IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第36話

「……」

「お、おいカミツレ顔色悪いぞ?保健室付き合うけど……」

「俺に触れるな…問題、無い……」

「いやでも杉山、幾らなんでもその顔色は……」

「安心しろ、ただ、恐いだけだ……織斑先生が」

「「ああ、成程……」」

 

放課後の教室でカミツレは一人、震えていた。千冬からフランスの代表の事を聞いてから如何にも震えが止まらなくなっていた。本日の午後5時にはシャルロットが学園へと帰ってくる、フランスの国家代表を引きつれて……。いやな予感しかしない。二人に言った言葉に嘘は無い、ハニトラ耐性と銘打たれた弄りはある意味で恐いのは確かだ。

 

「し、しかしカミツレさん、その様子は尋常では……」

「いやさ…織斑先生に世話になったから、料理持って行ったんだけど……味付け間違えて、超激辛に……」

「お、おいカミツレそれヤベえって!!千冬姉、辛いの好きだけど辛すぎるのはアウトなんだよ!!?」

「だから震えてんだよ!!!5時に呼びだされる事になってんだよ!!」

 

という設定にしておく、周囲からすれば千冬からの怒りを受けるとしか映らないので千冬の元に行こうとしても不自然はない。本来はシャルが帰国したので、その顔合わせなので一夏も同行しても良い筈なのだが、ヨランドがお忍びで護衛としてきているので、話を知っているカミツレだけが呼び出される事となったのでこのような建前を作っている。尚、震えは仕込みでもなんでもなく、カミツレがマジで恐がっているからである。

 

「そろそろ、時間か……」

 

時計を見てゆっくりと、立ち上がったカミツレに対して教室中の女子達は敬礼をした。軍人のラウラが見たらやり方がなっていないと言われるものであるだろうが、カミツレに対する敬意を表す物であるには変わりは無い。そして一夏と箒はそっと、カミツレの肩を叩き、セシリアは目に涙をいっぱいに溜めていた。

 

「頑張ってくれ、また生きて会おうぜカミツレ」

「杉山、生きて戻ってこい」

「ガミヅレざん…お料理を、拵えて待っておりまず!!必ず、御帰りくださいませ……!!」

「……俺は死地に送られる兵隊か……」

 

尚、表現としてはベストマッチなのは言うまでもない。微妙な空気を背負ったまま教室を出たカミツレは、途中自室へと寄って、野菜などを持って呼び出されている千冬の教員室へと向かって行く。何故かと言われれば、シャルがカミツレの料理はとっても美味しいと話した結果、ヨランドも是非食べてみたいとリクエストを受けてしまったからである。料理の腕を褒められるのは嬉しいのだが、今回は余計な事を言ってくれたとシャルに言葉をぶつけたくなったカミツレであった。

 

「おっ来たか」

「ええっ…。もう直ぐ、戻ってくるんですよね、シャルロット……」

「ああ」

 

思わず溜息が出る、しかし無事だという事は喜ばなければならない。学園に到着するまでは完全にシャルロットの身は安全とは言いきれない。学園に到達するまでにロゼンダ派が何か仕掛けてくる事も十分想定出来る。故に、ヨランドが護衛の任を買って出てくれたのである。その事や、デュノア社での礼を含めて料理を作るのだから……一応納得しているのだが、如何にも乗り気になりきれない。

 

「ほらほら、兎に角気張って作れよ。あいつの舌は肥えているから、生半可な物ではなにをされるか分からんぞ」

「恐い事、言わないでくださいよ…」

「お前が私に好きにされても良いのなら、どのような事になろうが守るが?」

「……どちらにせよ、俺に希望はないんですね分かります」

「これほどの美女に誘惑されているのに、つれない奴だ」

 

キッチンにて、軽い仕込を始めているカミツレを背後から抱きつくように手を回す。

 

「ちょっと千冬さん、やり辛いですって」

「まあそう遠慮するな。お前を抱き締めていると、妙に落ち着くんだ」

「なんですかそれ」

 

少々頬が赤くなっているが、仕込みを続けるカミツレ。多少なりとも慣れているのか、千冬からの弄り、千冬の身体にドキドキしてしまうが今はそれ以上心は乱れていない。それでも千冬のこの行動は止めて欲しいと思っている。

 

「少しは成長したか、しかしからかい甲斐が無いではないか」

「知りませんよんな事」

「……ほう、良いんだなそんな事言って」

 

何処か悪戯っけを含んだ言葉にいやな予感を感じる、これは地雷を踏んだかと思わずにいられなかった。一体何をされるのかと、身体を固めていると先程よりも柔らかな感触が身体に触れた。豊満で柔らかく、暖かい感触が背中に触れて変な声が出た。

 

「ち、ちちちち千冬さん!!?何をしたんですかぁ!?」

「さて何をしたのだろうなぁ、知りたいなら振り向いてみればいい」

「絶対いやです!!!」

 

千冬は着ていた上着を脱いで、Yシャツのままでカミツレに抱き付いたのである。スーツによって阻害されていた感触、それがよりダイレクトに伝わる感触は素肌に近く物がある。より明確に感じてしまう千冬の体温にも、身体が反応してしまう。

 

「……っ!!」

「フフフッ…矢張りお前には、その顔が似合うな……私の前ではその顔でいて欲しいものだ」

「勘弁、してくださいよ……」

 

そして、漸く千冬から開放されたカミツレは仕込みを再開する。千冬のお陰もあって遅れてしまったので、猛スピードで行っていくのを千冬は見つめながらスーツの上着を着直す。カミツレが調理を行っている後ろ姿を見ていると、自宅で一夏が料理を行っている時の事を思い出す。が彼の後ろ姿は一夏とは違う、何か別のようにも感じられる。

 

「(やれやれ、私も随分と柔らかくなった物だな)」

 

と思っていると、部屋の扉がノックされた。それと同時にシャルロットの声が聞こえてきた。遂に学園へと帰ってきたようだ。そして、この時こそカミツレにとって、最大の試練とも言うべき時間になるのは明白だろう。

 

「覚悟は良いなカミツレ」

「……もうバズーカでもミサイルでもどんと来いですよ。本当はdon't来いですけど」

「つまり来るなか」

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