IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第332話

誰もが息をする事すら躊躇する程の事が、静寂を乱す事すら侮辱に当たるのではないか、と思わせる程に厳粛な空気が満ち満ちている空間にて執り行われている試合。始まりの時は静かに緩やかに、互いの得物を構えそれらを軽くぶつけ合い、音を立てさせる。それが戦いの始まりを告げさせる。

 

「ッ―――!!」「ッ―――!!」

 

瞬間的に舞う無数の光刃、それは迫りくる散弾を全て迎撃する為か、いや敵へと向けられたそれが結果的に自らを防護する壁となった。無数の線が壁となるという異様な光景を作り上げる相手は両手に保持するセミオートショットガン、反動もある両手打ちを正確にコントロールしながらのそれは迎撃されると分かっていたが互いのウォーミングアップには丁度いいだろう?と軽めの問いかけのようだった。それに対する返答が壁の如き光刃、互いの攻が止んだ時、得物が構え直される。

 

一方は薄らと蒼い光を放つような優雅さがある刀を保持する白い騎士、一方は両手に刃が取り付けられたライフルを持つ射手。直後―――

 

「でやぁっ!!」「ハッ!!」

 

全く同時に互いが前に出ると、周囲の空気を押し出さんばかりの衝撃波を巻き起こしながら剣戟の嵐が周囲を切り刻んでいく。

 

「貴様昔より随分と近接が上達したんじゃないのかぁ!?」

「あの時のようにはいかない、という事ですわ!!」

 

嵐のような弾幕を切り裂きながらも懐に詰め寄ると後退という二文字を思い起こすよりも先に斬撃へと踏み切る戦乙女、それへの対抗策へと今日まで近接戦の訓練を怠った事など無かった。彼女の持ち味である無数の戦術の組み合わせと高機動と近接技術が更に加えられ、更にその実力は上昇しているのにも関わらずに戦乙女はそれに劣る事も無く、寧ろ刀を振るいながらライフルを壊さんとする力で刃を震わせる。

 

「ィィィイヤァァアアア!!!」

「トアアアアアア!!!」

 

声高に響く咆哮と共に斬撃とぶつかり合う、刃が撓り銃身が熱を帯びていく。振り切った先にあったのはライフルの刃の崩壊、だがそんな事予想の範疇内だと言わんばかりに鋭いサマーサルトキックが襲い掛かるが、カウンターパンチが腹部を捉える。とても優美な女性同士の戦いとは思えない光景だが、不思議とそれが熱く胸を滾らせる。

 

「千冬、貴方やっぱり昔より鋭くなってますわね!!」

「それは此方の台詞だ、随分読みが冴えるなヨランド!!」

 

かつての伝説の一戦、その再戦、織斑 千冬 VS ヨランド・ルブラン。今でも史上最高の一戦と呼び声高かった対戦カードが再び行われている、今回のこれは極秘裏に行われるという事で録音、録画、口外の一切が禁止されるという事を了承しなければ観戦が許されないがその程度の事で見る事が出来るのならば喜んで誓約書にサインをする。それ程の光景に皆が胸がいっぱいだった。

 

近代化改修が施された当時の千冬の専用機だった"暮桜"。第一世代型だったそれは束の手によって大改修され、現在の所で言う所の第三世代に分類し直される程に変化している。当時としては剣一本だけという千冬でなければ優勝なんて無理なセッティングだったが流石に今は射撃武器も搭載され直されているが、スペックは極めて尖っている仕様になっている。

 

「はぁっ!!」

 

振るわれた斬撃はヨランドが放った散弾を一刀の下で全て両断した。振るわれた刃と共に周囲に真空の刃が生み出された、以前一夏が似たような事をやっているがあれとは違い千冬は自らの力だけ、そして意図的にそれを巻き起こしているという規格外さ。今の暮桜は速度とその正確性が極めて高くセッティングされており、千冬の実力と技量を完璧に発揮出来るようになっている。一夏が力ならば千冬は速度で技で相手を斬り裂く、それが100%以上の数値で発揮される。

 

「やりますわね、ならこれなら如何ですか!!?」

 

だがそれに喰らい付き続け、互角の戦いを演じ続けるヨランドのそれも異常の一言。彼女の専用機(シャティーナ・ブラーボ)はラファールを魔改造に近い大改修の末に完成したもので世代的には2.5世代型と定義すべきISとなっている。豊富な火器を搭載し全ての性能が高い水準で保たれ、千冬とは別の意味で乗り手を極めて選ぶセッティングとなっている。それらのスペックを限界以上に引き出して千冬に喰らい付ける彼女も彼女で最高峰の操縦者と言うに相応しい。

 

「全くシンプルに面倒な手段をっ!!」

「偉い人は言いました、人の嫌がる事を率先して行いなさいと!!戦術とは正しくそうなのです!!」

「合ってるかもしれんが絶対に意図を違えているぞお前!!」

 

全身からミサイルの嵐と両手に二連式ガトリングを保持したヨランドは弾幕の嵐を再度展開して千冬を追い詰めていく。ミサイルを両断するが爆発の先から無数の小型ミサイルが放出されて迫ってくる、向かってくるミサイル全てがマイクロミサイルという悪夢とそこへ打ち込まれるガトリングの面制圧射撃。シンプルに厄介すぎる攻撃に流石の千冬も参る……訳も無かった。

 

「甘く、見るなぁぁぁぁっっ!!!!」

 

その場にて瞬時加速を行いながらの大回転、その体勢のままで刃を振るうという狂気に等しい所業。それによって生まれる全方位への真空刃攻撃、全方位から迫るミサイルを全て撃ち落としながらもヨランドにもそれらをぶつけるという攻防一体の一手……だがそれがガトリングの制圧射撃にはそこまで有効ではなくある種の賭けでもある。ある程度は防御出来たが仕切れない弾が全身に受けてしまい、互いに大きな損害を被ってしまう。

 

『両者、SEエンプティ。よって引き分け!!』

 

まだまだこれからと言いたげな二人は不満そうな表情を浮かべながらもある種の納得を浮かべてもいた。何故ならば暮桜が各部からスパークを起こしており緊急排熱を行っている、そして同時にヨランドのシャティーナ・ブラーボは煌びやかな光に包まれており、変化を開始していた。

 

「んもうこんなタイミングなんて……」

「束の奴が調整が不完全の可能性があるから無理はさせるなと言ってたのを忘れていたな……しまった、無理をさせ過ぎたか……」

 

近代化改修を行った暮桜でも千冬の動きに着いて行く事への限界があった、完璧な調整があったら問題はなかっただろうがまだまだ不十分だった事が要因だった。それに対するシャティーナ・ブラーボも二次移行が始まっていた。それが意味するのは再戦、まだまだ彼女らの全力でのぶつかりはまだまだ先があるという事である。そんな二人はプライベート回線でそれを誓いあう。

 

「千冬、また今度ですわね。真の決着は―――その時はツェレとの初夜の順番を掛けた時でしょうか」

「望むところだ、最初を譲る気はないぞ」

「あらっそれは私もですわよ」

 

 

「―――な、なんだ今の尋常じゃないレベルの悪寒は……!?」




妻「遅すぎませんか」

私「だってこの二人の戦いの描写を形にするのめっさ大変なんだもん」

妻「そしてそれも有耶無耶にするんですね」

私「だってしょうがないじゃん、これしかないと思ったんだもん」
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