「お前たちに負けてから俺たちは生徒会長製作の特別メニューを必死にこなしてきた。それも全て勝つ為に……絶対に俺達は負けない!!あのときよりもずっと強くなってるんだからな!!!」
「んで誰が最初にやるよ?」
「別に誰でもいいんじゃねぇの、くじ引きかじゃんけんで決めたらいいよ」
「おい話聞けよ!!?」
目の前で何やらごちゃごちゃ言っている並行世界の織斑の言葉なんて眼中にないのか完全に二人だけで会話を成立させているカミツレと一夏。束が再び装置を作動させて繋がった平行世界との繋がりによって向こう側の一夏達が此方側の世界へとやって来た、そして来て早々に言った言葉がこれである。他のメンバーは後ほど来ると言うことらしい。
「いやだって別段ぶっちゃけお前らと戦おうと別に俺たちからしたら別にどうでもいいしな」
「だよな……負けるのはまあ嫌だけど、負けてからこそ良い事ってあるもんな」
「負けても良い事があるわけ無いだろ!?俺たちが負けてどんな気持ちだったか分かるか!?」
「「知らね」」
反論するかのように声を荒げる織斑だが、肝心の二人は完全にそれを受け流している。正直彼らはもっと格上と頻繁に戦っている上にそれで負け続けている。故に敗北の重要性は知っているので目の前の彼らの気持ちを理解するつもりは端からない。そんな風にカミツレと一夏が冷たくあしらっている一方で平行世界の自分達を目にした箒と鈴は何処か複雑そうな視線を向けているのであった。
「お前が向こう側の私か……矢張り同じなのだな」
「何が同じだ、私とお前は全くの別人だ。同じにされるなど心外この上ない」
「同感。何よそれでもあたしなの?」
箒と鈴が向こう側の自分を否定する中で乱は向こう側には自分がいない事に少々ショックと安心を覚えつつも二人の意見に同調する。こうして比較するかのように見てみると向こう側の二人は子供っぽいという印象を強く受ける上にそれほど強くなさそうと言う印象がある。
「というかなんでそっちの箒は専用機を持ってるのよ、代表候補生にでもなってるの?」
「えっいやそれは……」
「おいなんで言い淀むんだ。まさか……姉さんに専用機を強請ったとかいうのではなかろうな」
箒がそう睨むように問いかけてみるが向こう側の箒は口を一文字にして黙り込んで顔を反らしてしまった。それを見て全てを悟ったのか箒は大きな溜息を吐きながらこれが同じ存在だという事に頭を痛めてしまった、何を考えているのだろうかと。そんな箒を励ますかのように鈴と乱が背中を擦るのであった。
「あのな……専用機を何だと思っているんだ。単なる力の証明とでも思っているのならばお門違いだ、専用機は苦難を突破し国に認められた者が持つ事を許されたISなのだぞ。それを姉さんに強請って作って貰っただと……?恥を知れ、呆れて物も言えん」
「ぐっ……だ、だが私は既に専用機を持つに相応しい力を持っているのだ。何の問題もない!!」
胸を張りながら痛い視線から逃れるように逃れるように笑うもう一人の自分に呆れつつも思わず向こう側の束へと視線を向けた。
「そちらの姉さんもなんで作っちゃったんですか……世界的な問題にしかなりませんよ」
「いやぁ……その、束さんとしても箒ちゃんには迷惑とかいっぱい掛けちゃったし少しでも償いって奴を……したくてそれでちょうど箒ちゃんがISを欲しいって言うからそれで……」
「はぁっ……だからと言って簡単にISを与えるなんて駄目ですよ。償いたいならもっと別の方法があるでしょうに」
と別世界の妹に説教をされる束は思わず小さくなりながら正座して大人しくそれを聞いて恐縮していた。
「ねえそっちのあたし、そっちの箒って博士と仲良いの?」
「そりゃいいわよ、一緒にご飯食べたりゲームしたりこの前なんて束さんは変装してだったけど一緒に買い物だってしてたのよ」
「い、一緒に買い物だと!!?私が姉さんとか!!?」
「……よくもまあそんなに驚くレベルで仲が良くないのに専用機強請ったわね」
「お姉ちゃん私知ってるよ、こういうのを厚顔無恥って言うのよね」
「ぐはぁっ……」
乱の言葉を深々と胸に受けながら膝をつく箒だが正にその通りなので何も言えなくなってしまう。
「んでそっちのあたしってどん位強いのよ」
「中国の麒麟児って言われる位には強いわよ、アンタもその位言われてるんでしょ?」
「き、麒麟児って何よそれ。私言われた事なんて一回もないわよ……?」
「えっ嘘でしょ?」
と思わず乱が口にしてしまった。此方側では鈴は有名どころか世界的に認知されている人物と言ってもいい。何せ次期中国国家代表に真っ先に名前が上がる人物なのだから。そうでなくても0からISの道に入ってたった数年で結果を出した麒麟児として呼ばれている筈なのに向こう側では言われていないらしい。
「し、信じられない……何そっちの世界って節穴ばっかりなの?」
「ま、まあ世界が違えば常識が違うって言うし別に気にしてないわようん……」
「いや十分過ぎるぐらいに気にしてるでしょお姉ちゃん……?」
「だって麒麟児って気に入ってるフレーズだったから……」
彼女としても麒麟児と言うのは誇りであった。自らが研磨して来た技術と力の結果であった筈なのに向こうも同じである筈なのに何も騒がれていないというのはややショックを受ける物であった。
「んで結局誰が最初にやるんだよ」
「カミツレに一夏、あたしが最初にやらせてもらっても良いかしら……向こうのあたしの力を確かめさせて欲しいのよ」
「鈴、なんか苛立ってる?」
「別にっ……ただなんか……イライラしてる!!」
「それを苛立ってるって言うんだけどお姉ちゃん……」
私「あ~あ、遂に2月だよ……」
妻「間も無くやってくるバレンタイン、お楽しみに!!」
私「なんか凄い嫌な予感するんだけどなんで?」
妻「そりゃ勿論……その日は私がプレゼントを送るからですよ……?」
私「あの、凄い怖いです……」