IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第43話

「……また、あいつとんでもない事になったな…」

 

自室で一人、カミツレが作り置きしてくれた野菜スティックを齧りつつ呟く千冬。絶妙な塩加減と良質な野菜の味と歯応えで思わず手が止まらなくなってしまう、それを肴にしながらビールを呷るが如何にも溜息が出てしまう。一夏とカミツレの試合、文字通り一夏に力を差を見せ付けて勝利をもぎ取ったカミツレ。その際の試合の言葉には、不覚ながら嬉しく思ってしまった。そこまで感謝されると正直気恥ずかしくなって来てしまう。しかし問題はそこではない。

 

『千冬さん、俺の相棒紹介しますよ。カチドキのコア人格です』

《織斑 千冬、貴方の事は博士からよく聞いています。私はVer.7のISコア、№274のコアの人格。カチドキの名を頂きました》

『……まて、理解が追いつかん』

『ツェレ……貴方は何処まで見所があるのでしょう!!矢張り素晴らしいですわ、流石は私の弟子!』

『ヨランドさん!!カミツレ君は私の弟子ですってば!!』

『そこじゃないだろうがお前ら!!』

 

ISコア人格の覚醒、世界でも類を見ない事態を巻き起こしてまっているのが問題なのである。親友でもある束が公表したコア人格について。開発者たる篠ノ之 束がそういうのであれば確かなのだろうと言われている反面、それは科学的に確認出来ないとして放置されている事象の一つでもある。が、千冬を含めて世界トップクラスのIS操縦者はコアに人格があると確認している。千冬も夢か現か分からぬような状態ではあったが、コア人格と言葉を渡し合った事があった。しかし、カミツレはそれとは全く違う状況である。

 

コア自らが意志を表明し、声を発している。これによってコアに人格がある事が決定的な物となったがそんな事など如何でもいい。一番の問題は、カチドキがコア人格の覚醒の条件の最たる物としてあげた物―――篠ノ之 束の許可、それである。カチドキの目覚め、それはある事を意味してしまう。篠ノ之 束が杉山 カミツレに対して興味を抱いたという事。

 

「これは、一夏以上にあいつは注目されかねない……いや束との交渉すら考える輩が出てきかねんな」

 

由々しき事態になってきている、何とかして彼を守るための手段を確立しなければ…いや逆に考えるとカミツレは遠回しに束に視られているという事にあり、寧ろそれを利用して後ろ盾に出来るのではないか。だがそうなると様々な面でも面倒が起きる、ヨランドに協力を仰ぎつつなんとかしなければならない……。

 

「やれやれ、また私の苦労が増えるのか全く……私の胃のケアをしておきながら、お前が攻撃して如何する」

 

そう言いつつスティックに手を伸ばす千冬だが、不思議とストレスは感じておらず何処か口角が上がっている事に気付いてはいなかった。面倒と口で言っておきながら心ではそうは思っていない、何処か笑みを浮かべながら野菜を口へと運び続けている彼女はただただ嬉しそうにしている事に気付けなかったが、一瓶を空にしてしまったので新しい物を冷蔵庫から出そうとした時、カミツレの言葉がフラッシュバックする。

 

『野菜スティックならいいですよ、でも塩分の事もあるので食べすぎには注意ですよ』

「……ああ悪かったよカミツレ」

 

それに従い後ろ髪を引かれつつも手を戻し、残ったビールを飲み乾し洗って捨てる。何時の間にか、カミツレの言葉通りに食生活などを送っている気がする。野菜中心の食事に酒も控えるようになったからか、肌の調子も胃腸も良い。軽いストレッチなどもするようになり、やや不摂生だったのが健康的な物へとなっていた。このままこんな事が続けばいいのにと思わず思ってしまう。

 

「……やれやれ私は何時から年下趣味になった?あいつは私の生徒、あいつにとってはクラスの担任。それでいいだろう」

 

そう締めるとシャワーを浴びる為に立ち上がった、そして熱いシャワーを浴びながらこれからの事を考える千冬の心の中は少し荒れていたが本人はそれに気付けていない。束に目を付けられた事が、どれだけとんでもない事か理解している筈なのに……。

 

 

「それじゃあ…カチドキは専用機の開発は受けるべきだって言うのか?」

『はい、カミツレの技術は現状の私では活かしきる事が出来ません。「個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)」の件にてそれは理解していただけるかと』

 

自室にてカミツレはコミュニケーションが取れるようになったカチドキと会話をしていた。その内容は自身に来ている専用機開発の件についてであった。

 

「でも、あれは元々機体性能とマッチしてない技術だから…俺はカチドキで十分満足してるぞ」

『「勝鬨・黒鋼」は打鉄のカスタム機ですが貴方に合ってはいません。それにその性能で満足しているというのも、私以外のISを使うのに躊躇しているというのが真実でしょう』

 

そう言われるとカミツレは思わず言葉に詰まった、カチドキの言葉は真実であり自分の本心であった。自分にとってカチドキはただの専用機というだけではなく文字通りの相棒となっていた。そんな相棒から簡単に別の機体に乗り変えるというのが何処か嫌だった。それはカチドキと話せるようになってから、尚強くなった気持ちでもあった。

 

『そのお気持ちは受け取りますが、これから先も貴方はISに関わるしかないでしょう。ならば逆にそれを利用すべきだと提案します』

「……でも、折角話せるようになったのに……」

『大丈夫です、新たに開発された専用機のコアと担当を変わって頂けるように話は付けられます。コア・ネットワークを使用し内部データを移植すれば、私は変わらず貴方と共にいます』

「えっマジで!?」

『肯定』

 

それを聞いたカミツレはホッと胸を撫で下ろした、そして専用機開発を受けると決心をしつつカチドキと共に資料を見つめ何処の国にすべきかを協議する事となった。カミツレの希望を聞きながら、カチドキはコア・ネットワークを活かして情報を収集する。役割を確りと分けながら話は進んでいく。

 

「俺としてはイギリスにしようと思ってるんだ。早期に接触があったしプランにも文句はないと思うんだ」

『しかしカミツレとBT兵器の相性はまだ未知数です、慎重になるべきです』

「カチドキのお勧めとしては?」

『性能面や特徴だけで見れば中国及び台湾の龍系列機がお勧めしますが、国柄や政府面を総合すると不適格です。此処は信頼性などを考えイギリスが第一候補でしょう』

「やっぱりそう思うか」

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