IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第303話 特別編6:その3

「な、なぁそっちの鈴ってそんなに凄いのか?」

「話の流れからある程度汲み取れたが……世界的に有名なのか?」

 

鈴の圧倒的なオーラに気圧されながらも織斑と篠ノ之がカミツレと一夏にそう尋ねてくる。既に肝心の鈴らは束製の特設稼動実験アリーナに飛び出す為のピットにて試合の準備を行っている。鈴としても向こう側の自分の力が気になる、向こうとしてもあれだけ特訓したのだから此方側と戦ってみたいという利害が一致しているので成立している。そんな二人に聞く事が出来ないので一夏とカミツレに聞いてみたのだが、二人は何を言っているんだと言いたげな視線を向ける。

 

「いや当たり前だろ。鈴は中学の時に中国に戻ってそれでISを0から勉強して代表候補生に登り詰めてるんだぞ?これがどんだけ凄いのか分からねぇの?」

「いや凄い程度にしか……」

「……やばいカミツレ、なんか俺昔の自分をマジマジと見せ付けられる感じがして頭痛くなってきた……。俺、昔はこんな風にお前に絡んでたんだな……マジですんませんでした」

「いやぁ懐かしいな……なんか殺意沸いてきたわ。おい一夏スピードロップさせろ」

「マジで勘弁してください!!」

 

冗談だ、もう気にしてねぇよっと言われるまで数歩後ろに飛び退いて土下座をする一夏はその言葉に漸く安心して立ち上がりながら話を続ける。

 

「ああっ命拾いした……んでまあ続けるけどよ、代表候補になるって事は国に認められるって事だぞ。ISコアの数は限られている上にそれを目指す人間なんて幾らでもいるし、専門的な知識をずっと勉強してた連中だって居る。それなのに0の状態から初めてたった数年で形にしてるんだぞ。世界的に見て化け物だろ」

「まあ最年少記録はアタシが塗り替えましたけどね!!台湾でだけど」

「そうそう乱ちゃんも凄いよ~」

「えへへっ~♪」

「あ~……まあそう言うことだ。数年で結果を出すなんてぶっちゃけとんでもない、それが世界的な評価を受けないなんて可笑しい。アニメの主人公並の設定をやってるって思えばいい」

 

そう言われて織斑は改めて鈴の異常さとその凄さを理解した。自分はISを使える男性だからと言う理由だけで専用機を渡されているのだが、鈴はそれを自力で掴み取っている。中には英才教育などを施された上流階級の出までいただろう。それらを自らの才能を努力で研磨するだけで追い抜かしているのだから。

 

「鈴って、そんなに凄かったのか……」

「考えたこともなかった……」

「「「お前らどんだけ考えないの?」」」

「「辛辣っ!!?」」

 

 

「はぁぁぁぁぁっっっ……アンタさぁ世界的に見ても自分の行いが凄いって思わなかったわけ?」

「思わなかったわよ、だってやる事なかったし色々あって全部のエネルギーぶつけようとした結果だもん」

「アンタは何処のカミツレよ。自分を客観的に評価出来るようにするのも必要なのよ」

 

何処からか俺は関係ないだろっという言葉が飛んでくるのだがそれをスルーしつつ鈴はもう一つの世界の自分と相対していた。どうやらISにも違いはなく同じく「甲龍」であった。違いなどは一切ないのを見ると何故自分の評価が正当にされて居ないのかとすら思えて何処か泣きそうになってしまう。まあ自分が完全な規格外だと理解していないカミツレ(あれ)よりはマシだと自分を励ましておく事にしよう、というかそうしないとマジで気落ちしそう。

 

「んでさ一つ聞いていいかしら」

「なによ」

「そっちの一夏って、そのどんな感じなの?」

 

そう言いながら此方に問い掛けて来る鈴音は何処か頬を赤くして恋する乙女な空気を発散させているのを見て、鈴はうわぁ……と言いたげな表情を作りながら全てを察してしまった。成程そちら側の自分はまだあれに惚れている状態なのかと。ハッキリ言って今の自分は一夏に対して何も思っていない、恋愛的な感情はなく友人としての関係を保っている。なのでどう答えるべきなのか分からないが、取り敢えずお茶を濁す事にした。

 

