塞、とかでも俺驚かない自信ありますよ。寧ろだろうな、って納得すると思います」

「……急に不安になってくるから辞めてくれ……あいつはお前に誓って絶対に大丈夫だからと言っていたから信用しているんだ……」

 

千冬曰く、束の申し出自体は有難いし色々助かるのだが……面倒な事にもなりかねないし加えて束の島だからと凄まじく警戒していた。だがそれでも大丈夫だと胸を張って言いながら、カミツレに誓って絶対的な安全と安心を提供すると真剣なまなざしで問いかけてきた。千冬としては親友の言葉でもあり、同じ男を愛する女として信じてやりたいと思い、束自身が学園長の許可を取ってきたら了承しようと言ったそうな。まあ束は15分後に改めて電話を掛けなおしてきて、許可が取れたとしれっと言ってくるのだが……。

 

「俺に誓うって……」

「束に取ってお前は愛する男であると同時に絶対的な理解者でもありISの父親だ。そんなお前に誓うと言っているんだ、信じる価値は十二分にあると私は思うがね」

「……せめて俺にそういう事を言ってから誓って欲しいんですけど」

 

と零すカミツレに千冬は確かに全くだなっと笑いを零した。まあ束がそこまで言うのならば信用してみても良いのだろう、そもそも安全性云々辺りについては最初から信用している。心配しているのは島が奇想天外なビックリアイランドではないだろうかという事である。所有の島、と言いながら実際はどこぞの天空の城のような浮遊島だったり、名前こそ島だが実際は退役した空母を買い取ってそれを改造したとか、そんなオチが待っているのではないか……という不安がどうしても脳裏を過ぎりまくっている。

 

「ああ成程そっちの心配か……いかん、完全にそれを想定していなかった……。そうなったら如何しよう、ツッコミきれんぞ……いやまず空母を買い取るのは流石に……いやあいつなら政府の不祥事をネタにして脅して買い取ったとか普通にやりかねん……」

「天空の城だった場合はもっとやばいですよ、目的地まで船で行くよ~とか言いながらそれが飛行能力完備の飛行艇とかだったりも普通に有り得る……」

「……早まった……」

 

と思わず顔を手を覆ってしまう千冬。束の言葉を深く考えずに信用してしまって本当に大丈夫なのか、此処は信じてやるのが一番なのだろうが今までの行動を踏まえると不安が真っ先に出てくる。別の意味で素晴らしい信用がある束である。

 

「いや今更変更なんて出来んし……祈るしかないな……」

「千冬さん……マジで今日は一緒に寝ます?凄い泣きそうな顔してますよ」

「……すまん、今日は甘えさせてくれ……」

「幾らでも」

 

その日の夜、カミツレのベットの上ではカミツレに抱きしめられた千冬が彼の胸板に顔を押し付けながら日頃の不満や不安、愚痴などを打ち明けながら存分に愛しの彼に癒されながら、互いの気持ちを精一杯に確かめ合いながら再度互いを支える事を誓いあい―――口付けを交わした。舌はベットの上の二人かのように静かに絡みあいながら、それが終わると共に眠りに付くのであった。




妻「フフフッ……こんなしっとりした愛の確かめ合いも、燃えますよね」

私「なんでこっちを見ながら言うんですかね」

妻「さあ何ででしょう?」

私「そういえばこの空母の件ってなんか元ネタあんの?」

妻「えっガルパンをご存知でない!!?」

私「えっガルパンなの?」

妻「……ドン引きです」

私「何で引かれたの私!?」

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