IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第267話

カチドキとシーナの言い合いが続けられている最中、漸くシステムのシンクロが終了したのか終了の表示が目の前に表示されている。

 

『シンクロが終了しました、お待たせしましたお父様。それではまもなく稼動を始めます』

「おうやってくれ」

『ではまず意識を集中して、自然と目を開けてください。そして広がっているものをそのまま受け入れてください』

 

それと同時に瞬間的に世界が一気に広がって行く、通常のハイパーセンサーとは違って自分の視界その物がハイパーセンサーと同化しているかのような感覚がそこにある。モニターに投影されている物を認識するのではなく、ハイパーセンサーが捉えている物を、ハイパーセンサーの機能を、ISの視界を直接カミツレの脳自身が視覚野で受け取っている。自分の普段の肉眼よりも遥かに広い視野での視点、本来は身体を回さなければ見ない筈の背後や真上や真下などを瞳を動かすだけで見るという感覚で可能になっている。

 

「な、んだこれ……!?すっげぇな……こりゃ」

『これが宇宙空間活動仕様型の特徴です、操縦者とISが真の意味でシンクロする事で全身装甲である事をカバーしつつ性能の向上を図るという物なのです』

「へぇっ……」

『では機体とのシンクロを本格的に行います。お父様、痛みを伴いますがご容赦くださいませ』

「えっ痛いのかよ!?ちょっと待ってもっと早くにそれを言うべきだろ!?」

『申し訳ありません、大体カチドキのせいなので文句はそちらに』

「カチドキてめぇぇぇえええええ!!!!!!」

『解せぬ!!?』

 

―――瞬間、凄まじい衝撃が身体にぶつかってくる。全身を電気的な刺激、いや衝撃が襲い掛かってくる。我慢出来ないほどのものではないが、それでも全身満遍なく襲いかかってくる痛みというのは中々体験出来ない。同時に身体に新しい重さを感じるようになる、痛みがなくなっていくのに応じて瞳を開けていって周囲を見渡していくと、ハイパーセンサーが捉えたのは自分の身体ではなくカチドキを反映したシーナの姿だった。「ディバイダー」なども周囲に存在しており、頭の中には幾つかの選択肢のようなものが浮かんでおり、そこには武装が並んでいる。

 

「こ、これって……!?お、俺がISになってるのか!?」

『いいえ違います。お父様が私と、いえ宇宙空間活動仕様型とリンクした結果なのです。今、お父様はISでありISはお父様でもあるのです。言うなれば初号機やマークアインに乗っているようなものだと思っていただければ』

「あっ成程、一号機繋がりか」

『その通りです』

『えっ納得するのそっち?』

 

その言葉で一気に謎が解けていく。つまり、全身装甲である事の弱点である柔軟性などをカバーする為やより直感的な操作をする為に機体とシンクロしているという事なのだろう。瞬間的に変貌した自分、刹那の時を置かずして変身したというよりも、機体の身体に憑依でもしたのかと錯覚するような感覚だ。シーナ、ついでにカチドキがいなければパニックを起こしていたかもしれない。

 

「お~いカッ君、大丈夫?神経接続に問題はない?」

「大丈夫です。なんかいきなり身体でかくなった気分ですけど」

「よし、それじゃあこれから稼動実験にはいるよ。これからカッ君には海に行って貰って各種のデータを取ってきて欲しいんだ」

 

宇宙への前段階としてプールで宇宙飛行士が訓練を行ったり、気密性が確かなのかどうかそれを確かめる為にプールに沈めるという話は聞いた事があるが確からしい。カミツレがVサインでOKを示すと束がボタンを押す、すると足元のブロックが沈みこんで行きそのままエレベーターのように下降して行く。そしてそれが停止するとあちらこちらから海水が注入されていく。水のひんやりとした感触が装甲()に触れる感触、それらが身体を包みこんでいく。

 

「すげぇ……肌に触れる水の感触に水の中で動かす時の感覚まである」

『神経接続を行っている関係で人間の肌が感じ取る全てを体感出来ます。痛みなどは当然カットされますが、他にも必要以上の物が反映されないように設定なされているので火傷などの心配はありません』

『基本はエヴァやファフナーのそれと思って良いという事ですな、痛みだけはないバージョンと考えて良いと思いますよカミツレ』

「は~……成程ね」

 

完全に海水の注水が終了する、内部の減圧も終了されたことも示されると束からそのまま進んでくれと言う指示が飛んでくる。

 

「よしそれじゃあ行くかっ……!!」

 

普段通りにカチドキと共に空を飛ぶかのようにすると身体が前へと進んでいく、どうやら通常のISを操ろうとする感覚で基本OKらしい。そのまま進んでいくと自然と光が見えてきた、それを目指して進んでいくと島の内部から飛び出して海の中へと出た。そこに広がっているのは水中の美しい光景、その光景の中を自在に泳ぎまわっている魚らであった。本当に海の中にいると実感すると思わず息苦しさを感じてしまい、口に手をやってしまう。

 

『落ち着いてくださいお父様、シンクロ中は溺れるなんて事はありえません。その為の機構も内蔵されておりますのでご安心ください』

「そ、そっか?あっ~でもビックリした。本当に俺、海の中にいるんだな……」

 

スキューバダイビングという物はやった事は無いが、その時に目にする海の中の景色というのもこのような感じなのだろうか。一種の感動を覚えつつも海中を泳ぐというよりも飛ぶかのような感覚で進んでいく。空気の抵抗とも違う水の抵抗が、何処かカミツレには面白く感じられているのか、口元には笑みを浮かべたまま水中を進んで行く。一気に潜行してみたり、急上昇してみたりして身体に変化がない事をデータで取りながらも水中を満喫している。

 

「……」

 

思わず、海面を見上げながら身体を海流に任せてみた。鋼鉄の身体は水に委ねられたまま浮かび続けている、それらはISとしての機能なのかもしれないがそんな事は如何でもよかった。空を飛んでいるときは全く違う感覚に、カミツレは心を震わせていた。これが束の夢である宇宙へと届く翼の初号機、そんな光栄を噛み締めながらも何れ自分も宇宙へと行くのだろうか?行けたらいいなぁと思ったりする。

 

「シーナ、カチドキ」

『はいお父様』

『なんですかカミツレ』

「……お前たちのお母さんの夢は、とっても壮大で素晴らしい物だな」

『そうですね、私たちの夢でもあります』

『何れ宇宙へ……行きたいですね』

「連れて行くさ、束さんならきっとな……」




妻「こういう神経接続って結構痛みとかの問題もあるでしょうから大変でしょうね」

私「大丈夫、圧覚超過付いてるから」

妻「まさかの採用……。ではこの服も採用してください!」

私「……全身タイツじゃねぇか!!?」

妻「違います!!おっぱいタイツ師匠のコスチュームです!!」

私「タイツじゃねぇか!!?絶対にいやだ!!!」

因みに……着ましたよ、腰にウィザードみたいな奴を付けるっていう条件付で。
久々にいやな汗が出まくりました。

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