IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第326話

「おいおいおいおいおい如何した如何したカミツレ君、君らしくもない。理性的で落ち着きがあるがそこに情熱的な物があるのが君だと私は思っていたよ。あれはまるでかずみんだ、喧嘩の最中のね。この前三羽烏と今川焼……だったかな、それを取り合ってる最中の事を思い出してしまったよ」

「……兄貴と一緒にしないでください、でもまあ俺らしくないか……らしくないか」

 

ピットへと帰還したカミツレを出迎えたのはリオノーラのマシンガントークであった。先程の酷く荒々しい姿はすっかり影を潜めているのか普段通りの彼になり、勝鬨を解除しながら壁に寄りかかりながら座り込んだ。準備していたスポーツドリンクを喉の奥へと流し込む。酷く冷えているからか少し咽そうになるのを抑えながらも息を吐いた、家族も見ていたのにどんな風に映っていたのかと少し不安になっているのかもしれない。

 

「試合中の会話は確りと聞いていたつもりだよ、君はISを個人として捉えているのかい?」

「正確にはISコア達をです」

「ふむっ……」

 

今回の怒りの源流、それはコア達の事だった。まだまだ若造だがそれでも子供を持つ親である事を自覚しているカミツレ、そんな彼にとってはコア達の否定は許せない。だからあのような戦いをした……各国からすればどんな風に映った事だろうか。

 

「ISコアに人格が宿っているという話を否定するつもりはないよ、私は気持ち悪いとも思わない。だってロマンの塊みたいなもんだしね」

「そうですか」

「だが君のそれはこの世界のだれよりも深く踏み込んでいるに等しい物じゃないかい?束の婚約者、だからかい?」

 

否定はしない。ISを作ったのは束、彼女はISの母親であって自分が愛する女性でもある。ISの否定は彼女の否定でもある。

 

「……これで意識する筈です、俺が世界が見ている視点とは全く違う視線でISを見つめているのかを」

「うんっ?」

 

待機状態の勝鬨を見つめる。他人が見ればこれは世界最強の兵器で人間が使う道具、そう見て理解し判断するだろう。だが自分は違う。自分にとってそれは個人であり自分の子供である、自分を父と慕ってくれる愛すべき子供達でしかない。何時しか、カミツレにとってのISとはそのような者になっている。現時点において束と彼だけが持ち合わせている認識。

 

「やりすぎたとは思ってますよ、後で謝りに行ってきます。彼女が如何して気持ち悪いと思っているのかを聞きたいです、反対の意見も聞き入れないと前に進めません。それでも俺は……父親なんです」

 

そう言って立ち上がるとカミツレは席を外した、残されたリオノーラは腕を組みながら考える。彼は世界で唯一ISの開発者であり母親である存在に本当の意味で認められた存在。だからこそ圧し掛かってくる物があるのかもしれない、今の世界は束とカミツレにとって辛い物なのかもしれない。変えたいと願っている、だから無茶ともいえる事をしたのかもしれない。

 

「世界はISのコア人格が明確に存在するという事を今回の事で受け止められるかどうか……それが焦点になるかもしれないな」

 

 

 

「はぁぁぁっっ~……疲れた」

『カッコよかったと思いますけどねぇ……カミツレの演技をする私』

「いやお前かよ」

 

控室に戻ると一夏はいなかった、席に横たわって声を上げる。すると自然とカチドキが声を上げて反応を示す。そんな子供の一人であるカチドキの声色は何処か浮かれているような印象を受ける。嬉しそうにしているのが聞いていると良く分かる。

 

『お父様が愛してくれてるんだなぁっと改めて痛感しましたよ。―――自分の子供を侮辱されて、頭にこねぇ親がどこにいるんだ……。うっひゃあお父様カッコいい~www!!』

「殴るぞてめぇ」

『何でですか褒めてるのに』

「草生やしてるんだから煽りにしか聞こえねえよ」

 

呆れながら答えるカミツレだが、そんな口元は緩んでいた。幼い子供が遊ぼうと擦り寄ってくるのを見つめる父親のような優しい視線をカチドキに送りながら会話を続けている。相棒という印象が強い二人だが、確かな親子の絆があるのである。

 

「ヘルヴィだっけ、彼女には少しやりすぎたかもな……」

『いいんですよ人格否定をする輩にはお仕置きしなければ!!』

「だからって全方位からの『ドライブスマッシュ・リミットオーバー』はやりすぎだろ……改めてお前の提案鬼すぎるだろ」

『私だって苛立ったのは事実です』

 

実を言うと最後の攻撃をしようと提案をしたのはカチドキであった。ISコア代表として全コア分の攻撃を叩きこむと決定しそれをカミツレに提案した。まあそれを了承したのはカミツレだが……あれで全てのコアは水に流すという事に決めたらしい。見ていてスカッとしたのが理由らしい。

 

「んで相手のコア、泣いてないよな……」

『大丈夫ですよ、№097は全然気にしてないみたいですから。どうやら向こうも否定されるのはしょうがないと思いつつも、ストレス感じてたみたいで』

「……どういう事だ?」

『ヘルヴィ氏の否定は、ちゃんとコミュニケーションが出来る存在なのか分からない、出来たとしてそれが有効に働くのか、危険はないのかといった物から来てるらしいです。まああれですよ、外国人に声かけられて困るのと似たような感じです』

「それはそれで違うと思うが……」

『あとヘルヴィ氏はピンピンしてるみたいですよ、次は勝つって息巻いてるらしいです。なんでも御父上の方が100倍怖いらしいです』

「どういう父親なの……」

『鬼教官らしいですよ、コア情報曰く』




妻「どんだけ怖いんですかヘルヴィのお父さん」

私「あれだよ、部活の先生に怒られるのと親に怒られるのって違うじゃん」

妻「いやまあ確かに違いますけど……」

私「あと、ヘルヴィのお父さんの怖さは私の爺ちゃん並ね」

妻「OK把握。地獄の悪鬼並って事ですね」

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