「んで一夏、愛しの彼女との一夜は如何だったよ」
「……やめてくれ。思い出すと火が出そうだぜ……」
「なんだ、キザな台詞でも飛び出したか」
「お前はエスパーかよ!!?」
「経験談」
「あっ……(察し)」
と島にやって来てからの三日目、1年の時とは違って今回の校外学習は1週間丸々を使って行われるので今日も今日とてIS漬けの日々が始まるのであった。そんな日の中でカミツレと一夏は昨日と同じく地下へと降りて行き、それぞれの事をこなすことになっているが一夏は朝から妙に顔が赤い。理由は明白、箒との一夜である。今回が始めてという訳でもないだろうに、どうやらそれほどに激しかったらしい。
「世界で一番にお前を想ってる、これは世界の理と同じだよ箒……とでも言ったのか?」
「……」
「えっ何、まさかのドンピシャなの?」
「……お願いですから勘弁してください」
まさかの勘で言った言葉がドンピシャで当て嵌まるなんて思いもしなかった、正直適当に言いそうな事を思い浮かべて言っただけなのに此処まで的中するなんて思いもしなかった。
「それでそのままキスでもして行為再開とか?」
「……マジで勘弁してください!!」
「分かりやすすぎるだろお前」
「うううっ……何でカミツレはそんなに平気な顔出来るんだよ!!?」
「お前と押し倒されてる数が違うんだよ」
と光がない虚ろな目で自信たっぷりに言い切るカミツレに一夏は思わず言葉を失うのであった、カミツレは自分よりも遥かにとんでもない相手が恋人なのである。しかもそのうち3人が年上で色んな意味で格上、そんな彼女はほぼ確実に此方を肉食的に愛してくるので、色んな意味で辛くもあるので慣れたと想わないといけないのである。
「因みにその、カミツレはどんな感じ何だ……?」
「普通義兄のそういう事情聞くか」
「いやだってその……」
「自分なりでいいんだよ、お前なりのやり方で愛してやればいいんだよ。なんなら今度はお前がお姫様抱っこしてそのままベットに運んで、一緒に過ごすだけでも箒は満足すると想うぞ」
「そ、そうかな……それも経験談なのか?」
「ああ。千冬さんにやった」
「勇者かよ……」
未だ千冬の大きな一側面として覇者という印象が拭いきれない一夏からすると千冬がお姫様抱っこされているというのは想像出来ない、寧ろ千冬がする側にしか想えない。言うなれば千冬が王子でカミツレがお姫様、完全にそういう恋愛系ゲームのヒロインがカミツレと言う印象である。
「まあ、逆パターンが圧倒的なんだけどな」
「まあうん、その方が納得出来るわ」
「殴るぞ」
とそんな会話を続けている二人であったが、漸く到着した格納庫では束がタブレットを見ながら腕に付けている小型キーボードを忙しなく叩き続けている。何かの作業が終わってないのだろうか、声を掛けると元気よく手を振ってくる。
「待ってたよ二人とも。カッ君、今日もシーナと一緒にデータ収集お願いしてもいいかな。今回は出来るだけ出力を上げてやってみて」
「了解」
「それでねいっ君、昨日は箒ちゃんと宜しくやってみたいだからみせられなかったんだけど「白式」改良できたよ」
「えっもう!?」
「ふふん、束さんに掛かればこの位楽勝なんだよなぁ!!!展開装甲をかなり採用したから今日は細かい調整に付き合ってもらうよ」
そう言いながらスナップを聞かせると格納庫の一角がライトアップされた。そこには様変わりした「白式」が鎮座していた。今までの「白式」を中世の騎士だとするのであれば、今の「白式」は重武装をした騎士に見える。各部に追加されている装甲にスカートアーマー、より以前よりも厚みと威圧感が増している姿。あれが新しい「白式」なのである。
「なんか、随分太りました?」
「うん。元々「白式」が高出力機動型だからね、それを利用して装甲を増設して防御力を上げつつも各部には追加のスラスターもあるから機動力は少し落ちるけど運動性が上がってるよ」
「成程……筋肉あるから多少重い防具来ても動けるのと同じか」
まあそれと同じだろうし、分かりやすくしたらそういう事だろう。元々高い出力を誇る機体なら、ある程度装甲を増設したとしても機動力はそこまで落ちないし出力の調整などを行えば、燃費が悪化する事も起こりにくい。
「各部にはEパックを応用した物を内蔵してあるから、機動面に関する燃費は正直超改善されてるよ。稼働時間的には雲泥の差だと思うよ」
「と、という事は持久戦も出来るんですか!!?」
「うん勿論♪」
「うぉおおおおっマジかぁぁぁ!!!!」
と一夏にとっては大歓喜物であった。高出力機である上に「零落白夜」の特性を考えると短期決戦しか取れない一夏にとっては持久戦も可能になったと言うのは感動ものなのである。出来るかは置いておいて、持久戦が出来るだけのSEの持ちがよくなったという事は様々な事にエネルギーを回せるという事。
「それで雪片についてだけど、まあ大改造したよ。正直言って原型ねぇなこりゃってレベルに」
「おおっマジですか!?」
「うん。展開装甲を基本にして作って色々と改良も加えたから、拡張領域にも大幅な空きが出来たからそこにライフルとかその他色々も入れておいたよ。それで新開発した射撃補正システムを搭載したから普通に射撃戦もこなせるようになったよ」
タブレットにデータを出力しながら説明を行う束。そこにはスカートアーマーに装備されているスラスターユニットと元から装備されている両刃剣が映し出されている。
「あれ、普通に剣があるんですか?俺のアイデアは?」
「採用してるよ勿論。まあ説明させてもらうよ、基本的な戦闘は最初から搭載されてる新型雪片「雪片夏之型」だよ。分類としては太刀に入るかな、前の雪片と違った兎に角頑丈でパワーがあるのを目指したよ」
「これだけでも十分な武器だな……」
「でしょ、でも本領はこれからだよ」
何処か含みのある言い方をしながらキーボードを操作すると、データが変化して行く。腰部にあったスラスターが剣に吸収されていくかのように融合して行き、一本の超大型の巨大な剣へと変貌したのである。余りにも巨大、刀身だけでもISを軽々と越えるほどの超大型の剣だ。
「これが展開装甲を利用した「雪片夏之型」の究極形態って所かな」
「おいおい何処の斬艦刀だよこれ……」
「す、すっげぇ……!!!」
「これでいっ君の剛の剣をやったらどうなるかなんて、正直予想も出来ないよ。まあ相当じゃじゃ馬な剣でもあるよ、この剣は」
「いや、俺これ気に入りました!!男っていうのはじゃじゃ馬だと燃えますし、何よりでかい剣とか超ロマンですからね!!!!」
「いっ君ならそう言ってくれると思ったよ♪」
妻「いやぁ懐かしいですね、一夏がいった言葉♪」
私「君が私に言った台詞だもんね。よくもあんな台詞が出てくるよ」
妻「だって出てきちゃったんだもん」
私「子供じゃないんだから……」
妻「あら、お相手がいる大人だからこそ言えるのよ」
私「ごもっともで」