IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第34話

月曜日、千冬に相談を持ち掛け様々な事が起きた。千冬が胃痛で倒れたり、その介抱をしたり、シャルロットの事について動き出したり、相も変わらずアレからも千冬に遊ばれたりといった事を送ったりしているが、取り合えず平和と言える時間を送っているカミツレ。専用機についてはイギリスを第一候補にしておきながら教室へと入っていく。中では妙に女子達は騒がしかった。

 

「ねえそれ本当なの!?」

「本当だってば!この噂で学園中で持ちきりなの!月末の学年別トーナメントで優勝したら、織斑君か杉山君かデュノア君と交際でき―――」

「んっ俺が如何したって?」

「「「「「キャアアアアッッ!!!!??」」」」」

 

クラス内に居た一夏が自分の名前に反応して、女子達へと声を掛ける。しかし返ってきたのはまるで痴漢にでもあったかのような悲鳴じみた声で、彼からしたらただ普通に話しかけただけなのだろうがタイミングが悪かった。女子達はなんでもないと言いながら四散して行くが、実際は何かがある。それは確かだろう。しかも良く見たら女子達の波の中にはセシリアと乱の姿まであった。

 

「セシリアに乱ちゃん、何かあったのか?」

「な、なんでも御座いませんわ!そ、そうでしょう乱さん!?」

「そ、そうよねセシリア。何もなかったわよね!!」

「……なんか怪しいな…けど、触れないで置くよ」

 

触らぬ神に祟りなしという訳ではないが、下手に首を突っ込んで面倒な事に巻き込まれても困る。こう言う時は下手に触れたらとんでもない事になる。現状ですら千冬に玩具にされているのだから、これ以上面倒な事になどなって堪る物かと引く事にした。完全に日課と成り果てた自習を始めようとした時、シャルルが近寄ってきた。

 

「ねぇ杉山君、お昼休みって空いてる?」

「空ける事は出来るが。何か用なのか?」

「うん、詳しい事はその時に話すよ。屋上で待ち合わせで良い?」

「分かった屋上だな」

 

そう告げるとシャルルは自分の席へと移動して行く、一体何の話があるのかも分からないが約束してしまった物はしょうがない。素直にそれに従っておくとしよう、そして自習を再開しようとした時、一夏が近寄ってきた。

 

「……カミツレ、お前言ってないよな」

「無干渉。そう言った筈だ」

「ああ、分かってる。俺はシャルルを助ける為に全力を注ぐ……まだシャルルには言ってないけど、その為にもう少し様子を見て千冬姉に相談する」

「(……ほう)」

 

小声で話しているからか周囲の女子達には聞こえていないだろう、一夏のその言葉にカミツレは少し感心するような声を上げた。あれほど迷惑を掛けたくないと言っていたのに、どういう心境の変化だろうか。

 

「色々考えたけど、俺一人の力じゃ何も出来ない…だから千冬姉に素直に相談する」

「なら直ぐにしたら如何だ?」

「転入を認めてるって事は学園も絡んでるじゃないかと思ってさ…だから、少し様子を見てからにする」

「……昼休みに屋上に来い」

「えっ屋上?」

「いいから、来い」

「あ、ああ分かったよ」

 

無理矢理納得させるかのように説き伏せた。一夏は納得しきれていないように席へと向かって行く。そんな一夏を見て少しだけ、見直した。あれほど姉には迷惑を掛けたくない、力になってくれなくて残念だと言っていた男が、その答えにまで辿りつけたと素直に感心した。そして昼休み、シャルルと一夏が屋上に向かう中、カミツレは千冬を呼び出していた。

 

「私を簡単に呼び出してくれるな杉山。これでも忙しい立場だ」

「それはすいません。でも…フランスについてなので、屋上へ一緒に行ってください」

「……良いだろう」

 

千冬と共にそのまま屋上へと上がって行く、屋上の扉を開けた途端に一夏とシャルルの驚きに満ちた視線が此方を突き刺すかのように向けられた。当然だ、シャルルは話があるからとカミツレを呼び出し、一夏はカミツレに呼び出された。てっきりシャルルについての話をするのかと思っていたのだが、そのカミツレが千冬を引き連れてきたのだから。

 

