イギリスにいられる時間はあと少し、先日済ませたセシリアのご両親への墓参りと結婚の報告に家の使用人の方々への挨拶回りや貴族たちへの顔合わせなども漸く終了して疲れ切ったようにベットに倒れこんだ。リチャードの助けなどもあって上手くいったような感じが拭えないのでこれからは確りとそちら方面の事も確り学んで行かなければいけないと強く実感しつつも天井を見上げながら手首のデバイスへと意識を向ける。
「カチドキ、例のアイリスって王女さんってどんな奴なのか分かるか」
『まあ一応知ってますよ、あの王女様の専用機の№201から随分と話が回って来てますからね』
「そうか」
『そうかって聞きたいから質問したんじゃないんですか』
「何となく聞いただけだ」
疲れているからか思考力が落ちているような気がする。本当に何となく語り掛けてみただけに過ぎないのだから。
『随分とお疲れですねお父様』
「まあな……貴族って奴は何でああもうも分かりにくい表現多用するんだよ、無駄に意識高い系の高校生かあいつら」
『いやぁ聞いてて痛快でしたよ私達としては、向こう側の貴族たちとしてはカミツレと近しい年齢である子供達をぶつける事で上手い事関係築こうとしてたんでしょうけど何言ってんだこいつらって印象でしたよ』
「途中からいきなり経営の話からISの話に飛んだと思ったら新技術についての意見をベラベラと……」
心象は最悪に等しかった、リチャードからもオルコット家当主であるセシリアの夫になるのだからある程度は貴族間の空気を感じておいた方が良いと言われたから参加してみたが……参加して損をした気分だった。あれだったらヨランドにマナー講義をして貰いたかったと心から思った。
「そして最後にはいきなり下世話な事言って来やがって……ガチで殴り飛ばそうと思ったけど踏み止まった俺は褒められても良いと思うんだ」
『いや実際よく我慢したと思いましたよ、最後に突然夜にご不満があればお力になりますよとか何言ってんだこいつらってマジで思いましたもん』
その時の音声データはカチドキが確りと確保していたのでそれはリチャードに渡してその後の事は全部丸投げさせて貰った。リチャードは額に青筋を浮かべながらにこやかに笑いながら任せてくれたまえと言いながらその場から去って行ったが恐らく大貴族の力が存分に発揮される事は間違いないだろう。
「あと少しでまたIS学園の日々か……そして戻ったと思ったら王女様が同じだと思ってた日々を荒らすんだろうな……」
『まあそれは確実だと思います、随分と活発な性格らしいですよ。後女尊男卑ではないらしいですけどかなり強引な所もあるとか』
「マシと言えばマシだがそれはそれで問題が起きそうな気がしてならねぇぞ、どこぞの物語のバカ王女的なノリで光栄に思うが良い、妾と結婚する権利をくれてやろう!!とか言い出さねぇよな」
『いや流石にそれほどまで愚かではないんじゃないですかね……仮にもお父様には婚約者の方々がいる上にそのお相手がお相手ですよ。狙われるなら一夏でしょう』
それは言われる事が決定されているような物ではなかろうと思ってしまう位には不安になって来た。確かに注意すべきは一夏の方なのかもしれない、何方かと言えば狙われるのはあちら側だ。と言っても仮にも自分の義弟になる事が決まっている相手にそんなちょっかいを出すのだろうか。加えてIS学園という極めてデリケートなバランスの上に成り立っている場所で妙な事をして目立ってしまえば各国の生徒から世界中に情報が巡ってしまう。
「はぁっ……しっかも向こうは束さんが世話になってた事があるからそれを使って俺に迫ってくる可能性もある訳だろ、もう鬱でしかねぇよ。マジで帰りたくねぇな」
『いっその事、コア・ネットワークの総力を挙げてその王女の留学取り消しますか。多分国のスキャンダルとか漁って暴露すれば一発ですよ』
「世界情勢をこれ以上可笑しくすんじゃねぇよ俺の胃が壊れるわ」
正直少しでもそちらに心が揺れた自分が情けなくなった、以前真耶にその事で絶対にやめてくれと言われたのを忘れるところだった。
「アイリス・トワイライト・ルクーゼンブルクねぇっ……そもそも何をしにIS学園に来るんだ」
『留学は本来の目的を遂げる為のカモフラージュというんですか?』
「そうとは言わない、妙に俺が警戒深くなっているだけかもな」
『やれやれ妙な事を言うのは冗談だけにしてください』
悪かったな、とぶっきらぼうに答えながらも深い深いため息が漏れる。どれだけ学園に帰りたくないのだろうか、王女の留学がそんなに嫌なイベントという事なのだろう。
「カチドキ、コアの皆に言っといてくれ。何かあったら素直に頼るからそん時は宜しくって」
『言わずもがなですよンな事、今更言われたって何もしないなんて選択肢自体が存在しませんよ。それより世界情勢を気にするなら自分の身を心配してくださいよ、仮にカミツレに何かあったら一番暴走するのはお母様と我々ISコアである事をお忘れなく♪』
「……明るくウキウキトーンで言う事じゃねえよそれ……」
様々な思いが交錯する中で、カミツレは間もなく学園へと戻って行く。学園ではまた新たな事が待っている、それに対する思いがどんどん溜まっていくと同時に不安も大きくなっていくのであった。
「もう直ぐ……留学じゃな、楽しみじゃ。会える時が待ち遠しいぞ―――織斑 一夏、そして杉山 カミツレ」
妻「マジであの王女どうするんですか?原作準拠だと相当あれですよ」
私「もうこの小説はそのまま走り抜ける、だってもう色々設定ぶっ壊してるし」
妻「これも全部計画性0の貴方のせいですけどね」
私「喧しい」