六日目となったその日は引き続き最後の自由行動日となっていた。明日にはこの島から去って学園へと戻る事になっている。それまでに存分に島を楽しもうという生徒達が様々な行動を起こしている。海水浴だけではなく島のショッピングモールでの買い物など様々な事をしている。中には少しでもこの島に関する情報をえようと画策する各国の生徒の動きもあったのだが、デバイスではないとネットワークへの接続は愚か機材への接続すら出来ないこの島で独自機器での情報収集は不可能。そして島全体をコア・ネットワークで監視しているので隠れて情報をえようとしても無意味になる。それらを悟るとガックリと肩を落としてやけくそ気味に島を楽しもうとするのであった。
「まっ相手が悪かったと思って諦めるんだな」
そんな彼女らヘと向けるカミツレの言葉は何処か同情を含みながらも未来の妻と子供達の努力への誇らしさを孕んでいた。そんな彼はというと愛すべき恋人と共に島の散策へと乗り出していた。今までは漸くコンタクトを取るようになった子供達への相手ばかりをしていたので、少々蔑ろがちにしていたのでその侘びと償いを含めていた。
「ねぇねぇカミツレさんこっちの服なんてどうですか!!?」
「乱ちゃんだったらこっちの明るくほうがいいんじゃないかな?それはちょっと地味な感じしないかい?」
「あっやっぱりそう思いますよね、でもこのジャケットと組み合わせると如何でしょう!!」
「あっ凄い、地味だった下着がいい感じのアクセントになってジャケットを引き立ててるのか、これは一本やられたな」
ショッピングモールの一角にある大型の服飾コーナーにカミツレの姿はあった。今でこそ此処には自分達がいるが、普段はいたとしても束しか人間が居ないのに服を作ってどうするんだと思っていたのだが其処に置かれているのは普通の服ではなかった。そこにあったのは仮面ライダー作中で出てくるオリジナルブランドがズラリと並んでいた。例えるならば「仮面ライダーW」に出てきたWINDSCALEの服や帽子、ネクタイなどなどが並んでいる。つまりここらは……コア達の自己欲を発散する為の場でもある、と言う事なのである。
「カミツレさんご覧くださいこの帽子!!この風のようなマークは凄くセンスがいいですわ!!これ凄く気に入りましたわ!!」
「何処も彼処もライダー関連ネタ多すぎるだろこの島……これも俺の影響か……」
「カミツレさんには此方のライダージャケットがお似合いと思いますの、是非試着を!!」
「今度は照井が着てたライダースファッションの色違いか……」
そんな店舗へとやってきているカミツレはセシリアと乱の買い物に思い存分に付き合う事にしたのであった。束と千冬にも尋ねたのだが、束はシーナとの実験にたっぷり付き合って貰ってからもう満足したとの言っていた。千冬は千冬で今度二人っきりで一緒に飲めれば良いとだけ答えられた、あからさまに食われる気しかしないカミツレだが、それを喜んで引き受ける辺りも慣れきっていると言うかそれだけ千冬を愛していると言うべきなのか微妙なラインになりつつある。
「にしても随分買うんだな……」
「当然ですわ、ISコアがデザインした服なんて他には買えませんもの!!」
「だってこれ凄いですよ!!ISコア達が自分達の専用機をSDキャラみたいにしてたりとか、デフォルメした奴をプリントした奴があるんですよ!!こりゃ買うしかないでしょ!」
「……なんか段々俺の子供達が日本人的な思想に染まってる事に不安を感じるんだけど……」
並んでるのはライダー関連の物だけではない、コア達が独自にデザインした品物も多く販売されている。整備中のISの様子を作るガレージキットやISのプラモデル、ISの稼動フィギュアにデフォルメされたIS……それらがコア達によってデザインされて販売されているのだからこの島は一体どうなっているんだといいたくなるレベルである。
「それではこれらは配達していただけるのですね?」
『可能です。ご宿泊しているホテルからIS学園まで、何処にでも』
「さっすが束さんの島ね!!」
『鍛えてますから』
「おいお前№001だろ」
『何の事ですかのぅ……?』
「出てるぞ口調」
大量購入した服、それらの支払いをしようと思ったのだがカミツレの関係者というか婚約者からは料金は取らないらしく合計金額が余裕で10万を越えそうな量の服を無料で手に入れた上に学園までの配送手続きまで済ませたカミツレ達は次なる場所へと向かってショッピングエリア内をうろついてみる事にするのであった。軽く視線をあちらこちらへと向けてみるだけで分かるのエリアのカオスっぷり、それぞれのコアらが趣味が合うコア同士と店を出しているのかそれぞれに特色が出ているのが分かる。
「MGSショップにANUBIS ZONE OF THE ENDERS専門店、そしてその隣にはボクらの太陽関連グッズ販売店……」
「おい小島監督に汚染されてるぞ」
「そしてそのお向かいには―――魔法少女リリカルなのは専門店……凄い状況ですわ」
「カオスにも程があるわ……なんだここ」
魔法少女物をメインに扱っている店があるかと思ったらその隣にはガッチガチのミリタリーショップがあったり、SFからファンタジーが入り乱れているカオスで統一性の欠片もない店に思わず頭が痛くなってくるカミツレであった。
「あっカミツレさん、あっちなんか仮面ライダーのヒーローショーやってますよ!って簪アンタ何人質役を喜々としてやってるのよ!!?」
「ああっ人質にしている怪人がシンゴウのような斧で吹き飛んで爆発した!!?」
「……本気で頭痛がっ……」
私「さてと、皆さんクリスマスは如何でした?」
妻「私達はうふふふっ……夫婦水入らずでしたね」
私「普段からそうじゃね」
妻「いえムードと言う物が……」
私「君の趣味が何時も全開なお陰でムードなんてなかったけどね、何よコスプレしながらクリスマス祝うって」
妻「照れますわ♪」
私「褒めてない!!」