そしていよいよやってきた新学期、夏休みも終わって学園へと戻って来たカミツレたちなのだがその面持ちは暗く重くなっていた。それもその筈、本日から千冬から言われていた王女様がこのクラスに入ってくるのだから……面倒事に巻き来れないと良いなぁと思いつつもそんな事は絶対無理だろうなぁという思いが胸を駆け巡り続けている。
始業式もそこそこにそれぞれの教室へと戻ったのだが……カミツレ、一夏、セシリア、乱は酷く重い面持ちのままで固まっていた。
「い、一夏に義兄さんまでどうしたんだそんなに暗い顔をして……」
「イギリスの実家に帰ったと聞いたが、そこで何かがあったのか。もしやまたハマーン代表からの指導を受けたとか……」
「ある意味そっちの方が良かったかもなぁ……」
「全くだ……」
気付けばセシリアや乱さえも暗い面持ちを作っている、夏季休暇中は別々だった箒やラウラとしては何があったのか全く分からない。何かを察する程度しか出来ないがきっととんでもない事があったのだろう。だがそれを学園まで引きずる意味はどういう事なのかと困惑しているとHRの時間になったので席に戻っていくと千冬が真耶と共にやってくる……のだがその表情は心なしか暗い。
「皆おはよう……今日から新学期が始まるが今まで通りに気を抜かずに勉学に励んでいくように。そしてまあそれ以外に今日は報告がある……」
「えっとその、今日からのこのクラスに新しいお仲間が入ります」
遂に来たかとカミツレ一派は思いつつもクラスの女子たちはどんな子が仲間になるのだろうと色めき立っている。自分達も事情さえ知らなければこんな風にはしゃいで友達になれるのかやら、どんな子なんだと思っていたのだろうか……今ではもう考える事も出来ない事なのだが……そしてそれは千冬と真耶もきっと同じなのだろう。なんでこんな苦労をするのだろう、と言いたげな瞳だ。そんな二人を今日は夕食に招待して癒そうと心に誓うカミツレである。
「で、ではどうぞ……」
真耶の震えている声に導かれるように扉が開けられてそこから正しく姫、それと人の形にしたような少女が入ってくる。IS学園の制服も改造などはされずにミニスカートになっている程度なのに大きく違っているようにすら感じられる、そんな少女は如何にも強者であるといった空気を纏いながら帯刀しながら鋭い瞳をした少女の護衛の女性がともにやって来た。千冬ほどではないが鋭い雰囲気に皆に緊張が走っていく。
「ルクーゼンブルグ公国第七王女アイリス・トワイライト・ルクーゼンブルク、このIS学園にて留学をなさる事になった……皆、迷惑をかけないようにな……」
「えっと、お隣の方は護衛のジブリル・エミュレールさんです」
と二人の紹介も何処か力がない、まああった方が可笑しいだろう。今回の留学で学園は相当な負担を強いられる事になる、それは教師である二人も同じだろう。
「えっと、それではあちらの席に……」
「うむ、分かったのじゃ」
「では此方へ」
とジブリルはアイリスを守るかのように先導しながら彼女の席へと導いていく。のだがその途中には物の見事に一夏とカミツレの席があるのである。そんな二人を品定めするかのように見つめる王女様に思わず胃が痛くなってくる二人、そしてニヤリと笑うとカミツレと一夏に向けて言い放った。
「お主らが織斑 一夏と杉山 カミツレじゃな、ふふ。おぬしをわらわの召使いにしてやろうぞ。どうじゃ。光栄であろう!!」
ババァンッ!!!と漫画だったら擬音が付きそうなレベルで堂々と宣言をしながら指を指してくる王女様に千冬は思わず額に手をやりながら溜息、真耶はぁぁっ……と小声で心配そうな声を出してしまった。そんな王女様に対して一夏とカミツレは如何するのだろうか、クラス中が思わず注目している。そんな中、二人は口を開いた。
「えっいやだけど」
「謹んでお断りしますのでさっさと席に着きやがって下さいませ王女様」
上から一夏の思わず素の反応、そしてカミツレの青筋を作りながらなんとか精一杯丁寧に対応しようとして言葉が荒くなっている言葉。それに血の気が引くような空気が広がると同時に王女はキョトンとした顔をし、女騎士であるジブリルは鋭い瞳を作りながら二人を見つめた。そこへカミツレが立ち上がりながら弁解をする。
「誤解のないように言っておきますが、嫁に行く前のご令嬢に男の召使が付くなどどんな時代になろうとはあり得ない、違いますかね」
「―――思った以上に博識なようじゃな、ミスター杉山?」
「いえいえ、この程度常識のような物ですよ。それにそちらの護衛のジブリル・エミュレール殿もいきなり見ず知らずの男に自国の姫君を任せるなど容認出来ないでしょう」
先程と打って変わるような落ち着き払った言葉遣いに言葉による説得を図るカミツレに王女らも僅かに考えを改めている。よく考えているし頭の回転も悪くない、それを見て益々アイリスの瞳は妖しく輝き始めているが、それに対してカミツレは動じないで笑顔を浮かべ続けている。それを見て一夏はハラハラしているのかカミツレから教えて貰ったコア・ネットワークのチャット機能でカチドキに聞いて見る。
「(おいおいカチドキ、カミツレ大丈夫なのか!?)」
『"大丈夫お父様の心拍数は極めて平常ですから普通に冷静です、それに彼女らからすればお父様は絶対的な切り札とか隠し札を持っている訳ですから"』
「(えっと、それじゃあ俺に何かできる事があったら遠慮なく言ってくれ)」
『"それじゃあ今度出る仮面ライダーのBlu-rayBOXで"』
「(確実に関係ねぇだろそれ!!)」
「思った以上にいい男なようじゃな、益々良いぞ」
「お世辞はその辺りで、此処では同じ学生です。学友として対等にお願いします」
「良いじゃろう、その言葉と頭脳に銘じて妾の事はアイリスで構わんぞ、よいなカミツレ」
「ええ、いや分かったよアイリス」
「うむ」
と此処までやって席へと座った彼女を見てカミツレはさり気なく千冬と真耶にウィンクをする、これで彼女のフリーダムさもある程度は抑える事が出来るだろう。それを感じ取って二人は本気で感謝を浮かべたのであった。その代わり―――
「(……やばい胃が……!!カチドキ、ナノマシンの治療ONにして……!!)」
『いや別に良いですけどこんな用途で使う為に打った訳じゃないですからねお母様は』
妻「これ、原作よりマシ……何ですかね」
私「どっこいどっこい?」
妻「にしてもこうしてみると原作のあれって大分やばい発言なんですね……」