IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第325話

「おいおい随分と荒々しいじゃねぇか。喧嘩の時の一海そっくりじゃねぇか今のあいつ」

 

『如何したぁっまだまだ足んねぇぞゴラァァッ!!!』

『くっうううっうわぁぁっ!!?』

〔ファイズブラスター!!〕

『ウォラァァアアアア!!!』

 

モニターの向こう側では白鯨待望だった戦うカミツレの姿が映っているがその戦いぶりはある意味見慣れているに等しい物だった。ファーム内でも時たま起きる喧嘩、その理由は様々で下らないものが多いがその中で一海が取る行動そっくりであった。荒々しく凶暴な本能をむき出しにしているかのような、猛獣その物のような戦い方。それでも相手の行動を的確に潰している、荒々しさの中にある的確さに舌を巻く部分もある。

 

「でも私が見た時はもっと丁寧っていうか、射撃とかもバンバンしてたわよ。今のは剣で斬るというか殴りつけているに等しいわ」

「だねぇ、カミツレ完全にブチ切れてるね。あの子と何かあったのか?でも滅多に怒らないのに」

「束とか千冬さんとかの事を言われたんじゃねぇの?」

 

かずみんの言葉が最も正解に近しい、カミツレがキレているのは紛れもなく家族の事。家族を侮辱されたからである、ならばそれに文句は言わない。恐らくはそれは正しい怒りだろうから。それを見つめる白鯨はある事を見抜いたのか呟いた。

 

「存分にやればいい、気が済むまでな」

 

 

「そんな、強すぎる……!?」

「うぉらぁぁぁあああっっ!!」

 

咆哮を上げる、それに呼応するかの如く<ストライク・ヴァンガード>がヘルヴィの機体から射出されている有線式ガンバレルに悉くビームを打ち込んでいき、有線を切断した上で完全に爆散させていく。そんな驚愕に気を取られている時間などないと言わんばかりに接近したカミツレはブレードを叩きつけるかのようにして腕部ミサイル発射口を潰す。

 

「今更ビビってんじゃねぇぞ……覚悟決めろ……!!」

「ま、待ってください何故そこまで激昂されるんですか!!?私が貴方に何をしたというのですか!?」

 

ヘルヴィからすれば一方的にカミツレが激昂しているようにしか映らない、彼女としては一切カミツレの事を愚弄しているつもりなどはない。寧ろいきなりISの世界に放り込まれたというのに実力で此処までの立場までになった事を評価しているし憧れている部分もある。政府の思惑も少なからずあるが出来る事ならば友好的な関係を築きたいとさえ思っていた。だが相対してみればカミツレは自分とそんな関係を一切望んでおらず、寧ろ敵視している。何故そうなっているのか全く理解出来なかった、そんな中でカミツレが叫ぶ。

 

「自分の子供を侮辱されて、頭にこねぇ親がどこにいるんだ……!!!」

「こ、子供!?」

 

子供の侮辱、余計に理解出来ない。確かにカミツレは束と婚約関係にある、ならば子供とはISの事を指すのかとヘルヴィは思う。ISは物であり命ではない、それを子供と称するのかと混乱してきてしまった。

 

「こんだけも理解出来ねぇとはな……俺にとってISコアは子供なんだよ、てめぇはそんな子供たちの人格を否定し無ければいいと言いやがった……それを許しちゃおけねぇ……」

「そ、そんなっ私は……ただ……!!」

「どんな言葉を繕うが既に手遅れだ、行くぞカチドキ」

DRIVE TYPE:LIMIT OVER!!!

