「そう言えばよカミツレ、セシリア達と一緒にいなくて良いのかよ」
「逆に聞くけどお前だって箒といなくて良いのか」
「いやだって婚約してるって言ったってまだ学生の身だし、お互いの時間は確り持つべきだろ。それで普通に自由時間とか取り持ってるぞ」
「俺だって同じだ。それに、俺以外の人達なんて忙しい人達ばかりだぞ。束さん以外俺と婚約した関係で色々と大変な事になってるんだから、俺はその疲れを癒す役目が主だな」
「成程な」
と言った風な会話をしながらも二人は甲板に出ながらアイスを食べながら海を眺めていた。それに婚約者達も何時も自分達といては落ち着ける時間も無いだろうという事で、男子同士で共にいて思う存分に暴露したり、ストレス発散の時間を意識的に作ったりしている。その影響もあって、カミツレと一夏はストレスを存分に吐き出せている。入学当初からは考えれないことである。
「にしても一夏、お前抹茶好きだな。抹茶アイス三段重ねって……普通そういうのって別々の味を乗せるものじゃねぇのか?」
「一回やって見たくてさ……因みにカミツレのそれは何味?全部赤いアイスじゃねぇか」
「ああ。ブラットオレンジ、ストロベリー、クランベリーのトリプルアイスだ」
「なんかコンボ出来そうだな、アンクが喜びそう」
「食ったらぶっ飛びそうな名前になりそうだけどな、ブラストベリーか?」
と言った風な適当な会話を繰り広げている二人だったが、視界の中に映りこんできている小さな影が見え始めて来た。あそこが目的の島なのだろうか、それとも全く関係のない島なのだろうか……この島の進路上にあるような気もする。なんだかんだで昼食の後は再びデュエルを満喫していたのでかなりの時間が経過している、途中で簪とマドカも混ざってきてタッグフォースルールのライディングデュエルを行っていた。
「あそこが目的の島、で良いのか?」
「いや違うだろ、船が進路変えてるし」
「んじゃ気のせいか」
一夏の言葉どおりに気のせいだった、まもなくかもしれないという気持ちがズレを起こさせたのかもしれない。カミツレが試しにカチドキに尋ねて見るとあれは束とは無関係の無人島らしく、まだ時間が掛かるとのらしい。カミツレが望むならスピードアップするらしいが、遠慮しておいた。それから更に2時間ほど過ぎた頃の事であった、まもなく到着するので下船の準備をするようにという千冬からのお達しがアナウンスで入ったのであった。
「おっもう直ぐ着くのか?」
「漸くですかぁ~……本当に数時間掛かりましたね」
「まあゆったりとした船旅というのも悪くありませんでしたわ」
とカミツレの自室には乱とセシリアの姿もあり、先程までのんびりお茶をしながらイチャイチャしていたことが窺える。早急に荷物を纏めて、それらを持って大ホールへと集合するのであった。そこでこれから降りる事への説明をされた後に船の到着を知らせるアナウンスが響き渡った。漸く着いた皆が思う中でカミツレと千冬は大きな不安を抱えながら、千冬が一組を一番最初に連れながら船を下りるのであった。束所有の島、一体どんな島なのかと不安を胸に抱きながら降り立ったそこは……現代の街にも通じる光景が広がっていた。正直普通すぎると言っても良いほどに普通な光景が広がっている。
「(杞憂で、よかった……)よし全員順序よく、スムーズに降りて行けよ」
と千冬が声を掛けながら次々と生徒の下船を促して行く。生徒達は目的地への到着に胸を躍らせながら次々と降りて行きながらクラス毎に並んでいく、全ての生徒が降りた事の確認を済ませると千冬は到着したら案内をよこすと束に言われていたのだが、その案内役が居ないと目線を巡らせていると此方に向かってくる一つの人影を見つけた、それが案内係かと思って声を掛けようとしたが思わず硬直してしまった。それは千冬の前まで来ると丁寧なお辞儀をしながら言った。
『ようこそIS学園2学年の皆様方、皆様の到着を心待ちにさせていただきました』
「お、お前が案内をするという……?」
『はい、主人より皆様の案内を申し付けられている者でございます』
丁寧な言葉遣いをしながら顔を上げるそれは、如何見ても人ではなかった。肌は鈍い銀色に輝いている、人間的な表情こそあるが声はあからさまなまでに合成によって作られた声だった。これを人間として見ろという方が無理がある。そのような物が案内をする、という事に対して皆も驚愕している。と思っていると……空から一つの影が降ってきた、それは地面に激突する寸前に不自然なほどに減速してふんわりと着地をした。それは―――束であった。
「ニャハハハハッ!!ようこそIS学園の諸君、歓迎しよう盛大にな!!!」
『し、篠ノ之 束博士ぇ!!?』
「YES I AM!!」
「おい束、これはどういう事だ……?!」
といきなり現れた束に説明を求めようとする千冬に束がニコニコと笑みを浮かべながら答える。
「いやぁねぇ、最初こそ案内は任せようとは思ったんだけどさ。やっぱり島の持ち主として確り挨拶はしておくべきだと思って、ほらっ古事記にも挨拶は大事って書かれてるし」
「どの古事記だ……」
「まあ兎も角皆良くぞ来てくれたねっ!!!」
と大きく手を広げながら笑みを浮かべながら束は大きく息を吸い込みながら叫ぶように告げる、島の名前を、そしてこの島がどういった物であるのかを。
「―――この島は束さんが様々な技術の試験場として使用している島、通称"天災の玩具箱"。この島は全世界から完全に隔離されている特殊な島、誰もが未来に夢見た技術を試す場。さあ君達をこれからの数日間、驚きに満ちた刺激を味わうだろうね。精々楽しんでいってよねっ!!!」
島自体は普通だった、だが中身が普通じゃない。