IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第50話

「お、お邪魔、致しますねカミツレさん……」

「っ!!?セ、セ、セ、セシリアァァッ!!!?」

 

思わず声を上げてしまった、背後の脱衣所の明かりのお陰でカミツレの目にはハッキリと今のセシリアの姿が見えてしまっている。すらりと伸びている細い足、透き通るような白い肌に普段見せる事がない梳かされた金色の髪、美しいボディラインに巻かれている薄手のスポーツタオルは薄っすらと、その内側の肌を透かせるほどだった。驚いていた筈なのに何処か女神めいている美しさに見惚れてしまっていた。

 

「そ、そんなに見つめないでください……恥ずかしいですわ……」

「ご、ごごごめん!!!?」

「んもう……」

 

セシリアの何処か色っぽい声が浴場内にエコーして響く、それに何処か興奮を覚えてしまうカミツレは必死に後ろを向きながら意識を必死に反らそうとするがそれは無理という物。千冬からのハニトラ耐性訓練という名のセクハラを受けているとはいえ年頃の青年、同じ浴場にバスタオルの一枚の美少女がいるという状況に興奮しないわけがない。兎に角今は意識をそらす事に集中するしかないと思っていると、湯船に波が立った。カミツレの後ろにセシリアが身体を沈めたからだ。

 

「暖かいですね……」

「あ、ああそうだな……」

 

背中越しに聞こえてくるセシリアの声と息遣い、完全な密室に全裸の女子と二人っきり。もう何を考えていいのかすら分からなくなってきているカミツレの頭はパンク寸前だった。心臓が凄まじい速度で鼓動を繰り返している。

 

「お、俺もう上がるよ!?セ、セシリアはゆっくり……」

「待って、くださいカミツレさん……!わ、私はカミツレさんと一緒に入りたいのです…駄目、でしょうか……?」

「ぁぁっ……分かり、ました……」

 

ショート寸前の頭ではもうそう応えるのが精一杯だった、必死に意識を保とうとするが興奮と緊張で如何にかなりそうになっている。気を抜けば、身体を突き抜けようとしている興奮に身を委ねて過ちを犯してしまいそうだ……。それだけは駄目だと思うと、辛うじて意識が強くなっていく。その調子で意識を保とうとするがそれを邪魔するように自分の背中に、暖かくて柔らかい感触が触れてくる。

 

「っ!?」

「カミツレさん……どうか、このままお話をお聞きください……」

「あ、ああっ……」

 

カミツレに背中を預けるようにしながら、タオルを外し生まれたままの姿となっているセシリアも彼の肌に密着した事で強すぎる興奮を覚えながらも言葉を紡ぐ。

 

「私は最初、カミツレさんの事を真面目で勉強熱心な男としてしか見ていませんでした」

「お、俺は……初めてセシリアを見た時はちょっと高飛車なお嬢様だなって思ったよ」

「ですが、対抗戦の時の貴方を見た時それらが覆されました。貴方の強い意志と覚悟を身に受けた時、私は感動すら覚えました」

「……あの時の俺は、今みたいに余裕はなかったからな」

 

徐々に今の状況に慣れて来ているのかカミツレは落ち着き始め、口も普通に利けるようになっていた。対抗戦、あれこそ自分の運命の岐路だった。あそこでセシリアと引き分ける事も出来ずに敗北したら今の自分は居ない。研究所へと送られ、非人道的な実験の毎日を送り最悪の場合自ら死を選ぼうとしただろう。

 

「あの時から、私は貴方に夢中になっていたんです」

「えっ―――?」

「貴方が愛おしかった、貴方の隣に居れるだけで嬉しかった、声を聞けるだけで幸せだった、触れる事が出来たのならば…今思えば同室だった頃が一番幸せな時でしたわ」

「セシ、リア……?」

 

この時、カミツレは気付いた。セシリアが自分へと向けている感情の答えに、信頼や友情を向けてくれていると思っていたがそれは誤りであったのだ。彼女は自分の事を―――好いていてくれているんだ。でなければこんな事をする訳もないし、話をする訳もない。背中を預け合うような状況も生まれる訳も無いのだ。今まで家族以外の女性から好意を寄せられた事も告白された事も無いカミツレは、途端に今までにない高鳴りを感じてしまった。

 

「カミツレさんの寝顔を見れて嬉しかった、一緒に食事を取れて楽しかった、一緒に訓練出来て至福でした……私はあの日、対抗戦のあの日から貴方に恋をしてしまったんです」

「俺、に……?そ、そんなセシリア……俺なんか」

 

何故自分が好かれたのか、それは先程彼女が述べてくれた。対抗戦で見せた戦いと自分の意志と覚悟だ、それが彼女のハートを射止める結果を齎したのだと。自分としては必死にもがいていただけだった、生きる為の手段として努力していただけだった。それだけだったからこそ、カミツレはセシリアの気持ちに気付く事が出来なかった。目を向ける余裕もそこへ辿り着く為の道すら自分で閉ざしていたのだから。

 

「貴方が愛しい……傍に居たいのです…何時までも、出来る事ならばずっと……」

「セシ、リア……」

「お慕いしております…カミツレさん」

 

振り返ったセシリアはそのまま彼に抱きついた、柔らかな胸の感触を受けつつも回された腕。しかしカミツレはそれを味わう暇もなく、ただただ嬉しさを感じていた。IS学園に来てから本当に辛い事の繰り返しだった、何時まで続くかも分からない生活の中で震えていた自分に手を差し伸べてくれたのも彼女だった。自分の価値を見出し、評価し、手を差し伸べてくれた。今までセシリアに向けていたのは師である真耶に向けているのと同じ尊敬と感謝、友情であった。それが今、違う物に変わりつつあった。感情がひとつになりながら新たな花となって開こうとしている………。

 

「セシ、リア……」

 

何時からだろうか、自分も仄かに彼女へ憧れのような好意を寄せていた。だが自分にとって彼女は恩人でもあり友人でそんな感情を向けてはいけないと無意識なうちに押し殺していた、それが今留まる事を知らない激流の嵐となって胸の中を駆け巡っていく。切なげに胸が苦しくなるが同時に暖かくもなる、初恋すらした事もなかった少年に訪れた初めての―――恋。そっと、自分を抱いている腕に手を重ねた。

 

「俺は……今まで、女の子と出掛けた事なんかないからきっとエスコート出来ないよ……」

「エスコートなんて必要ありません、一緒に歩いていきましょう」

「マナーとか、知らない」

「いつものように私がお教え致しますわ」

「これからも、迷惑掛けるし」

「迷惑などと一度も考えた事などありませんわ、寧ろカミツレさんと関われる事全てが喜びでした」

「凄い、喧嘩するかもしれない……」

「その都度、仲直りして、益々好きになれますわ。日本では喧嘩するほど仲が良いと言いますし」

「最後に、これだけ聞かせてくれ……セシリア、一緒に居てくれる……か?」

「はい何時までもおそばに……」

 

この日、二人は一緒に浴場から上がった。そして火照った身体を一層温めるように抱きあいながら言った。

 

「カミツレさん……好きです。これからも宜しくお願い致します」

「セシリア……ああ、末永く宜しくお願いします」

「それはあの時の私の言葉ですね、返して頂けて嬉しいですわ♪」

「返せて嬉しいよ、俺も」

 

二人は、交際する事を決めた。




……だばぁぁぁぁぁっっっっ……。

自分で書いておいて言うのも可笑しいですけど……これはやばい……。
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