『あの、カミツレ。コア・ネットワークからあなた宛てに凄まじいメッセージが来てますよ。量というか内容というかなんというか……』
「一応聞いとくけど、誰から」
『……イタリア国家代表候補生、ルーチェ・レンツィの専用機のコア№054からですね』
カミツレとカチドキが凄まじく嫌な音と衝撃を感じた直後のこれ、本当に嫌な予感しかしない。もう自分達の最悪な予想がドストライクで的中したとしか考えられなくなってきたのである。因みにコア№054もバッチリ特撮に嵌っているコア、お気に入りライダーはカブトとの事。全く要らない情報である。
「んでなんだって?」
『マジで読み上げますけどいいんですか?一応054の許可は取ってありますけどマジで読みますよ、私がある程度噛み砕いた物でもいいんですよ』
「いや親として子供のメッセージには確り向き合うべきだ」
『了解しました。それでは僭越ながら……』
咳払いをしながらカチドキは読み上げる準備はいる、人工知能なので咳払いをする意味があるのか酷く疑問である。
『お父様ぁぁぁぁお助け下さいぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!あの野蛮な馬鹿でかい剣を持った男を御止め下さいぃぃぃっっっっ!!機体装甲が変な音を立てて拉げてますぅぅぅぅぅコアユニットの一部にもダメージが入るとか千冬様の弟君って何なんですかいやある種納得がいきますけど納得できませんよマジで何なんですかの理不尽な斬艦刀は!!?兎に角お助け下さいぃぃぃ!!!っとの事です』
「あの馬鹿野郎ぉぉおおおおおお人の子供に何晒してくれてんだぁぁあああああああああ!!!!!」
カミツレは控室を飛び出してピットへと向かうのだった、そこには一夏と対戦相手と思わしき美少女が完全に目を回した状態でノックアウトされていたのだがそれ以上に目を引いたのは相手のISの状態であった。一撃を受けたと思わしき胸部はその部分が消し飛んでいるような跡が残されているだけではなく、機体の各部にも鋭利な刃物で削り斬ったような跡があちらこちらに残されている。
「―――」
「あっカミツレ、いやその……」
カミツレの視線に気付いたのか罰の悪そうな表情を浮かべた一夏は頬をかきながら声の死んだ苦笑いをする。本人としてもまさかこんな事になるなんて完全に予想外だった模様、だがそれでもカミツレとしては流石に子供の一人にあんなヘルプをされたのだから一言位言わなければいけなかった。
「お前は加減ってものを知らんのかこの大馬鹿野郎がぁあああああああああ!!!!」
「申し訳ありませんでしたぁぁぁあああ!!!!」
「あ~あ~……こりゃ酷いわ、軽量化の為とはそれでも割かし丈夫な筈の装甲が此処まで傷付くなんて……うっわこっちの装甲なんて完全に逝っちゃってる。流石の私でもこれには真顔でドン引きだよ一夏君」
「いやマジですいませんでした……」
イタリア側のピットへと運び込まれていった少女とISを見送った一同、そして映像にて残されていたISの状態を見ながら呆れながらドン引きする。あのリオノーラですら真顔で引いているのである。
「一夏お前何やらしたんだよ」
「いや俺は唯カルメンさんに頼まれた手前があるから全力で挑んだだけだよ」
「だからってあんな装甲があんな抉れ方なんかしねぇだろ」
あれは最早斬ったという次元の話ではない。何か空気の塊が凄まじい勢いで飛ばされた事でその部分ごとが抉れて消し飛んだとしか思えない。本当に如何やったのだろうか。仮に対峙したのが千冬だとしてもあんなことは不可能だろう、というか本人から私にだってあんな事出来んわと呆れた言葉が来ている。
「んでどんな戦い方をしたんだよ」
「大体カミツレ対策の高速機動訓練で積んだ経験をベースにした感じかな、兎に角回避と防御に比重を置いて相手の様子を見てたんだよ」
相手のルーチェの専用機、テンペスタシリーズの最新鋭機である"メテオーラ"は新開発のエネルギーウィングを搭載し、それによって従来のテンペスタを遥かに超える速度を実現している。名前の流星も加速した機体が通り過ぎた跡には光の粒子が残ってまるで流星のようだという事から付けられた。そんな相手に対して一夏は回避と防御を多くして受け身の体勢を取っていた。
メテオーラの搭載兵装はウィングを除いて全て実弾兵装、超高速でありながら的確な狙いと偏差射撃で相手を追いつめていく戦法を取るルーチェに対して一夏の受け身戦法はかなり効果を発揮し、それらを的確に潰し接近されたとしても得意の剛剣で相手を捻じ伏せられた。故に相手は高速で動き回って隙を見せる事を窺っていた、これを一夏は如何にか動きを止めて一撃を加えたい時にある事を思った。
「あれだけ速いって事はそれだけ軽量化されてるんじゃないのか?」
その目論見はハッキリ言って当たっている。メテオーラはウィングの影響もあってガッチガチの軽量化はされていないがそれでも標準的なISと比べるとかなり軽い。そして一夏はある作戦を取った、それは雪片夏之型を斬艦刀モードにした上で渾身の力で振り回して周囲の空気を全力で搔き乱した。
『チェエエエエエストォオオオオオオオオオオ!!!!』
『なんて力技ッッッ!!』
斬艦刀を振りまわした事で嵐の暴風に等しい風が巻き起こり、メテオーラはそれに機体を取られてしまった。過去にも悪天候下での飛行訓練などを積んだことはあるだろうが自然のそれとは違って一夏のそれは兎に角剣を滅茶苦茶に振るって作った風故に機体が激しくあらゆる方向に揺さぶられる。こんな状態で速度を出したら墜落待ったなし、故にブレーキを掛けざるを得なかったのだがこの時、機体の各部が激しく傷ついていた。
『ど、如何して装甲がこんなに!!?』
理由としては雪片夏之型は普段は装甲として使用されている部分をも取り込んで形成する形態、加えてその装甲は展開装甲を応用して作られた物なのだが斬艦刀モードは兎に角パワーがありすぎる。加えて一夏の剛剣に加えて滅茶苦茶の使い方で装甲の一部が剥離して風に乗って敵を切り裂く刃となってしまった。そして最後には動きが止まった所に一夏渾身の一撃でルーチェがノックアウトされてしまった。
「……おい前に言ったよな、斬撃飛ばせるように成ったら素直にお前を化け物として見るって。良かったなこれからお前は化け物だ」
「酷くね!?」
「いや正当な評価だよ」
「リオノーラさんまでぇ!?」