IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第317話

OV-OV-OVER!!

「ひとっ走り、付き合えよっ!!」

 

真紅の装甲に煌めくライダークレスト。軽いポーズを取ったのちに走り出していくそれは一気に加速していきながら即座に赤い残像へとなりながらも設置されている標的を寸分違わずに粉砕しながらも複雑かつ美しい軌道を取りながらも空中を舞う。赤い残像を目で追うだけで精一杯な速度を出しながらもそれは着地する、手袋を治すようなしぐさをしながらも自らが破壊した標的を見ながら首を鳴らす。

 

「カチドキ、評価は」

『前回よりもタイムが0.4秒上昇しています、間違いなく成長してしますね』

「0.4秒か……モンハンとかやってると全然短いどころか長く感じるな」

『フレーム回避余裕でした、ってやつですね』

 

頭部のマスクが解放されるかのように表情が露わになる、一息つくカミツレの姿がある。本来専用機を持つIS操縦者の夏休みというのはISのデータ取りや新しい武装やシステム面でのチェックなどに追われていく。特にカミツレの場合は二次移行を行っているISの操縦者、それは必須だろうが政府はそれを特には急かす事もなかった。彼の隣にいる女性らの事を懸念しているのか、それともリオノーラが提出しているデータで満足しているのかは分からないがカミツレはかなりのんびりと過ごしている。

 

がそれでも訓練をしないという理由にならない、ピアノは一日休めばそれを取り戻すのに半日は掛かるという。それに加えてからも休む事は構わないが訓練をサボる事だけはしていけないと教えを乞う時に強く言われているからサボるつもりもない。一日サボれば自分に分かり、二日サボれば家族に分かり、三日サボれば皆に分かる。それを意識してカミツレは何時の間にか束が杉山ファーム地下に建設していた訓練場で訓練に勤しんでいた。

 

「にしても何時の間に作ったんだよ束さん」

『まあお母さまですから』

「その言葉の説得力は卑怯」

『そうだ、お母様が作った模擬専用の自立機動機があります。お母様も実働データは欲しいでしょうから使ってみませんか?』

「ふむっ……面白そうだな、よし出してくれ。面白そうなやつ頼むぜ」

『アイアイサー』

 

そういうと即座に隔壁の一部が解放されていく、そこからゆっくりと歩き出してくる影があったのだがそれを見た瞬間にカミツレは噴出した。骨を思わせる白と黒を基調とした左右非対称の装甲、左目の水色のオッドアイ。それらは死霊とも言うべき禍々しい姿をしている……というかまんまそれは

 

「ゲンムのゾンビアクションゲーマーじゃねぇか!!?」

『だって面白そうな奴っていったじゃないですか』

「誰がビジュアル面と中身で面白い奴つったぁ!?」

 

そう、件の自立機動機の見た目は完全に神でお馴染みである檀 黎斗が変身する仮面ライダーゲンム ゾンビゲーマーなのである。しかもご丁寧に腰には『MIGHTY ACTION X』『DANGEROUS ZOMBIE』が刺さっていると思われるゲーマードライバーが巻かれているのである。なんという無駄な再現度……しかも何処か歩き方が本家ゲンムっぽいのが妙に腹立つ。

 

「はぁぁっ……んであれ、ダメージ無効とか再現されてないよな」

『流石にそれは無理でしたので、SEが0になると自動的に回復するようになってます』

「ある種再現してるじゃねぇか……」

 

ため息混じりになりながらも構えを取ると相手も構えを取るが、本家宜しくの不気味な挙動に笑いそうになる。そんな気を正しながらスピードを生かして一気に距離を詰めていく。スピードを乗せたブレードの一閃を繰り出すがそれは予知していたと言わんばかりにバク転で躱しながら、カウンターで顎を抉るのようなアーパーカットを決めてくる。

 

「ッの野郎!!」

 

それに少し舌打ちをしながらも身体をひねった回し蹴りを炸裂させてゲンムを吹き飛ばすが、空中で制動を掛けながら殴りかかってくる。見た目がゲンムなだけでIS通りの機動に違和感を覚えつつも冷静に対応しながら今度はお返しと言わんばかりに渾身のアッパーを決める。

 

「さっさと決めるぞ、カチドキ!!」

ヒッサーツ!FULL THROTTLE!! OVER!!

「はぁぁぁっっっっ……セイヤァァアアアアア!!!!!」

 

吹き飛ばしたゲンムを追うかのようにカチドキは各部から光を放出しながら一気にトップスピードを発揮しながら、閃光となりながらも全方位からゲンムへと降り注いでく矢となって抉っていく。過去の物よりも遥かに強力で数も多いそれを受けてゲンムのSEは一気に削られていく。そして尽きたと思いきや回復するのだがそれすら許さないレベルで新たな蹴りがそれすら葬っていく。それらを受けたゲンムは地面に叩きつけられながら、ようやく動きを止めた。前もって設定された回復用のエネルギーが底をついたらしい、それを見てカミツレは顔を出しながら息を吐く。

 

「はぁっ……漸く止まった……というかなんだよ、相当蹴り込んで漸く撃破扱いってどんだけ回復するんだよ」

『回復を含めた総SE量は通常のIS7機分ですからね……そりゃ全方位から蹴りこまないと倒れませんよ』

「おいカチドキ、他にもライダーモチーフというかまんまな自立機動型ってあんのか……?」

『そりゃありますよ。お母様が私たちの要望を聞いて作ってくれたんですよ、それを私たちが動かして偶に戦ったりもしてますよ』

「……」

 

これは母親がしっかりと子供とコミュニケーションをとっていると解釈して喜ぶべきなのか、それとも与え過ぎだと怒るべきなのかと酷く困惑する約500人の子供の父親の自覚を持つカミツレパパなのであった。




妻「実際変身するなら何のライダーが良いですか?」

私「えっ~……?ドライブの超デッドヒートもいいけど、オーズもいいなぁ」

妻「私はナイトかアクセルですね」

私「俺も好きな奴だなそれ」

妻「そうですね、共通ですわね。共通繋がりで私の衣装づくり手伝ってくださいね♪」

私「毎度毎度言うけどさ、なんで俺が手伝うのよ。主に試着を」

妻「私が着るより似合うからです」

私「こんな風になった自分を恨むよ……」

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