IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

285 / 341
第285話

五日目となった束の島での滞在、漸く全ての工程が終了した事で完全な自由時間が与えられる事が許可された。この島を自由に巡ったり、ショッピングを楽しんだり海水浴に島近海でのダイビング、それぞれが完全に自由とする時間が与えられた。ある者は早速今までの鬱憤を晴らす為に海に向かい、ショッピングを楽しむ為に商業エリアに向かい、本当に様々である。当然、その中にはこの島にある技術のデータやロボのパーツなどを本国に持ち帰られないかと画策する生徒もいるのだが……そこは天災篠ノ之 束。その辺りの対策もバッチリしており、生徒全員に島を楽しむ為のデバイスを手渡している。

 

通話に買い物、調べ物や入店など様々な事をこのデバイスを介して行う。そしてこの島に張り巡らされているネットワークにはそのデバイスを介さないとアクセスが出来ないように制限が掛けられており、アクセスすれば同時にそれらはISコア達の監視下に置かれるので、全ての動きが筒抜けになって仮にデータをインストールしようとしても不正アクセスとして束に報告して制裁を下す事も出来る。

 

―――この島にいる限り、ISの生みの親である篠ノ之 束とその相手である杉山 カミツレの手中にあるのと同義という事になる。

 

「島内専用デバイスね……」

『因みにカミツレの物はお母様が特殊なカスタムを加えた特別な物ですよ』

「なんか俺専用って響きは燃えるんだけどさ、束さんが作った一点に一抹の不安を覚えるんだが」

『大丈夫。お父様に妙な物を渡すわけありませんから』

「いやそういう意味じゃないんだけど……」

 

デバイスは様々なタイプの物があり、スマホのような物もあればタブレット型の物やガラケー型などなど様々。そんな中でカミツレへと束が直接渡したのは腕時計型の特別製デバイス、カチドキ曰くカスタムが施されているらしいがどんな物になっているのだろうかと思わず不安になってくる。その反面で束が自分に作ってくれたと言う事に嬉しさを覚えている辺り、束との触れ合いに完全になれているという事だろうか。

 

「取りあえず付けておいて損は無いって事なんだろ?だったら付けておくか……」

 

腕へと当てた時、デバイスから一瞬でコードのような物が伸縮して腕へと巻きついていく。それは決して締め付けすぎる、緩過ぎない完璧な付け心地を生み出しながら腕と一体化するかのように装着された。そして同時にデバイスから光が投影されて行き、そこに文字が浮かび上がる。

 

『DNA及び体内ナノマシン確認、杉山 カミツレと認証しました。これより本デバイスは杉山 カミツレ以外では使用不可となりますのでご注意ください。了承する場合はYESをタッチしてください』

「えっ何これ」

『まあ良いからモニターのYESに触れてください、それで初期設定が完了しますので』

 

カチドキに促されるまま、デバイスから出力されているモニターへと指を伸ばすと確かな感触と共にYESボタンを押す事が出来た。それによって初期設定が完全に終了してデバイスの使用が可能となった瞬間であった。

 

「……おい、投影型のモニターは幾らでもあるけどさ……実際に触れる投影モニターなんて聞いた事無いぞ」

『そりゃそうですよ。お母様がカミツレの為だけに作った特別製なんですから』

「普通に嬉しいけどさ、これ他にどんな機能があるんだ……?」

 

カチドキによってデバイスの説明がされていくが、基本的にはこの島で行動する為には必要となってくるので貸し出された物だがカミツレにはこのまま譲渡されるらしい。それ故か、デバイスにはカミツレを守る為の緊急時に展開するシールドバリアーや束への直通回線、コア・ネットワークと常時繋がった回線にデバイス自体にも自衛用の攻撃機能が内蔵されているとの事。

 

「……やりすぎだろ」

『そう言わないで上げてくださいよ、折角お母様が手作りの贈り物を張り切って作ったんですから』

「限度って物があるだろ……まあ有難く受け取っておくけどさ」

 

デバイスのスペックは軽くスパコンを越えているらしく、演算処理などもコア・ネットワークの力を借りる為にこのデバイス一つでカチドキのシステムチェックからメンテナンス、細かな調整まであらゆる物が出来るとの事。

 

『あっ因みに、このデバイスにはISコアの人格が最大5体までやってこれるらしいですよ。その際には先程の投影の応用でそれぞれが好きな姿で現れます、例えば―――』

 

そう言いながらカチドキの声が消えたと思ったら、腕時計から光が溢れてくる。赤い粒子は徐々に人の形を成して行きカミツレの肩の上に座れるほどのサイズの小さな小人として姿を現した。その姿はドライブのタイプスピードだった。

 

『こんな風に私はドライブの姿を使って現れようと思いますので、くぅぅぅぅっっ姿だけとはいえドライブなれるなんて感激物です!!!』

「これマジで凄いな……でもなんかこれ、俺よりもコア達向けの機能じゃね……?」

『まあ細かい事はいいじゃないですか、これでもっと面白い体験が出来ますよ』

「俺の人生はもう既に面白いってんだよ」

 

そんな事を言いつつもカミツレの口角が上がっていた。仮の姿とはいえ相棒とこんな風にいられると言うのはカミツレとしても嬉しいらしい。そのまま暫く、肩に乗っているカチドキと話をしていると次々とやって来て、ライダーの姿になって現れるコア達の対応に追われるのであった。

 

『フム、矢張り儂にとっては響鬼こそ至高よのぉ』

『違いますわ№001、この303が推すアギトこそ魂をたぎらせるのです!!』

『私、№388はこの斬月こそ最高と信じますわっ!!』

『何を言うのよ、№163であるこの私が推すキバこそ最強よ!!』

『このカチドキのドライブこそ、究極!!』

「やばい、なんか始まった俺の身体の上で」




妻「まぁた偉い事になりましたね、今度はある意味でのコアの実体化ですか?」

私「似たようなもんだな……まあ物理的な攻撃とかはして来ないから。というか出来ないから」

妻「出来たらもっとやばいですから、因みに何で5体までなんですか?」

私「ISコアってとんでもない情報量の塊だから」

妻「寧ろ5体も受け入れられるデバイスが化け物という事ですね」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。