IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第292話

長かった臨海学校も終了し再びIS学園での日常が戻ってきた。去年の春頃なんてここでの生活なんて嫌でしょうがなかったカミツレもすっかり此処の生活に慣れきっている上に様々な物を手に入れている。あの頃では考えられもしなかった事だろう、唯の一般市民だった彼も今ではすっかり世界情勢に関わるほどの超重要人物。そんな彼が当面の危機として気にしているのは夏季休暇でヨランドがどんな行動をとるのかという事。そんな彼らが今直面しているのは―――とある問題であった。

 

ヒッサーツ!FULL THROTTLE!! SPEED!!

「セイヤァァアア!!!!」

「キャアアッッッ!!」

 

教員用のカスタムが施された『打鉄・黒鋼カスタム』の周囲をすさまじい速度で飛び回っていく「ディバイダ―」を蹴って一気に加速しながらその勢いのまま「打鉄」を蹴り砕かん勢いで炸裂させたスピードロップ。以前よりも制御のキレが増しているからか入射角がより鋭くなっており、次の蹴りが訪れるまでのタイムラグがさらに短くなったそれを決めた。それによってSEが0となった教員は地面へとふらふらになりつつも降りて、実力が違い過ぎるなと呟くと試験官をしている千冬が合格と声を上げるのであった。

 

『よしそこまでだ。杉山 カミツレ、期末試験IS実技満点合格だ』

「有難うございます」

 

そう、今カミツレが直面していたのは臨海学校後に生徒たちに襲い掛かる期末試験という関門であった。一部生徒たちにとっては酷く恐ろしく恐怖の対象でしかないものである試験であるが、日頃から自己鍛錬という名の学習にも余念がないカミツレはそれ程焦ってはいなかった。最近では代表候補生用の課題練習集を多くこなしている事もあって筆記試験も無事に突破していた。まあ怪しい者もいたが……。

 

「お願いします神様仏様カミツレ様!!俺に勉強を教えてください!!」

「いや箒に教えて貰えればよくね?」

「そ、それが箒も一緒なんです……」

「義兄さんお願いします私たちに救いの手を……!!」

 

という訳で昨年の夏休みは色んな意味で危なかった一夏そして箒からの救援要請に応じながらの期末試験だった、一夏と箒もカミツレだけではなくセシリアやシャル、ラウラに鈴、乱といった皆との勉強会を何度も何度も熟したお陰で赤点脱出所か平均点以上を取る事に成功して感極まって涙ぐんでいた。因みにマドカと簪は勉強もせずに遊んでいたが、普通に平均点以上どころか学年トップレベルの点数だった。

 

「やっぱり日頃からの予習復習は大切だな」

「ですわね。勉学の基本ですわっ♪」

「そうですよね~♪」

 

そして残ったのはIS実技試験のみ。IS学園ならではのテストで生徒の操縦技術などを試す物で様々なものが課題として出されるが、日頃からレベルが文字通り次元が違う師匠らに鍛えられているカミツレはそれらを楽々突破してしまった。特に高出力操縦技術なんて満点だった、キャノンボール・ファスト1位の面目躍如である。対戦相手は自分の嘗ての乗機の面影を持った『打鉄・黒鋼カスタム』の教員仕様、それとの対決だったが多少なりとも出力が上がっているとしても基本性能は知り尽くしているカミツレとしてはそれ程恐ろしくはない相手でありあっさりと倒すことに成功した。

 

因みに一夏はというと……

 

「これが俺の全力全壊の最高の一撃―――ッチェェェエエエエエエストォオオオオ!!!!!!」

「えっちょまっ流石にこれはまずいってアアアアアアッッッッ!!!?」

 

新生した相棒、一夏曰く『真・白式』の事を詳しく知らなかった担当教員は白式の進化に驚きながら対処をするが射撃武器やらが搭載されたりしている『真・白式』相手に持久戦を行うが格段に燃費が向上しているので目論見通りには行かず、最終的には「雪片夏之型」の高出力形態での剛の剣を向けられてしまった。その教員も『打鉄・黒鋼カスタム』の教員仕様を使用していたので大型のシールドを二つで受け止めようとしたのが……それすら弾き飛ばしながら炸裂した一撃を受けた壁へと叩きつけてしまい、そのままSEが尽きてしまったという。

 

『え、えっと……打鉄・黒鋼カスタムSEエンプティ、えっと織斑の勝利で合格です……えっと織斑君?』

「はい山田先生、何か?」

『後で先輩に怒られてくださいねっ♪』

「なんでぇ!!?」

 

一夏も無事に実技試験を合格する事が出来たのだが……一切の自重をせずというか本人からしたら教員は明らかに格上なのでそれならば全力で挑まなければいけないと思い、高出力形態での剛の剣を使ったのだが……それを受けた『打鉄・黒鋼カスタム』は大型のシールドが完全に逝かれてしまっており、機体にも大きな負荷がかかってしまいオーバーホールを行わなければいけない事態になってしまったのである。一応千冬から自重しろっと言われていたのだが……新生した白式は一夏の予想以上にとんでもない機体へとなってしまったのである。

 

「お前な……だから全力でやるのはやめとけって言ったのに」

「だって相手先生だからさ、俺より強いんだから全力で行かないとって思って……」

「それは間違ってないかもしれないけど、お前の剛の剣と「雪片夏之型」の組み合わせがどんだけやばいかは束さんから言われてるだろ。お前と戦ったISコア、号泣して俺に泣きついてきたぞさっき」

「……大変、申し訳ございません……」




妻「これは、一夏が悪い……のですかね?」

私「あ~っ……まあ一夏の言い分もわかるから半々じゃね?」

妻「それに全力全壊って……どこの魔王様ですか」

私「まあ同じ中の人が作った機体ですし」

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