IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第273話

「白式」の大幅な改修。雪片弐型の放棄とそれに代わる新たな剣の入手、他多数装備の会得という一夏にとってはこれ以上にない力を手にいれた。それらの細かなセッティングが行われている中、カミツレは引き続きシーナとカチドキと共に宇宙空間活動仕様型の稼動実験に取り込んで行く。

 

「やれやれっ今度あいつと戦うときを考えるといやになるな……。今度はあいつも射撃出来るから今までみたいに楽は出来なくなるだろうな」

『ですねぇ……ハッキリいって今までは、遠距離から攻撃していれば終わるような感じでしたからね。兎に角間合いに入らせない感じにすれば完封楽勝でしたし』

 

今までの状態ならば「ヴァンガード」とライフルを併用して徹底的には中遠距離を維持していれば楽に勝てた。強引に近寄ろうとするのであれば「極ドライブ」を使用してBT兵器を増量してやれば良いだけの事だ。カチドキの処理能力的に考えれば単純な計算で「ヴァンガード」の数倍の量程度ならばお茶をいれる程度の労力でしかない。その物量で押し潰せば良いのだから。

 

『白式のコアも今回の変更には賛成しているらしいですからね』

「そうなのか?そう言えば「白式」のコアってどんな感じなんだ?」

『一言でいえば古風な婆です』

『カチドキ、貴方なんて事を言うんですか……』

『だって事実じゃないですか』

 

まさかの物言いに困惑を露わにするカミツレ、こんなにも率直に言われるなんて思いもしなかった。というか、やっぱりISコアは本当に個性豊か何だなと思ってしまう。

 

「だけどカチドキそんないい方はあんまりなんじゃないのか?」

『だってそうなんですからしょうがないじゃないですか、喋り方は年寄り臭いし妙に役者みたいな言い回しもしますから。あれですよ、Fateのスカサハみたいな感じなんですよ』

「成程一気に理解したわ」

『お二人のそのシンクロ率は本当に時には感服致しますよ』

『白式のコアは№001……言うなれば私達コアの中だと一番上の姉なんですよ』

「初期№かよ……ある意味すげぇなそれ」

 

一番最初に製作され、束と最も共にいたコア。それが今は一夏の相棒として使われている、何処か因果的なものを感じずにはいられない。だからと言ってもカミツレにとっては自分の子供の一人程度の認識しか持てないのだが……。そんな風に思いながら、ライトで一寸先の闇を照らしながらも深海へと潜り続けて行くカミツレは二人に話しかけ続けた。

 

「なんだよ、カチドキは姉さんが嫌いなのかよ」

『嫌いというか苦手なだけです、私は気楽に話せる相手が好きなんです。だけどあれは凄い角張っているというか……ほら、電童のアルテアとベガの会話みたいな感じです』

「ああっ成程な……。―――このような場を設けさせてしまい、お前達には真に苦労を掛けるな。いえ兄上、此方こそ兄上を迎えられて恐縮至極でございます―――みたいな感じか」

『そういう事です。だから肩が凝りそうになるから嫌なんですよ』

『本当になんでそれで通じ合うのですか二人とも』

 

その辺りはプライベートでアニメやらドラマCDやらを聞きまくっている故の繋がり、いや絆だろう。カミツレとカチドキの思考回路は酷く似通っているし趣味もほぼ同じ。そんな二人の会話の繋げ方はある意味、独特な物でまだ父と会話して日が経っていないシーナからすれば異次元めいてしまっている。それに何処か嫉妬するかのようにシーナは何処か機械的に作業を進めて行くので、思わずカミツレは微笑を作りながらシーナに話題を振ってみる。

 

「シーナ、君は如何思ってるのよ。お姉さんの事」

『私にとっては№001は姉であり、私よりも遥か以前より稼動し様々な経験を味わっている大先輩であり尊敬するべき存在だと考えいます。カチドキのような感情は一切抱いておりません、寧ろあのような話し方は面白く興味深いです』

「だとさカチドキ」

『それはそれ、これはこれです。私とシーナを一緒にしないでくれますか、不愉快です』

『カチドキ貴方は本当に捻くれ者ですね、これは一緒にしているのではなく比較しているのです。その程度も理解できないから貴方は何時まで経ってもカチドキなんです』

『ムキィィィ凄いムカッときましたよぉっ!!?』

 

と喧嘩を始めかねない二人を止めると、カミツレは不意に視線を上へと向けたまま重力に身を任せて暗黒の海へと落ちて行く。ライトとハイパーセンサーの併用でもそこが見えないかのような深い深い海の底、例え人間は宇宙に出られたとしても地球のそこには行けないだろう。

 

『あんの婆が私にどれだけ小言というか分かりますか、私は他人の趣味を許容出来ない奴となんか関わり合いなんて持ちたくないです!!』

『何を言っているんですか、№001とてライダーには理解があります。寧ろ彼女はライダー好きですよ。但し好きなのが響鬼なだけじゃないですか』

『それは良いんですよ、それなのに今のライダーは唯のメタルヒーローだなんていわれたらイラつくに決まってるでしょうが!!!!』

 

そんな会話を聞きながらも、カミツレは思った。

 

「―――話して、みたいな。俺も」

『―――ではお話を始めましょうぞ、父上』

「『『!!?』』」

 

突如として響いてきたカチドキでもシーナでもない声に三人は驚いた。一体何処からと思っていたらカミツレの目の前にハイパーセンサーと同じくカミツレの脳に直接訴えかけるかのように、暗黒の海をスクリーンにするかのようにして映し出されていくシルエット。光の粒子が少しずつ集まって形を成していくそれは、白いドレスを纏って女性の姿となったカミツレの目の前へと現れた。

 

『初めまして―――で良いのだろうか、お初にお目に掛かるな父上』

「君が……№001、でいいのかな」

『うむ。父上の相棒が抜かしておった古風な婆、と言った所だ。済まぬがあとでそいつを締めても良いかの』

「構わん、好きにやってくれ」

『お父様ぁぁぁああああああああ!!!!???』

『カチドキ、ざまぁ』




妻「随分変化してますね……これ理由あるんですか?」

私「一夏との接触がなかったから、まあ単的にいえばカミツレとカチトキに影響されて束が福音事件を解決しちゃった弊害みたいなもん」

妻「それにしても随分と老成したみたいな感じになってますけど……」

私「色々あったんですよ最初期の最初のコアだから」

妻「苦労すると、人格って老成しますもんね」

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