「と、という事は正式にイギリスからの希望をお受けして頂けるのですね!!」
「ああ。さっき織斑先生にそう返事をしてきた、俺の専用機開発はイギリスに頼む事になる」
「本当にお約束を守ってくださるなんて、私嬉しいですわ!!」
六月もいよいよ最終週へと突入し、学園内は間もなくに迫る学年別トーナメントの空気へと変わっていく。当日まで後数日となった日にカミツレはセシリアと昼食を取りながら、専用機開発の返事をセシリアへと返した。カチドキと何度も協議し、情報を集めつつ吟味してベストな結果として導き出されたのがイギリスであった。有力な候補としてドイツなども上がっていたが、カチドキ曰くドイツは信用ならないとの事らしい。相棒の意見を尊重しつつ、その結果をセシリアへと報告する。
「これで、カミツレさんは実質的にイギリスの代表候補生決定ですわね!」
「まあそう言う事になるかな」
『オルコット候補生の言う通りです。国が専用機開発を希望し、それを受けるという事はその国との関わりを強く持つ事と同義です』
よってまだ不確定な事ではあるが、カミツレはイギリス国家代表候補生の肩書きを背負うと同時にイギリスの一員という事になる。これであれほど欲していた政府の後ろ盾という物を手に入れた事になる、同時に家族の安全を手に入れられる……そう思うと身体から力が抜けてしまう。それをセシリアが支えるように腕を絡ませた。
「これで名実共に私達は立派なタッグですわね♪」
「そうだな、トーナメントは一緒に頑張ろう」
「はいっ♪」
迫っている学年別トーナメント、トーナメントはタッグルールが採用されており二人一組で挑む事が規則になっている。カミツレがパートナーとして選んだ相手はセシリア、入学当初から彼女から理論を学んでいた事や同室であった事、共に真耶の下で訓練を受けていた事などを総合した結果タッグを組んだ。実は乱からも猛烈なアプローチを受けたのだが…その時にはセシリアとタッグを組むというのを提出してしまっていたので、乱は酷いショックを受けると同時にセシリアを睨みつけていた。肝心の彼女は勝ち誇ったかのような笑みを浮かべながら嘲笑するかのように乱を見ていた。
『み、見てなさい!!必ず私が貴方に勝って私こそがカミツレさんの隣に相応しいって事を証明するんだからぁ!!それじゃあカミツレさん失礼しますね♡見てなさいよこの実用性皆無の英国面!!』
『わ、私のティアーズが実用性皆無ですって!!?きぃぃなんて失礼な事を言うのですか!!』
因みに乱は鈴と組んだとの事、恐らく1学年中屈指の強さを誇るタッグになるのは明らかだろう。他のタッグはどんな面々がいるかというと……シャルは力になろうとしてくれた一夏と組む事になり、箒とラウラは抽選に委ねる事にしたと言っていた。
「当日が楽しみだ……っとそろそろ授業始まっちゃう」
「では参りましょうか」
「ああ」
そして、学年別トーナメント当日。この日、IS学園には各国からやってきた来賓などで賑わっていた。各国政府関係者、研究所員、企業のエージェント、その他諸々の顔ぶれが学園に会している。カミツレもこの顔ぶれにはやや圧倒されているのか、誘導などの手伝いをしている際にTVで見た事がある人物と何度も遭遇していた。が、それはカミツレも同じ立場とセシリアに言われると何とも言えなくなった。
「おおっ君が杉山君だね、私は日本政府の……」
「そういうのはいいのでさっさと受付してもらえませんか。後がつっかえてるので」
「えっあの少し話をだね……」
「他人の迷惑も考えられない人と話す価値は無いです」
加えて自分が何も言えなくなった事と言えば……妙に日本政府が絡んでくる事であった。受付の手伝いをしている際も、日本所属の官僚や研究所員などが妙に話しかけてきて邪魔をしてきた。一体今更自分に何の用があるのだと声を大にして言いたくなってしまった。早々に自分を研究材料扱いし一夏の方を取ったくせに、今更何の用があるのだと思った。
「君には是非、日本の候補生になっていただきたいんだよ。君の実力など全てを評価したうえでの結果何だ。どうかね?」
今もこうして準備をしているというのにしつこく纏わり付いてくる政府関係者がいる、何が実力など全てを評価だ。評価する以前に自分を研究所へと送る事を決定していたくせに…自分が結果を出したら今度はゴマすりか。
「君の為に複数の企業や研究機関が力を結集して専用機開発を行う予定でもあるんだ、織斑君と共にこの日本の為に尽くして欲しいんだ!君も日本人だ、愛する祖国の為になってくれないか!?今までの非礼を詫びる。すまなかった。どうか協力してほしい」
自分はその祖国に真っ先に見捨てられたのだが、その辺りはどうなるのだろうか。そろそろ控え室へと行ってセシリアとコンビネーションのチェックをしたいのだが…どうやって振り切った物か……。そう考えていると、背後から一人のスーツ姿の男性が近づいてきた。
『少し宜しいかな、君が杉山 カミツレ君でいいのかな?』
『あっはい、そうですけど』
英語だった為、拙いながらも英語で返すと男性は思わず英語で言ってしまった事を謝罪しながら自己紹介をしてくれた。
「私はリチャード・ウォルコットという者だ、君の事はセシリアから良く聞いているよ」
「セシリアのお知り合いですか?」
「ああ、彼女とは遠いが親戚の関係でね。仲良くしてくれている事に感謝しているよ」
「いえ俺こそ彼女には助けられてばかりで」
カミツレは思わずリチャードと仲良く談笑していると、日本の官僚は気まずそうにしながらも話を再開したそうにしているがそんな事は気にせずに話を続ける。
「今回、君が我が英国を選んでくれた事は光栄に思っているよ。我々も君の信頼を得られるように一層の努力をするつもりだ、私に出来る事があればどんどん言ってくれよ?セシリアにも言われているからね」
「有難う御座います、それじゃあ取り敢えず…俺これで失礼しても良いでしょうか、セシリアと確認したい事ありますし」
「おおっこれはすまなかったね、それじゃあ頑張ってきたまえ。応援してるぞ!」
背中を軽く叩きながら激励してくるリチャードの気持ちを受け取りつつ、そのまま控え室へと向かって行く。後ろでは先程の官僚がリチャードに絡まれており、此方を見つめているが全て無視した。自分は大切なトーナメントがあるのだから。そして……遂にトーナメントが始まるのであった。
次回は恐らく、国同士の話し合いからだと思います。