IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第275話

「一夏は君からみたら如何思う、操縦者として、一人の男して」

『最初はただの無知で無恥なわっぱとしか言いようがなかった。己で思考し観る事もせず、今の現実を真摯に受け止めようともしなかった愚か者というのが正当な評価でしょうな』

「手厳しいねぇ」

 

暗闇での会談は続いて行く、カミツレは今の身体の限界深度を目指しながらも「白式」のコアである№001との話をし続けている。

 

『だが徐々に成長し、今では良い塩梅に育ちつつある。己の弱点を自覚し補強する為に素直に他人に救いを求める、己を客観的に観れている証拠。父上、私は確信めいた物を抱えていますぞ』

「どんな確信だい」

『織斑 一夏は何時の日か、自力で私の元へと来る』

 

それはカミツレと同じく、束が設定した条件をクリアして意思疎通を行えるようになると言うこと。即ちカミツレとカチドキのような相棒としての関係に至れるという事でもある、コア本人にそこまで言わせるまでに一夏は着実に成長してきているという証明にもなる。自分の場合は稼働率やISを人として扱うなどがあったが彼女の場合の条件はどのような物になるのだろうか。

 

「君の条件はどうなんだ?」

『おやおや父上は乙女のお秘密にもご興味がおありなのか、お好きなようで』

「何、唯の親馬鹿だと思ってくれればいいさ。大切な娘が相棒として認める要項を知っておきたいだけだよ」

『それならば言うしかありませんな。ISコア№001の条件は機体の稼働率85%の達成、ISコアを相棒として認め、人同様に扱う事、母上に認められる、二次移行へと至る、自分の剣を見つけ出す事。これらが条件です』

 

改めて聞いてみるとこれは相当にきつい条件だらけ、一夏だからこそ突破出来るような条件も一応あるだろうがそれ以外は純粋な自分の技量などでクリアして行くしかない物ばかり。特に鬼門となってくるのは稼働率の85%と二次移行への達成だろう。いや、二次移行を達成出来たとしても稼働率85%なんて早々出せる数値などではない。国家代表でも絶好調時の稼働率は70%を越えるか越えないか、稼働率は操縦者の体調や技量に加えてコアとの相性まで絡んでくるので人によっては全くあげる事が出来ない事もある。過去に100%を達成している人物など殆どいない。因みに達成している人物は千冬であり、その状態で全力全開の本気モード:ヨランドを打ち倒している。

 

「随分キッチィ物ばっかりだな……」

『姉さんその条件、達成させる気あるんですか?確か稼働率に付いてはお母様と相談して決める筈だった物ですが』

『85%というのはコアの中でもトップの数値です。多くは60~70%です、因みにカチドキの75%も普通に高い区分です』

「俺以上に大変って事だな……」

 

カチドキとシーナも思わず呆れるような声を出しながら条件に唖然としている、コアの中でもこの条件は最高レベルにとんでもない物だ。カチドキの時の条件が可愛く思えるような物ばかりで、正直本当に達成できるのかと疑わしいレベル。一般的な勉学を教える学校に通っていた学生に東大を受験させるような物、一夏に本当に越えられるのかと二人は懐疑的な声を上げるがカミツレはそうか、大丈夫だろっと声を上げる。

 

『いやいやいや大丈夫ってそんな無責任な……』

『お父様、これはあからさまな無茶難題という物です。テニス選手に明日から水泳選手になれと言っているような物です』

「まあ確かにな。未だに俺に一勝も出来てないような一夏にはキツい物ばかりだろうな、でも自分の娘が出来るって言ってるんだぜ?それなら俺はそれを信じる、一夏はきっと達成するってな。あいつも最近頑張ってるからなぁ」

 

そう言いながら笑っているカミツレに001も笑いを浮かべるのであった、この人は自分を通して一夏を信じている。いや、一夏を信じる自分を信じる事で一夏を信じていると言った所だろうか。それも自分の子供だからというそれだけに絶対的な信頼を置いている、ISコアに宿っている人工知能とも言える自分達を此処まで無条件に信じられる人間なんて他にはいないだろう。

 

『父上、真に嬉しいのだが何故其処まで私を信じられる。今日初めてお会いした私を』

「親が子供を信じるのは当然だろ?親っていうのは愛するからこそ子供を信じるんだ、俺はそんな愛を受けて育ってきたんだ。俺はそれを自分の子供にもする、それだけさ」

『―――矢張り、父上は母上の運命の方だ』

「そう褒めるなよ」

 

001は感動すら覚えていた。矢張り杉山 カミツレは篠ノ之 束の伴侶になるべき存在だと、その愛は酷く心地よく心を豊かにしていく。同時に人格形成プログラムが大きく働いていく、既に殆ど人間としての完成されているような存在である001だが欠けていた物があった。それは―――父親から受ける愛情であった。それらによって人間に限りなく近しい存在へとなっていく001は心からの笑みを浮かべて言った。今胸に湧き上がっている思いを言葉にして。

 

『―――有難う父上、私を愛してるって言ってくれて』

「これからも言い続けるよ」

『……』

「如何した」

 

思わず顔を伏せた001を心配そうに見つめるカミツレ、彼女にとっては初めて受ける物は様々な負荷を掛けてくるがそれすら愛おしく思えてくる。それほどまでに今自分は満たされているのだと実感出来る……。

 

『全くもって母上が羨ましいと思えて致し方ない、そして理解出来た。如何して父上に恋をしたのか』

「おいおい勘弁してよ」

『いえ、私は愛と恋を学習した。父上、好きになって良いだろうか?』

『えっちょっと001!?貴方何を言っているんですか!?』

『そうです、お父様は私達のお父様でありお母様の旦那様なのです』

「いやぁ参ったな……」




妻「これはあれですかね、私将来お父さんと結婚するって奴ですかね」

私「う~ん、それはどうかな。まだ分からないかな。まだ家族愛と他人に向ける愛情の区別が理解しきれないからね」

妻「ほうほう……つまりこれから燃えるような愛を覚えてヤンデレる可能性もあると」

私「否定はしないけどさ、現役ヤンデレの君がそれ言うの」

妻「フフフッ……現役だからこそ、言えるんですよ……♡

私「ひぇっ……冗談抜きでこわッ!!?」

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