 

瞬間、勝鬨・大将軍の姿は真紅の装甲に包まれた『リミットオーバー・ドライブ』へと変化する。突如の変化に政府関係者が騒めく中でカミツレはただただ冷たい視線を作りながら、一気に稼働率が高まっていく。そして頭部をバイザーが覆い隠されるとすぐに拳を作り始める。

 

「カチドキ、お前もやっていいぞ。好きにしろ」

『―――OK。少しだけ、運転を変わって貰いましょう。』

 

バイザーが色を変える。今までは車のライトを思わせる白い物から赤い波状パターンへと変化する、すると先程までの荒々しさが嘘のように消え去り逆に穏やかな物を浮かべ始めた。声色こそカミツレの物だが、その口調が明らかに違う。

 

『「さてと……ご理解出来たかな、ミス・ミューリュライネン。端的に言えば貴方が気に食わない。貴方の感性、考え方、それらを否定する気はない。だけどね……些か不愉快なんですよ……私達としては!!」』

 

瞬時、一気に接近する。高速機動適応の面目躍如と言わんばかりの超高速移動、それにヘルヴィは反応する事ができなかった。ジョルトブローを喰らってから漸く反応する事が出来た。

 

「で、でも……子供なんて……そんなのって……」

『「聞いていなかったのですか、否定する気はないですしもう聞く耳持ちません。もう貴方の主張なんでどうでもいい、私はね……貴方をここで潰せれば満足なんですよ」』

 

表情こそ見えないがヘルヴィは心の底から戦慄した。目の前の真紅を纏った男、それはまるで死神に見えてしまった。そこまでの威圧感と恐ろしさがあった、そしてそれを言い切ると赤い波状のパターンから元の白い物へと変化した。するとカミツレは元の荒々しさを取り戻したかのように首の骨を鳴らすような仕草をしながら息を吐く。

 

「(もういいのか)」

『―――言いたい事は全部言いましたから。後はお父様にお任せします』

「さてとっ……もうグダグダ言うのも飽きた。好い加減に決めさせてもらう」

「も、申し訳ありませんでした……御気分を損ねたなら謝罪を……!!」

「聞いてなかったのか、聞く耳持たねぇって。それに此処まで来て降りるなんて白ける事すんなよ、最後まで―――ひとっ走り付き合えよ」

ヒッサーツ!FULL THROTTLE!! OVER!!

 

装甲の各部が展開していく。『リミットオーバー・ドライブ』の真の力が解放されていく、特殊フィールドの展開を確認しながらカミツレはアクセルを一気に踏み込んだ。瞬間、姿は赤い閃光と化していく。閃光は自らを取り囲む牢となり身動きを完全に封じている。そしてそこへ円錐状の紅い光が複数自分へと向けられていた。閃光は複数に分裂したかと思うとさらに加速しながらその光の中へと飛び込んでいく。

 

「『セイヤァァァアアアアアア!!!』」

「キャアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」

 

紅い光が全てヘルヴィへと突き刺さっていく、その光は全て通過したかと思えば閃光のサークル内を幾重にも反射しながら再度彼女へと襲い掛かっていく。乱反射の光が全て中心部へと射していく光景は壮観であると同時に恐怖を誘発させた。それを一身に受ける少女の悲鳴は機体の各部の武装が爆発する音にかき消され、遂には完全に墜落して動かなくなるまで彼女の声が聞こえる事は無かった。

 

「ぃ……ぃゃ……」

 

光は一つに集合するとカミツレへとなって上手く速度を殺しながら着地し、各部から放熱を行っていく。頭部の装甲も解放され漸く表情が現れになる。そこにあったのは酷く晴れやかな表情をした男の笑顔があった。そんな男はヘルヴィを一瞥するとそのままピットへと歩き出していった。こうして第一回戦は圧倒的な力を見せ付けたカミツレの勝利と恐怖で終わったのであった。




私「生ぬるくない?やっぱり私の初期案の方が良いじゃん」

妻「いやあれはやりすぎです。オーバーキルってレベルじゃないです」

私「えっ~」

妻「例えるならば不思議な事が起こって、RX、ロボ、バイオ、ブラックが勢ぞろいしてて、バイオライダーが相手を拘束して、そこにロボライダーが射撃して、そこにブラックがキックいれて、最後にRXがリボルケインで相手を滅多切りにしたって感じじゃないですか初期案」

私「そう言われてようやくやりすぎだって気づきました」

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