「宇宙空間仕様のISか……束さんの夢がもう直ぐ形になるのか……」
束に海が見える良い場所を紹介してもらったカミツレはそこに立って海を眺めながら、束の夢の実現が近づいている事に喜びを感じていた。カミツレにとっては婚約者の夢であり、自分の子供が見る夢でもある。同時に新しい我が子の誕生の瞬間とも言える。束としても形だけと新しくコアを作るのを両方やると言っていたので、間違いなく子供が増える。
「というか、それをもう認めて受け入れてる辺り俺も俺だな」
既に束との関係を許容し慣れ親しんでいると言っても過言ではない今の状況、普通の生活を送っていた頃は絶対にありえなかった事だろう。よくもまあこんな風に変化したものだと自分でも驚きを隠せない程である。人は変わって行くものとはよく言われるものだが、自分の場合は変わりすぎなのではないかと思う。これでもISに関わった影響なのだろうか。
「なぁカチドキ、お前もう直ぐ新しく弟か妹が出来るけど如何思う?」
『如何と言われましても……コアナンバー的に考えても私には200以上の年下の弟妹がいる事になりますからね。なんとも言えないと言うのが正直な本音でしょうか』
「そりゃそっか……」
『しかし、そんな新しい家族がドライブ好きならば話は別ですがね』
「重要なのそこか」
カチドキ曰く、仮面ライダーの中でもドライブは面白いと評価はあるがそれでも人気自体は少ない方らしく自分としては共感出来る家族がいたらそれはそれで嬉しいとの事。マッハやチェイサーの方が仮面ライダーらしいという意見が大半らしい。
「やれやれ、我が子供たちは本当に個性豊かなもんだ」
『褒め言葉として受け取っておきましょう―――カミツレ、貴方の携帯への着信を検知しました』
「あれっでも此処って専用の機器が無いと連絡届かないんじゃないの?」
『故にコア・ネットワークを介して通信は可能です。逆探知対策などもバッチリです』
「よしじゃあ繋げてくれ」
と携帯を取り出しながら誰からの連絡なのかと思っていると、そこに映っていた名前に笑みを浮かべながら腰を落ち着けながら通話を始める。
「はいもしもし~こちら杉山 カミツレ」
『はい~こちらイギリスの杉山家の書斎の中で優雅に紅茶を堪能中のパパ上だよ』
「なんだよ父さん、相変わらずそのへんな挨拶かよ」
『そんな言い方ないだろぉ~マイサン、久しぶりに話すのにさぁ』
自分へと連絡をしてきたのは父、杉山 仁志であった。帰郷した際にも会えず仕舞いで声を聞く事自体も酷く久しぶりだが、矢張り温かみのある優しさに溢れる声に安心感を抱く。父は基本的に杉山ファームの流通部門を担当していて、何処の業者に卸すのか、何処の家庭と契約するのかなどを管理している。自分が帰郷した際はイギリスに移住した際の流通ルート作りに奔走していたので、会えなかった。
「んでそっちは元気な訳?」
『元気も元気、毎日鍛えてますからっ』
「んな事知っとるわ。まあ父さんなら怪我なんかもしてねぇだろうから心配無用だろうな」
『んもぉ~冷たいなぁ、そこは色々心配何だからって素直に言ってくれたらお父さん嬉しいのに』
「アンタを心配するだけ無駄だって言ってるんだよ。お爺ちゃんとマジ喧嘩出来るくせに何言ってんだよ」
父は祖父に負けず劣らずに身体を鍛え上げている、一応母と同年代なのに若い頃から鍛え続けているだけあって筋骨隆々の見事なボディを維持し続けている。
『それでさ、今度は何時帰って来る訳?こっちもさ、色々と面倒な事終わったから漸くゆっくり出来るようになったからさ。お父さんとしては是非とも、マイサンのお嫁さん達と会いたいんだけどなぁ~』
「あ~……一応夏休み辺りには帰るつもりだよ。セシリアと一緒に帰るつもりだし、多分乱ちゃんは一緒かな。千冬さんは……如何だろうな」
『ほっ~そりゃ楽しみだ。いやぁお父さんは何時の間にか、何人もの女の子を落としていたプレイボーイな息子に驚きだよぉ。お父さんの若い頃だってな、モテたけどお父さんはお母さん一筋だったからなぁ♪』
「何度も聞いたからその惚気話……というか厳密には俺が落としたというか落とされたというべきか……」
父と母の大恋愛談は兄と共に耳がタコが出来るまで聞かされた。曰く、母はモテモテでライバルが大勢いた。曰く、父もモテたとの事だが母しか目に入らなかった。曰く、最後には二人同時に告白してしまって顔を見合わせて大笑いしながら交際した。そんな話をもう暗記してスラスラ言える位には聞かされている。もう正直聞きたくもないほどに、何が悲しくて父と母の恋愛話またを聞かなければいけないのだ。
「それでさ父さん、本当に連絡したのは俺の声を聞きたいから?後何で一々マイサンって言う訳?」
『いやぁ英語慣れする為のお遊び。本題がある。実はさちょっと前にさ、束ちゃんが家に来てさ』
「束さんが?」
『そうそう。束ちゃんがさ、子供を育てるにあたってのアドバイスを聞きたかったからさ、色んな事を経験させてあげたり色んな人と話をさせて、色んな物を鍛える機会を与えてあげるといいよって言ったんだけど……もしかしてなんだけど、カミツレお前さ……仕込んだ?』
「んな訳ねぇだろクソ親父!!!ISのコアの話だ!!!」
『あっそっちか!!』
いきなり何を言いだすかと思ったら……とんでもない事を聞いてくるものだ。だがそうなると、今回の校外学習のきっかけを作ったのは父という事になるのだろうか……なんとも間接的にとんでもない事をしたものだ。しかしそのお陰で千冬も助かっているのだから感謝すべきなのかもしれない。
「ああっビックリした……いきなり爆弾ぶっこんで来るのやめろよ……」
『いやぁ勘違いしちゃって悪かった悪かった。でもお父さん、早く孫みたい。サッカーチーム出来る位でいいから楽しみにしてるよ!!』
「いや、何が位だよ!?めっちゃ欲張ってんじゃねぇか!!?ってあれ、もしも~し!!?き、切りやがった……」
と、カミツレの父は母に負けず劣らずに嵐を巻き起こす人なのであった。
妻「子供かぁっ……私達も早く欲しいですわね♪」
私「気が早くないかな、流石に……?」
妻「そうでもありませんわ、タイミングとしては十分な部類です!!という訳で、掃除してたら出て来たメイド服を着て見ませんか?」
私「断固拒否する」