IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第307話 特別編6:その7

「お帰り箒。快勝だったな」

「何、一夏と義兄さんと比べたらあんなの雑魚だ。単純な回復能力だけなら楽な物だからな」

 

戻ってきた箒に労いの言葉を掛ける一夏に箒はそれを受け取りながら大した事はしていないと謙虚な物言いをしながら篠ノ之の評価を下している。これで相手が凄まじい実力ならば回復能力はえぐい事になるかもしれないが、正直言って篠ノ之は其処までの腕前とは言い難い。機体の性能に頼り切ってしまっているような印象が強く受けてしまった。

 

「確かに機動性や出力は申し分ない。実際私も押し込まれてはいた、だがその程度で負けてしまう程度では一夏や義兄さんの相手は務まらん。それに機動面で言ったら義兄さんの方が確実にやばいからな」

「うんそれは思うわ。だってカミツレの動きってマジで緩急の付け方が上手すぎて逆に撃っていいのか迷うんだよな、それで急激に反転して迫ってきたと思ったら旋回して離脱したりする」

「ホントよ。あたしでも取り逃がす事が多いからついつい熱くなるのよねカミツレとやると」

「アタシはカウンターでなんとか対処するって感じかなぁ……カミツレさんの機動はなんとなく読めるから後は直感で何とかしてる」

「よくあれを直感で何とか出来るな……」

 

そんなやりとりをしていると向こう側の篠ノ之が戻ってきた。あれだけ大口を叩いておきながらの惨敗ゆえに何かしら思う所があるのか、彼女は黙り込んでいる。織斑もどんな言葉を掛けていいのか分からずにしていると篠ノ之は箒へと向けて言葉を紡ぎだした。

 

「何故、だ……何故、そんなに強いのに専用機を、お前は欲しいとは思わない……?」

 

そう、聞いた。何故自分と同じように専用機を持とうとしないのか。恐らく束は箒がそう言えば条件こそ出すだろうが作りはするだろう、それを持てば名実共に一夏の隣に居る事が出来るはずなのにそれを全くしようとはしない。それどころか欲しいと思ったことすらないと言ってのける自分が信じられないが故の疑問だった。

 

「お前が「紅椿」を使っていれば恐らく100%の性能を引き出していることだろう、それならば間違いなく……」

「いらん。私には荷が重過ぎる」

「何故だ……!?」

「私は身軽でいた方が良いだろう。既に姉さんの家族というので十分な重荷を背負っているからな」

「いやぁ本当にご迷惑掛けてますはい……」

 

と束が謝罪するが箒は既に束を許しており、それの事はまあ良いと置き直した。

 

「私は共に歩むだけではなく支える事を選んだ。その為には他に幾らでも選択肢がある、それを選択して私は手に取っているだけだ。お前とて今からその道を選択する事は可能かもしれんぞ、じっくり考えてみると良いさ。そうしてみれば面白い道を歩めるぞ」

 

そう言ってもう一人の自分の肩を叩いて一夏へと自分の戦い方の感想を聞きに行く。そんなもう一人の自分を呆然と見送った篠ノ之はその言葉を聞きながら、隣に居る為には専用機など要らない。他にも手段があるのか……?と思いながらもう一度専用機を見つめながらこれから自分はどうするべきなのかを見つめる事にした。向こう側の自分、あんな自分になりたいが為に。

 

「さてと……んじゃ次は俺か、なあそっちの俺」

 

不敵な笑みを浮かべながら視線を巡らせた一夏は向こう側の自分を見つめる。そこにあるのは何かを抱えているかのような覚悟のある男の目。

 

「ああ、分かってるさ。まずはお前とのリベンジだ、そっちの俺!!俺がどれだけ努力したかを見せ付けてやる!!!」

「へぇっそう言えばなんか特訓してたとかすげぇごちゃごちゃ言ってたな」

「あ~そう言えば……言ってたな」

「どんな感じの奴をやってたのよ」

 

向こう側からやって来た途端に勝負だ!と言ってきた時に特訓をしてきたやらの発言を完全に流していた特訓発言に言及することにした。カミツレ達としてもヨランドのあの特訓を超えて来た身、異世界の特訓はどの程度の物なのかと気になっていた。織斑は自分達が乗り越えてきたと豪語する訓練メニューを高らかに言って行く、内容としては代表候補生が行う物に向こう側の楯無がアレンジを加えつつも密度を増して行った物。数時間の機動訓練やら組み手や技術訓練などを行ってきたと言ってくる。

 

「あ~……まあ頑張ってきたとは思うけどさ、なんかそれって温くね?」

「それで猛特訓とか何、ギャグ?」

「「「えっ?」」」

 

と思わずカミツレが真顔でそう聞いてしまった。そんな言葉を聞いた織斑、篠ノ之、凰は凍りついた。彼らとて必死にその特訓に取り組んできたのは事実だろう。珍しく織斑への取り合いも余り起こらずに互いに協力して必死に訓練をつんできた、だからこそ強くなったと自信を持って言える。―――が、カミツレからしたらそんなメニューが猛特訓と言うのは冗談というかギャグにしか聞こえなかった。

 

「えっマジでそれで猛特訓とか何、舐めてんの?なんで俺が今までやって来たヨランドさんのメニューよりも軽いんだよ、可笑しいだろ。何、世界が違うとそういう常識まで変わってくるの」

「お、おいカミツレマジで落ち着け。目が、目が据わってるぞ!!?」

「スロットルを最低でも70分割、高機動に置ける細かな機体の角度や旋回の速度、あらゆる点を俺突っ込まれてたんだぞ。それなのにそれで猛特訓……?なんなんだよこの差はぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「カミツレさん落ち着いて!!?アタシが付いてますから!!」

「あんた、本当に昔から苦労してたのね……そりゃ強くなる訳だわ」

「てめぇらよくもカミツレのトラウマスイッチと言うか、そういう系を刺激しやがったな!!おいそっちの俺、覚悟しろ!!」

「ちょっと待って超理不尽な八つ当たりしようとしてないか!!?」




私「カミツレはまあうん……大体ヨランドさんのせいだから」

妻「向こうも一応頑張ってたんでしょうが、ヨランドさんの訓練は通常でそれ以上ですからね……」

私「カミツレ、怒りの慟哭」

妻「流石の私もこれには同情」
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