「んな事聞いたって無駄よ。そっちとこっちじゃ全てが違う、聞いた所で比較して嫌になるだけよ」

「そうかもしれないけど気になるじゃない」

「気になんだったらどうせこの後戦うんだから、その時に自分で判断なさいよ」

 

まだ戦ってもいないのに何処か気疲れを起こしている鈴は肩を落としながら顔を上げて異世界の自分を見つめる。さて、向こうはどれ程に強いのか……自分の手で確かめてみるとしよう。

 

『あ~マイクのテスト中~……よしよし。んじゃ始めるよ、制限時間は30分位で。んじゃ……試合開始!!』

「んじゃ……行くわよそっちのアタシぃ!!」

 

束からの開始の合図を受けて鈴音が一気に飛び出すかのようにやってくる。その手に双天牙月を握りながら距離をつめながら迫ってくるそれを見つめながら鈴は目立った動きを見せる事もなく、振り下ろされてくる攻撃などを簡単な体捌きだけで躱していく。

 

「ちぃっ!!」

 

速度の乗った攻撃のラッシュを立て続けに回避されていく。流石自分、癖や攻撃のパターンなども全てがバレているのだから回避されるのも当然かと思いながらも舌を巻く。それでも今の自分に出来るそれを必死にやりながら牙を尖らせて行く。自分だってカミツレに負けてから必死に鍛錬を積んできてレベルアップしている、例え相手が別世界の自分だろうと牙は届くと信じて疑わなかった。そして遂にその一撃が炸裂し口角を上げるがそれは即座に打ち消された。

 

「なっ……嘘でしょ……!?」

「……なんて雑な太刀筋」

 

同時に襲い掛かった二筋の刃を鈴は全く同時に刃を止めるかのように受け止めていた。彼女にとってはこの程度容易い、もっと激しく一撃一撃が重い剣を振るってくる相手をしてきたしもっと鋭い武器捌きと選択をする者と戦ってきたのだから。この程度は簡単な事だったがそれを成して生まれたのは溜息だけだった。

 

「何これ、駄々っ子が滅多矢鱈に棒を振る回してるだけみたいじゃない」

「何、ですって……!?」

「力任せではないみたいだけど技術が足りないわ。洗練されてない剣は唯の棒振りよ」

 

そう吐き捨てると衝撃砲を起動しそれをぶつける、その拍子に鈴音は両手から双天牙月を手放してしまった。鈴はそれを手早く手に取ると素早く投げ付けて鈴音の「甲龍」の衝撃砲を破壊する。

 

「う、嘘でしょ!!?」

「身体が流れてる、意識が雑、技術も足りてない。アンタ本当にアタシなの?いえ違うわね、アンタは私じゃない」

 

鈴は"超速零速"を発動し相手の頭上を取るとそのまま踵落しを決めながら鈴音を地面へと叩き落しながら、その身体に自らの双天牙月を突き付けながら言う。

 

「ちょっと努力したぐらいで図に乗るんじゃないわよ、アンタがしてきた努力なんて……あたしがしてきた物に比べたら屁みたいなもんなのよ」

 

そう言いながら鈴は自らの太刀筋を見せ付けるかのように双天牙月を振るった。それによって鈴音の「甲龍」は大きな傷を負いながら絶対防御を発動させて一気にSEを枯渇させて行った。そして止めと言わんばかりに振るわれた一撃によって容易く鈴音は敗北した。

 

「はぁっ……あたしも餓鬼ね。もっと大人にならないと」

 

撃破されて呆然と此方を見つめている向こう側の自分を一瞥しながら自分を戒める。もっと冷静に物事を考えて行動出来るようにしないといけない、でないと上へはいけない。大人になると言うことはそう言う事なんだと思いながらピットへと鈴は「甲龍」を走らせる。




妻「つよっいやまあ設定的にはある意味準拠してますよね」

私「それ以上止めておこう、原作罵倒で終わる」

妻「いやだって原作よりも二次の方がずっと面白―――」

私「ストップストーップ!!!ストップしてくれたらあれをするのになぁ~!!」

妻「やめますでは……その代わりに、新しい衣装の試着を!!」

私「……因みに何の衣装?」

妻「プラダマンテです!!」

私「衣装というか最早水着の域じゃないかそれって……?」

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