「んでよ、何を如何したら雪片を変えたいなんて考えに至った?」
「ああっそれはさ、ここの装備を色々試してみた結果だよ」
一夏と合流したカミツレ。周囲には一夏がテストしたと思われる装備が並んでおり、それらは使用が終了したのでリフトダウンして格納庫へと下げられていく。それらを見送りながら如何して一夏が雪片を変えようとなど思い立ったのかを聞いて見る事にする。
「いやさ、候補として上げられてた装備を本当に色々試したんだよ。ガトリング、炸裂砲、拳銃、脚部内蔵型……でもいまいちしっくり来なかったんだよ」
「それ純粋にお前が試したりてないだけなんじゃないのか?」
「いやでもこれでも96個は試したんだぜ?」
「約100かよ……」
カミツレが宇宙空間活動仕様型のISのテストを行ってから既に数時間が経過している。実際に一夏は100に近い数の装備を試している、しかしそれでもしっくり来るのがなかったらしい。それでもそれだけの数をこなしているのは十分凄いことだが。
「それでさ、根本的な事を思いついたんだよ。何で俺の奴には追加武装というか、装甲内蔵型系の物しか使えないのかをさ。そしたら原因はやっぱり雪片って答えになったんだよ」
第一形態から単一仕様能力が使えるように作られているため、これ一本で拡張領域が全て埋まっている。それが他の武装を乗せる事が出来ない原因である上に、近接戦用の機体にも標準装備されている射撃用センサーリンクシステムが搭載されていない。なので散弾形式の物しか採用出来ない致命的な欠点にもなっている。
「ねぇ束さん。サポメカ達に聞いたんですけど、雪片には展開装甲が使われてるんですよね?」
「うんそうだよね~。実験的に無理矢理込みこんだのよ」
「それでさ、雪片を根本的に変える事って可能ですか?これ全部を展開装甲にするって」
それを聞いた束は思わずタブレットを態々しまいながらそちらへと目を向けた、まるで興味深そうな話を聞いたような輝いた表情を浮かべながら。
「それ、どういう事だ?」
「いやだからさ、雪片その物を装甲にしちゃうんだよ。それで使う時だけ剣の形に変えるようにするって感じで」
「ほうほう、そりゃ実に興味深いね……。武装その物を装甲にか……考えたことなかったねそれは」
「それに……ぶっちゃけた話をしちゃうとさ、俺の剛の剣は雪片だと使い難いんだよ」
そう語る一夏、そもそも雪片は形状的には日本刀。それで力で叩き切る技である剛の剣を表現するなんてハッキリ言ってしまうと正直馬鹿みたいな発想なのである。ISだからこそそれが行えるが、それでは限界がある。技によるもので振るわれる剣である日本刀と、一夏の全力を一刀に込めて振るわれる剛の一閃は正直いって相性がよくない。それでも体現出来ていたのは雪片という剣の素材が優秀だったから。
「成程ねぇ……それで細かい装甲の集合体とも言える展開装甲を転用して、極めて丈夫な新しい剣が欲しいって訳だね」
「そういう事です。だって改めて考えたら射撃補正のシステムまでないのに射撃武器乗せようとか、ぶっちゃけただの馬鹿でしょ?」
「まあ、確かにな。戦闘機で言えばロックオンシステムも無しでミサイル撃って相手を撃墜しようとするようなもんだもんな」
「だろ?だからさ、束さん拡張領域を圧迫しない新しい剣をお願い出来ないかな?」
「う~ん……よしいいでしょう、今ちょうど脳細胞が良い感じでエンジン入ってるから新しい剣を作ってあげようじゃないか!!ついでに「白式」の調整とかもしてあげるよ」
「おっしゃあっ!!流石束さん話して正解だったぜ、よっカミツレの奥様!!」
「ニャハハハッもっと言ってくれたまえっ~!!」
と束を持ち上げる一夏とそれに乗って悪ふざけのように笑いを上げる束、そう言えば一夏は束との付き合いは長かったという事を完全に忘れていた。
「んじゃ作業に入るからばっははぁ~い、夕ご飯の時にでも進捗状況を教えて上げるから」
「え~いお願いしや~す」
と去っていく束を見送ったカミツレと一夏。しかし、あの一夏が自分から雪片を手放す事や新しい剣を望むなんて事を言いだすとは思わなかった。確かに「白式」の問題点を解決するには雪片をどうにかするのが一番手っ取り早いというのは分かる話である。大体あの剣が足を引っ張っているようなものなのだからな。
「にしても良いのか一夏、あれ一応千冬さんと同じ剣だろ。大切にしてた剣を随分あっさり手放すんだな」
「取捨選択って奴だよ。確かに千冬姉と同じ剣っていうのは特別だけどさ、何時までもそれにしがみ付いてても成長出来ねぇだろ?それに千冬姉だってさ、何時までも自分の影にベッタリな俺なんて見たくねぇだろうし」
と頬を掻きながらそう一夏にカミツレは思わず肩をすくめる。そりゃそうだ、これも一つの成長なのだからそれを祝福してやるべきなのだろう。
「にしても雪片を捨てた、なんて千冬さんのファンが知ったらなんて言うだろうな」
「それをカミツレが言うのかよ。お前なんて千冬姉と結婚するんだから、お前の方がやべぇだろ」
「俺はいいんだよ」
なんだよそれと言いながらも一夏は言葉を続けた。
「言いたい奴には言わせておけばいいんだよ、そもそも姉弟だからって同じもんを使わなきゃいけないって事は無いだろ?俺と千冬姉は同じ人間じゃないし、全く違う人間だ。そもそもマドカなんて一応クローンなのに全然違う道歩んでるだろ」
「あ~まあ確かにな」
「俺を俺として見ない奴なんかの意見なんて聞く必要はない。俺は俺が決めた道を行くんだよ」
そう言った時の一夏の姿が一瞬、カミツレには酷く大きく見えた。今までは姉の道を辿りながら自分の道を模索し、結局は姉になろうとしているかのような男が殻を破って前提を壊し、新しい道を歩もうとしている。そんな決心を固めた男はとても立派で大きな背中を持った姿へと、成長した。
「全くいきなり変わったなお前。新しい一夏にもなったつもりかよ」
「なったんじゃない、これから新しくなるんだよ。これから進化する、そう……ブランニュー・一夏になる!!!」
「だっせぇな」
「ひでぇなおい!?そこは応援するとか、おめでとうって言うところだろ!!?」
「じゃあ言ってやるよ。ハッピーバースディ!!新しい一夏の誕生だぁ!!」
「煽ってるようにしか聞こえねぇよ!!!」
「んじゃ……祝え!!織斑 千冬の力を受け継ぎ、それを遂に我が物へと変じさせ進化した新たな、世界王者の弟君……その名も織斑・ブランニュー・一夏!!まさに生誕の瞬間である!!」
「誰が魔王だゴラァ!!!?」
妻「原作一夏が見たら凄い憤慨しそうですねこの展開」
私「でも実際、強すぎる力が害にしかなってないからね。ぶっちゃけ雪片搭載決めた奴は唯のアホだろ」
妻「ですよね本当に。それと新しい衣装が完成しそうです!!」
私「今度は何だよ……」
妻「ニトクリスの英霊正装です!!」
私「……なんだろう、凄い比較的に見てまともだ」