「カ、カミツレなんで千冬姉がいるんだよ!!?」

「そ、そうだよどうして先生がぁ!?」

「説明するから落ち着け……単刀直入に言うぞ、シャルル、織斑。お前らの隠し事、最初から無意味だったぞ」

「「へっ!?」」

 

想像以上に間抜けな声を上げた二人に千冬は笑いを浮かべた、此処まで笑える光景も久々だ、無論、カミツレで遊ぶ時以上の笑いではないが。取り合えずこのまま話をするには、盗み聞きの可能性が高いという事で千冬が全員を自室へと通した。千冬の部屋なら、よほどの命知らずでない限り聞き耳を立てたり、盗み聞きをしようなんて考えないだろう。

 

「えっ何、それじゃあ俺がシャルが女だって気付いた時には、千冬姉も可笑しいって思ってたって事!?」

「当前だろう。寧ろ、なんでこの見た目で男だと思える。男装にしてもお粗末にも程があるわ」

「うぅぅっ……」

 

千冬の言葉に縮こまってしまったシャル。確かに彼女の男装は酷くお粗末としか言えない。最早バレる事が前提されている物としか思えないほどに酷い出来。しかし、バレる事が前提ならば合点が行くという物。

 

「私はそこで自分のコネで調査を依頼していたんだ。その最中にカミツレからフランスが怪しい、調べて欲しいと言われてな。その時に、全てを聞いた訳だ」

「な、成程…んで千冬姉。なんでカミツレは、此処で料理してんの?」

 

話をしている最中、千冬の背後のキッチンでフライパンを振るっているカミツレの姿が先程から気になってしょうがなかった一夏。自分達はこんな凄い話をしているのに、カミツレは一切関わらずに料理をし続けている。

 

「千冬さん、味付けは何が良いですか?塩、醤油?」

「うーん塩だな」

「へーい、お前らもそれで良いよな」

「あっうん、僕は別に…」

「俺も良いけど……」

 

その言葉を聞いて料理を完成させていくカミツレ、テーブルの上には次々と完成品が並んで行き豪勢な昼食が完成していた。思わず呆然としていた一夏とシャルだったが、ご飯を受け取って千冬が早速食べ始めたのを見て、思わず顔を見合わせると、カミツレからご飯を受け取り自分たちも取り合えずと食べ始めた。

 

「っ!?な、なんだこの野菜炒め!?す、すげえ美味い!!シャキシャキしてて歯応えも抜群、味も確り付いてて……何だこの味付け!?」

「うわぁ凄い美味しい!!僕こんなご飯初めてかも!!」

「うむ、矢張りカミツレの作る料理はいい物だ。身体にも良いからな」

「千冬さん、そっちの皿も確り完食してくださいよ。でないとまた、胃が荒れますよ」

「わ、分かっている」

「えっ!?千冬姉胃が悪いのか!?な、何で!?」

「主にお前のせいだ」

 

と、会話も弾んだ昼食も終わり、いよいよ本題へと入った千冬。彼女の口から語られていくデュノア社の真実と千冬の伝と圧力、そして交渉によってロゼンダ・デュノアの悪事の全てが明かされ、間もなく警察が踏み込む事が千冬から知らされる。

 

「そ、そんな事になってたなんて……」

「……あれ、俺が必死に考えた時間ってなんだったんだ?」

「強いて言うなら、私の胃を攻撃しただけだな」

「申し訳ありませんでしたぁ!!」

「おう、もっと猛省しろ」

 

洗い物を終えたカミツレもそれに合流し、いよいよ話は最終局面へと向かって行く。

 

「そ、それじゃあもうシャルが苦しむ事はないんだな!?」

「いやそうとも言えん。ロゼンダ派は頭目を失うだけで、まだ活動は続けられる。恨みを抱いて行動を起こす可能性もありえる」

「そ、そんなっ……!!じゃあそれから俺が守れば……!!ああいや、でもどうやって守れば……!?」

「少しはまともに考えられるようになったか愚弟。そうだな、カミツレと共に考えた案があるが……これに乗ってみるかは本人次第だ」

「な、何なんですかその案って!?」

「ああ―――シャルル、お前さ―――社長になってみる気ないか?」

「……へっ?」


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