「グラララララッ!!!良い飲みっぷりじゃねぇか、それならこの酒は如何だヨランドさんよ」
「これは日本酒ですね、えっとなんと読めば……?」
「純米大吟醸だなって白鯨さんこれって"洗米"じゃないですか!!?凄い貴重な日本酒ですよ!?」
「おうよ、俺の大好物よ。こんな場で出すに相応しい酒だろう」
「こりゃいい酒なんだよなぁ……最近は日本酒のまなかったし、ちょうどいいかもな」
カミツレがヨランドを相手に指名した日の夜の事、漸く到着したヨランドの歓迎の夜会と称して白鯨は千冬とヨランド、そして一海と共に酒を飲み続けている。酒豪だけの酒会は凄い勢いで周囲に酒瓶やらが並べられて次々と空き瓶が量産されて山が積み上げられて行く。愛理も参加したそうにしていたが既に千冬とも飲みまくっているので此処は白鯨に譲って仁志とひっそりゆったりとした飲み会を楽しむらしい。そんな中で一夏とカミツレは……
「おいカミツレそっちのアヒージョまだか!?」
「もうすぐ上がる!!てめぇこそ何時まで野菜刻んでんだっさっさと炒めろボケっ!!」
「んな事言ったって作ったそばから消化されている超ハイペース飲み会なんて体験したことねぇんだぞ!!?」
「おい一夏ぁこの野菜炒め追加だ!!チーズ大盛りで持って来い!!」
「はっはい分かりましたぁっ!!?」
飲み会で出す料理の調理に追われていた。酒豪である事に加えて酒があるととんでもない大食漢と化すのが飲兵衛という奴。様々な料理を肴にしながら酒も加速してどんどん飲んでいく、一夏も休みの日には酒を飲む千冬のツマミを作った経験こそあるが、酒豪数人が集まっての飲み会は未体験だったので大変。前以て作っておいた分も既に完全に食べ尽くされているので汗を流しながら大急ぎで手を動かす。
「はいよっ大根のステーキにタコのアヒージョ、鰹のタタキにカプレーゼお待ち!!鯛の炊き込みご飯ももうすぐ上がりますよ!!」
「おおっ来た来た!!っておいカミツレお前大根の処理雑だぞ、変に焦げてるじゃねぇか」
「うるせぇ糞兄貴!!大体それは俺じゃねぇやったのこれだ!!」
「おう一夏真面目にやれ!!」
「理不尽!!?」
「や、野菜炒めお待ち如何様です!!」
ただただ見ているのは嫌だと乱とセシリアは配膳の手伝いをしている、代表候補生にそんなことをさせるのは忍びないとも思ったカミツレだが食べるメンバーの事を考えたらそんな事は思わなくなった。そんな事よりも今はただただ腕を動かして最高のつまみと料理を仕上げて祖父と婚約者に食べて貰う事だけ、兄は正直どうでもいい。
「それにしてもツェレは料理人としても大成したのではっとこうして料理を食べていると思いますわ」
「ふぅむそれはあるかもな、家庭料理特有の癒し……いやそれだけじゃないな」
「飯屋か……それもありかもな。おい一海、計画に盛り込んどけ。調理人は最悪お前がやれ」
「おいおい爺ちゃんそりゃ勘弁だぜ、俺は土弄ってる方が性に合ってる」
※余談ですが、カミツレはISに乗らなかった場合は日本で小料理屋を実家近くで開いてました。
「しかしヨランド、お前随分と来るのに時間がかかったな。面倒事か?」
「ええまあ…しかしここでいうのは遠慮しておきます。折角のこのお酒と料理の味を落とす事になってしまいますもの」
「何気にするな、うちの孫の料理はその程度じゃ不味くならねぇよ。なったとしたらそれはあいつの腕が落ちただけに過ぎねぇ。つまりあいつのせいだ」
「ちょっとお爺ちゃんそれ流石に冤罪だ!!うしお汁出さないよ!!?」
「おっとそりゃ勘弁だな」
ニヤニヤしながら謝罪する白鯨にったくもう……と軽く拗ねながら調理に戻るカミツレに皆笑いを零す。白鯨はそのまま酒の席に愚痴は付き物、寧ろ愚痴は出せる場所で出すべき。出したらいい案が浮かんで改善する事も出来るから構わないから言えと催促する。そんな白鯨に背中を押されてヨランドは喋る事にした、彼女が遅くなった理由はフランス国内で出ているカミツレの婚約に対する批判などが多かったから。
「正直言ってこれは致し方ないとも思っております、如何にツェレが素晴らしい人材なのか批判している方々は理解を示しておりません。なにも理解していない方々に怒りを覚えるのは哀れでしょう?相応しくないと言われようが私はツェレを愛しております、それは真実です」
「全くだ。そんな奴らなど放っておけばいい」
「ああっそりゃ俺も賛成だな」
「同感だ。何も分からないアホンダラ共は無視に限る」
だがそんな事の為に対応して遅くなった彼女には同情しか沸かない。何も分からない者からすればISの国家代表の婚約者が未成年者というのは不安に思ったりもするだろうし批判したり反対するのも理解は出来る。だが無知は罪とも言える、千冬たちは何も思わないがそれを束が耳にしたら一体どうなるのか理解しているのだろうか。例え国としての意見ではない、個人の意見だとしても何をするか予想出来ない天災の束ならどんな事をしようが不思議ではない。しかもヨランドが対応するという事はある程度は表舞台でそれを言っているという事、そんな事を言った連中は大丈夫なのかと違う意味で心配になってきた千冬である。
「分かりやすいのはカミツレの力を見せ付けてやるって事だろうけど、だけどもうISレースで優勝してるだろカミツレ。それで凄さって理解出来ないのか?」
「一海よく考えてみろ、野球に一切興味がねぇがニュースで甲子園優勝校のエースピッチャー特集見たとしても特に何も思わねぇ。それと同じだ、しかも相手は国家代表っていう地位にいる。せめてカミツレも同じ立場に立たないと何も興味がねぇ連中からすれば理解出来ねぇんだよ」
千冬は白鯨の話を聞いて納得した。確かに自分も興味のないニュースなんかは適当な相槌を打ちながらも内心で見たい後番組早くやらないかなぁ~と思ったりもしている。しかしオリンピックの話題とかなら流石に興味は持つが、学生だけの大会で優勝した程度では足りないという事かと納得する。
「それならご心配なく、後日の各国合同での模擬戦ではツェレのお相手を私が務めますわ。それで力を見せ付ければ十分な事だと思いますわ!!」
「おおっそりゃいいな!」
「グララララッ……是非ともそれを生で見てぇな……よし、明日にでも政府に乗り込んで交渉するか」
「賛成だぜ爺ちゃん!」
「あらあら、ツェレのお爺様はとてもパワフルですのね♪」
「パワフルすぎると思うが……」