IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第321話

「……魅力感じませんね」

『いやそうかな、私としては十分に技量はあると判断できると思うんだが……』

「動きがマニュアルすぎます。これだったら死角から軽く揺さぶりをかけるだけで全体の動きが崩壊して落とされますよ。俺ならそうしますね」

『厳しいな……流石はあのヨランド代表に鍛えられているだけはある』

 

カミツレは自室にてとある人物との通信を行っていた。それは度々お世話になっている大貴族であるリチャード。今回カミツレが承諾した代表候補生との練習試合のセッティングに関する事を一部担当する事になったリチャードだが、そんな彼がカミツレに連絡をよこしたのは試合を行う相手についての連絡だった。折角戦うのだから参加する国の中でも有力な人物をリストアップしたつもりなのだが……それら全てにカミツレはダメ出しを行っていた。力量としては悪くはない、だがこっちとしては国の我儘を受け入れてやるんだからやり応えがある人を出してほしいという要求を出しているのだが、どれもカミツレ的には満足いかないものばかりだった。

 

「一番マシなのがフランスの代表候補生ですけど、なんですかこれ。殆どがヨランドさんのデッドコピーじゃないですか。大した実力もない癖にあの人の戦法を真似るとか舐めてるんですかこいつら」

『直接的に指導を受けているのが彼女らだからね……似るのは仕方ないとも思えるが』

「いや参考にするのは良いと思いますよ。最初から自分のスタイルを追求するのは凄いセンスと才能が要りますから、下手に我流にやるより余程良い事です」

 

カミツレとて否定するわけではない。自分だって最初は真耶の教え通りに成長してきたのだ、途中から自分でこうしたらいいんじゃないか?っという提案もしたがそれも真耶がもう少し成長してからの方が良いという言葉を受けて素直に従っていた。今では自分流の戦い方を追求しているがその基礎には師匠達の教えがある。

 

「だけど彼女らはそれを軸にして自分のオリジナルを一切しようとしない、全部超劣化ヨランドさんです。こいつら見てると昔の一夏思い出しますね」

『……そこまで酷いかね?』

「100点中20点もいきませんね。多分ヨランドさんも敢えて指摘してませんね。それで気付けば良し、気付かなければそこまでとして切り捨てるでしょう」

 

後にこれをカミツレはヨランドに尋ねるのだが、正しくその通りであったらしい。彼女らは自分の弟子としては及第点ではある、ここから開花するかそのまま萎れるかに分岐していく物。何時までも自分の真似をするのであれば何れ指導を完全に打ち切るつもりでいる、彼女がカミツレに喜んで指導をする理由の一つ、彼自身の自主性の高さにある。

 

目の前に極上の参考があるのは分かる。だがそれを完全にコピーするつもりであるならばそれは自分を量産するだけ。だが彼女らはヨランドではない、よって生まれるのは動きや戦法を真似ているだけの操縦者。自分の動きも出来ないのであれば教える事などないと打ち切ると断言する、とヨランドは語る。

 

「これならいっその事、ヨランドさんに相手してくれるように要請してくださいよ。それだったら俺は喜んでやりますよ」

『と言ってもなぁ……それは政府にもコンタクトを取らないと……』

「俺の方からヨランドさんに頼みましょうか、多分二つ返事でOKくれると思いますけど」

『う、う~ん……そ、それじゃあ頼むよ、それならやる気出るんだろう?』

「当然ですよ。リベンジを兼ねて」

『やれやれ、元々政府の我儘で試合に出てくれと言っていたんだからこの位は飲むとしよう。政府への連絡やら調整はこちらでやっておこう』

 

そういってリチャードは肩を竦めながらもその代わり良い試合を頼むよとウィンクをしてくる。

 

「当然ですよ、ヨランドさんと戦えるんだから全身全霊で挑みますよ」

『ではそうしてくれ。後ドイツについては候補生ではなく軍人が相手になるという話だが大丈夫かい?』

「軍人ですか……余程のことがない限り、千冬さんかヨランドさんよりマシでしょ?」

『そう言える人間は多分君だけだな……いやまあ実際あの二人よりはマシだとは思うけど……』

 

近接戦では振るわれたブレードを切っ先で押しとどめて切り返す事を行える千冬、四丁の銃をジャグリングのようにしながらも精密な射撃で弾幕を張るヨランド。そんな彼女らと比べたら軍人なんて楽なものだろうという印象を拭えないカミツレ。世界でも最高峰のIS操縦者なのだからまあそれは致し方ない事だろう。

 

「それでドイツの軍人さんってどんな人なんですか?」

『ああ確か……IS学園にもドイツの軍人の候補生が居るだろう?』

「ああ、ラウラの事ですね」

『そうそう、彼女の副官らしい』

「副官……あれなんか聞いたことがあるようなないような……」

 

思い出すは一夫多妻制度認可条約が世界中に広まってから数日の事、ラウラが一夏へとお見合いの写真をもって来た時。その時に混ざっていた写真に軍服姿の女性がいた。それがラウラの副官、クラリッサ・ハルフォーフ……だった筈。

 

「ラウラの副官か……面白そうですね、ドイツの方はそのままでお願いします」

『了解したよ、なんだい興味があるのかい?』

「ええっ興味はありますよ、興味はね」




私「もう本当にこれからどうしよう」

妻「エボルトでも召喚しますか?」

私「おいバカやめろカオスにしかならないし、かずみんが明らかにグリスになるじゃねぇか」

妻「その場合ってカミツレっていったい何になるんですか?」

私「……ローグ?」

妻「それだと私服のセンスがエライ事に……」

私「いや出さないから!?」

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