IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第320話

「はぁっ!?代表候補らとの練習試合だぁ!!?おいカミツレなんだよそれ!?」

「俺に言ったってしゃあねぇだろ。今朝イギリスの政府からそういう要請が来たんだよ、後確り剥け」

 

カミツレと一夏は縁側に腰掛けながら採れたての大根のかつら剥きを行っていた最中にカミツレが呟いたことに一夏は激しく反応した。

 

「だからってなんでそんな要請が来るんだ?」

「まあっ俺はイギリスの代表候補だ、その力を見せつけろっていうのと二次移行したISを見せ付ける事が目的だな。俺は色んな意味で貴重すぎる存在だからな」

「束さん的な意味でもか?」

「それもある」

 

政府からは是非受けて欲しいという言葉も添えられて届けられた要請、自分がイギリスにいるタイミングを見ての要請に少し怪訝になりつつもリチャードに連絡を取りこの事を相談するとこれは政府の要請、というよりも政府に寄せられた要請といった方が正しいらしい。ヨーロッパの各国からデータの開示やら接触などをほぼ毎日寄せられ続けている政府、ハッキリ言ってしまえばそれが嫌になってきたから機会を作ってやるから煩くいうんじゃねぇよ、という事らしい。

 

「つまり……カミツレが原因って事か」

「なんか気分良くないけどな。でも正直そんなことするぐらいだったらもうヨランドさんとの試合をやった方が有益なんじゃねぇかなって思うわ。俺的にも政府的にも」

「ああっ確かにな」

 

カミツレとしてはそのような事情ならばやる事自体は吝かではない、だがせめて戦う相手は戦い甲斐がある相手、手強い相手を要求したい。その方が自分としても価値を見出せるし政府的にもデータもおいしいし自分の価値をアピールできる。それだったらもういっその事まもなくやってくるヨランドと戦った方が良いだろうとすら思える。個人的には師匠の一人である彼女に自分の成長を見て欲しいというのもある。

 

「んでそれって俺も出て良い感じなのか?」

「政府としての見解はどちらでもいいというのが素直な反応だな。そうだな、YESとNOでお前に向けられるものが変わるって感じだろうな」

「どんな感じに?」

 

一本の大根のかつら剥きが終わったのかまた新しく一本を取り、包丁の刃を当てながらカミツレはそうだなといいながら答えていく。

 

「YESと答えた場合はイギリス政府とお前の関係性を強く見せられる、つまりお前もイギリスの代表候補になる事を考えているという事を印象付けられる。元々俺と千冬さんとかの関係を考えると当たり前だろうが、それより濃厚になるって感じだな」

「まあっ現状で言えばイギリスの代表候補性が一番魅力的に思えるからなぁ……というか他国に旨味が無さすぎるっていうのがあるけど」

「束さんと千冬さんが居る時点で他国にあると思ってんのか」

「うんにゃ」

 

一夏も漸く一本目が終わったのか二本目に入り始めた所で続きが入る。

 

「んでNOの場合はその逆だな。その場合は他国も自分達にもチャンスがあると思う訳でよりアプローチが積極的になるって感じだろうな、今まで以上に鬱陶しくなるって事」

「げぇっなんだよそれ……受けた方が100パーいいじゃねぇかよ」

「そういう事だな。お前もさっさとイギリスの代表候補になるか?」

「う~ん……リオノーラさんも良い人だしなぁ~それもありだな……今夜辺りにでも千冬姉に真剣に相談するかな」

「今日はやめとけ。爺ちゃんたちと飲むらしいから」

「マジかよ」

 

そんな相談という言い方をしてはいるが彼の心の中ではほぼ100%でイギリスの代表候補になる事を決めているようなものである。イギリスには義兄であるカミツレも千冬も、恋人である箒の姉である束もいる。それに自分の家族になってくれると言ってくれたカミツレの家族もいる。寧ろイギリス以外に決めるメリットが無さすぎる。特に専用機の調整やらの事を考えると束さえも認める鬼才のリオノーラがいるイギリスに所属する事が非常に好ましい。

 

「まあ俺も出るか……というかな、そういう話をされたら出るしかねぇじゃねえか。選択肢なんてあってないようなもんじゃねぇか」

「ハッハッハッ貴様も道連れだ」

「外道め……というかよ、一体何本かつら剥きすればいいんだこれ……」

 

視線を変えてみればザルの上に乗せられている無数の大根。これらを全てかつら剥きにするというのだから一体後どれだけの時間がかかるのだろうかと思わず一夏も汗をにじませる。一通りの料理が出来る上にその料理の腕前も中々な一夏でも流石に困る量。しかも質がいいのか大根が重いのでかつら剥きにするのも一苦労なのである。

 

「そもそもお前が料理上達したいっていうから大根をやってんだぞ、包丁を上手く使うのも料理の上達だ」

「いやそりゃそうかもしれないけどさ……というかなんでカミツレはそんな簡単に出来てんだよ」

「年季がちげぇんだよ。農家の子供を舐めんな」

 

カミツレは小さい頃から家の手伝いとしての料理もやってきた、その中で当然包丁も沢山扱ってきた。文字通りの年季の差という奴である。一夏も一応かつら剥きは出来る事には出来るが、カミツレの物と比べると大根は厚く剥けてしまっている。

 

「これに関してはコツも何もねぇ、手の使い方を手に覚えこませるしか上達のコツはねぇな。一本の大根から3メートル剥けたら一人前だ」

「うへぇっ……料理の道もISの操縦も数をこなすしかないか……自分で言いだしたんだからやるか。因みにこれってこの後何の料理にするんだ?」

「サラダが王道だな。他にはイカと合わせての煮付けとかステーキも乙だな、まあ食う人数も多いから無駄口はここまでだ。まだまだ本数はあるからな」

「へ~い」

 

因みに大根は合計で25本あったが、その内一夏が出来たのは5本で殆どはカミツレがやったのであった。

 

「手と腕が……カミツレの家の大根重すぎじゃね……?」

「そうかな、他のところのが軽すぎるんだよ」

「……これがエリート農家の家に生まれた人間か……」




私「爺ちゃんの家でよくやったなぁ……」

妻「私なんか2メートルしか出来ないんですけど……」

私「フッまだまだだな」

妻「貴方の家事力というか女子力が高すぎるんです、なんですか今日の献立。ロールキャベツにミネストローネ、オムレツにカプレーゼって」

私「(仕込みから自分で全部やった)あれっ口に合わなかった?」

妻「おいしかったですけど……女として負けた感じ……」

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