「……ヨランドさん、千冬さん。一体どうなるんですか?」
「取り敢えず、トーナメントは中止だな…。あのような公の場で二度目の襲撃とVTシステムの露呈で、もう面倒事が舞いこみ過ぎている……」
「しかし、まさかドイツがVTシステムを使用するなど……信じられませんわ」
「それは私が一番信じられんよ…」
「兎に角、今は各国の要人方々は会議室に集まって貰っていますが…そこでは今もドイツに対する物議がやまない状況ですわ」
その場にいた面々は指導室に呼び出されそこで話を聞かされている、当事者であるカミツレ、セシリア、箒、ラウラから事情を聞き今起きている事に付いての説明が行われている。突如来襲した乱入者の事も気になるが、それ以上にVTシステムの事が気がかりでしょうがない。VTシステム、正式名称ヴァルキリー・トレース・システム。過去のモンド・グロッソの
「しかし織斑先生、VTシステムには肉体面と精神面に掛かる負担がある筈では?ラウラさんを見る限りそんな様子は……」
「うむ。多少身体が軋むような痛みがあるがそこまでではない……
『レーゲン』の解析を行っているが……搭載されていたVTシステムは大幅な改良が成されていた」
VTシステムの大きな欠点であり禁忌とされている理由が搭乗者に対する負担が余りにも大きいという事。当時最高峰の動きを再現する為、システムが搭乗者の事を無視してその動きを再現する為に負担が掛かってしまう。そして、同時に搭乗者に軽度であるが精神汚染が起きるというのも問題点であった。しかし今回発動したシステムはそれらの欠点が改善されており、ラウラも精神的なダメージは受けておらず、軽度の負傷のみに治まっている。
そして、本来は部門受賞者の動きを最大一人まで再現するのではなく複数の部門受賞者の動きを行う事が出来る事にある。優勝者である千冬と射撃及び機動部門入賞者であるヨランド、その二人の動きを混ぜ合わせ混合した動きをした。そして、ラウラの手によって僅かであるが制御が出来ていたという点が今までのVTシステムとは大きく異なっている点であった。
「今回の一件は十分すぎる程の国際問題の案件になる、だがドイツもこの事態を予め予測していたのか動きが早くてな。VTシステムの改良に成功したと発表しおった…」
「わたくし達の動きを取り入れたISによる国力増強…寧ろドイツは有利な立場になったとさえ言えますわ」
「兎も角、今回はお前達にも世話を掛けた。今日はもう休んでいいぞ」
その日は解放された一同、ラウラはこの事を本国に問い詰めると言って自室へと戻って行った。カミツレと箒も自室に戻り休む事にしたが、セシリアはリチャードと今後の事を相談するらしくそこで別れる。因みにこの後セシリアはリチャードと共にカミツレの家族に会いに行ったとの事。
後日、IS学園を襲撃したISはドイツにて開発中だった新型のISであった事が判明した。ドイツ国内の研究所によって研究開発中であった未完成品の無人型IS、それが何者かによってハッキングされ奪取。その後施設を破壊し尽くした後行方をくらませていた事が報道された。そして、それは何故かIS学園へと向かいそこでドイツが改良したVTシステムによって破壊された。
「ドイツの自作自演…」
『そう見るのが妥当な所でしょう』
「だよなぁ……」
自室にてそのニュースを見ながら呟いたカミツレに、カチドキが同意するように声を発した。余りにも都合が良さ過ぎる展開とVTシステムの起動と攻撃、如何見てもドイツがそれら全てを仕組んでいると見るのが正解としか思えない。
「胸糞悪いな…ラウラは兎も角ドイツは信用ならねえな」
『ラウラ・ボーデヴィッヒは対抗戦時に送り込まれたISのテロの再発防止の為に送り込まれたとも発表されております。しかし、そのテロに使用された物はドイツの兵器。皮肉を感じます』
「ああ……だがその皮肉に多くの人が助けられたのも事実なのが腹立たしい…」
だが何処かカミツレは引っ掛かっている事があった、確かにVTシステムの改良に成功したのを公表する事でドイツの社会的な地位向上は計れるだろうが、その為だけに態々こんな事をするのかという事だった。徐に携帯へと手を伸ばし千冬へと掛ける。
『なんだカミツレ、何か用か』
「千冬さん。今回のVTシステム関連の事、不自然な事が多すぎます。俺が口を出して良いのか分かりませんけど…」
『否、是非言ってくれ、こちらも対処で忙しくて考える暇がない。意見があるなら聞きたい』
「では……今回の事はドイツにとって都合が良すぎます、よってドイツの自作自演と俺は考えてます。でも本当にそれだけが目的なんでしょうか」
『……?』
珍しく何を言っているのか分からなそうにしている千冬、どうやら本当に忙しくて考える暇がなさそうだ。
「仮にこれがドイツの自作自演だった、と仮定します。余りにも危険すぎるんですよ、一歩間違えればどころか完全な国際問題の案件です。それなのに実行するのに何のメリットがあるんです?あるにしてもドイツの発言力の上昇、その位な筈です」
『フム……確かにな。下手を打てば各国要人に被害が出る恐れがある』
「もしも、ですよ。これが別の莫大な利益を得る為の囮で、何かから目を背けさせる為としたら……?」
『今回の事はカモフラージュ……っ!?確かに考えられるな……』
「まあ、証拠も根拠も無いただの推測に過ぎませんが……すいません時間取らせちゃって』
『いやこれはもしかしたら、もしかするぞ……愛してるぞカミツレ、貴重な意見感謝する。おい真耶、少し手伝って欲しい事が……!』
冗談めいた事を飛ばしつつも通話を切る千冬、それに合わせてカミツレも携帯を置くが如何にも推測の域を出ない気がしてならない。こんな事を考えたとしても一学生である自分に何が出来るのかという話だが……不安な気持ちになってしまう。
「カチドキ」
『はい』
「今回の事に篠ノ之博士が介入している可能性はあるのか?」
『博士ならば十分ありえます、そもそも博士はVTシステムについては酷く否定的です。あのシステムはISのコア人格にとっては忌々しいシステムでもあります』
「そうなのか?」
『はい。言うならば意識があるのに身体を無理矢理操ろうとして来るのと同じです。博士ならば、VTシステムに関連する施設へ攻撃を仕掛ける事も十分ありえるでしょう』
「それを聞くと物騒だけど、博士って本当にISの事を子供みたいに考えてるんだな」
『はい。博士は全てのISを愛しております、自分の子供のように』
この会話の数時間後、ドイツ国内のVTシステムの改良と研究を行っていた施設全てが謎のハッキングを受けデータが全て消去された事と、「レーゲン」のVTシステムも破壊された事が判明した。